第1章 営業・マーケティングのやり方(準備編)

営業・マーケティングのやり方とは?

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営業・マーケティングの正しいやり方を理解しているか?

これは上司が部下に問うセリフではなく、私がみなさんに問いたいテーマである。「みなさん」を定義すると、営業・マーケティング部門の経営者、部門長、マネージャー、メンバーのすべてのことだ。もっと言うとビジネスリーダーのみなさんに問いたい。ビジネスリーダーとは営業・マーケティングをより良くするために、会社を変えていきたいすべての人のことだ。偉い人、偉くない人、上司や部下は関係ない。

「組織が強くなる!営業・マーケティングのやり方」このテーマを選んだ背景には、日々、変わっていく営業・マーケティングの手法やチームの連携に対応できていない企業が多いと感じたためだ。‘営業だけ’‘マーケティングだけ’のそれぞれの正しいやり方すら、理解できておらず、実行できていないのではないだろうか? 営業・マーケティングが連携していかなければ売れない時代のやり方は、もっと難しくなる。

この30年の歴史を振り返れば、営業・マーケティングは会社の先頭になって「宣伝して売る」ということを駆け抜けてきた。昔の営業の新規活動は名刺とカタログだけ持って飛び込みしていればよかった。提案とは納期・コストを伝えることが最優先!という時代もあった。しかしパソコンやインターネットが登場し、顧客が情報を持つようになり、セキュリティが厳しくなるとこのような営業スタイルでは通用しなくなった。飛び込みができなくなると電話やメールで効率的な新規アプローチを行うようになり、提案の付加価値を求められるようになるとPowerPointやExcelで提案書を書くようになった。

顧客がインターネットで情報収集してから動き出すようになると、認知→興味・関心→比較検討までの営業アプローチが必要になった。しかもパソコンだけなくモバイルからの流入も増えてきた。

これがマーケティングブームの始まりである。(BtoCマーケティングは古くから存在するが、一般企業のBtoBマーケティングブームや取り組みは2000年後半ぐらいから本格化したと感じている) 認知→興味・関心→比較検討のプロセスがWebの世界で当たり前になると、マーケティングはWebマーケティングに力を入れるようになる。自然検索で上位を狙うSEO対策だけでなく、SNSも含めたWeb広告マーケティング、マーケティングオートメーション(MA)の導入、資料ダウンロードの充実をはかるコンテンツマーケティング、そしてWeb問合せを増やすためのインバウンドマーケティング、内勤でリードをフォローするインサイドセールスの導入など、デジタル施策と呼ばれる取り組みを強化して、営業に見込みを渡すためのリードを増やしてきた。

このように激しく変化してきた市場に対し、営業・マーケティングは「宣伝して売る」ために懸命に対応してきた。成長してきている企業は必死に宣伝して売ってきたから今がある。しかしまだまだ旧態依然の古いやり方がはびこっている組織は多いと感じる。営業部門は足で稼ぎ、人間関係構築が重視だ!という活動方針は長年変わらない。その一方、与信設定や契約書締結までのやり取りなど内部統制構築により、年々営業の雑務作業は増えており、営業は日々時間に追われている。マーケティング部門はリード獲得至上主義に偏重する余り、デジタル施策からセッション数やPV(ページビュー)を増やし、コンバージョンした情報やイベントで集めた名刺をリードという塊として営業部門に渡すことに追われている。

このような忙しい状況になると営業・マーケティング部門はどのような関係に陥るだろう? 忙しいと営業・マーケティングは協力して施策やプロモーションを考えなくなる。顧客視点で見込みを増やすための企画が出てこなくなるのだ。すると営業は質の悪い見込み情報に対しマーケティング部門に「くそリード」とののしる。マーケティング部は苦労してたくさん集めたリードに対応しない営業部門に「フォローしない」とボヤく。完全に関係崩壊である。

このような関係に陥ってしまうと営業は予算達成のために動き、マーケティング部門はリード獲得目標達成のためにバラバラの作業を行うようになる。本来は顧客のために生まれた両部門であり、顧客のために連携するべきはずなのに仲が悪くなるのである。しかしこのような関係になるということは営業・マーケティングのやり方は実行できていると言える。ケンカしているということは、どちらも営業・マーケティングの力はあるということだ、だがこのような状態にすらなれていない企業が多いのではないだろうか。

営業・マーケティング部門は、何のためにできたのか?

営業・マーケティング部門ができたのは、より顧客の立場になって「宣伝して売る」施策を考え、実行するためである。(本著ではすでに製品・サービスを導入している先を既存顧客と呼び、それが以外の新規ターゲットを新規顧客と呼ぶ。既存顧客と新規顧客を総称し顧客と呼ぶ)

顧客はこの10年で大きく変化している。新規顧客はWebから情報収集をしているだけでなく、サブスクライバー(Web上の認知顧客)と名を変え、情報から学ぶだけでなく、すでに情報から様々な体験をしているのである。自身や会社の課題をキーワードとして検索エンジンに入力すると、読み手のためになるページを順位別に並べ、各社の製品・サービスページから良質な資料をダウンロードできる。ここから様々な資料を見て学び、各社の製品・サービスに近づいていく。トライアル版や評価版のサービス、フリーミアムサービスを体験しながら、比較検討→購入に向けてのコンペというプロセスに向かっていくのである。顧客が変化している以上、これまでの製品中心のアプローチから、顧客中心のアプローチに変えていかなければならない。営業・マーケティング部門は顧客中心に作られた原点にもう一度、戻ってほしい。そして組織が強くなる営業・マーケティングのやり方を学び、チームで連携していく必要があるのだ。

営業・マーケティングのやり方とは?このブログで何が得られるのか?

先述した30年の営業・マーケティングの歴史に対し、「売る」ために私も変化し対応してきた。営業としてマネージャーとして経営者として、それぞれの立場で変革してきた。パソコン・インターネットブーム・提案書必須時代には営業手法を進化させ、生き残るためにマーケティングが必要だと感じ勉強した。営業・マーケティング部門が結果を出すための理想的なチーム連携についても対応してきた。

これからは顧客が体験して購買に向かうサブスクライバー時代になるため、Webから訪れる新しい見込み顧客と向き合わないといけない。しかしそのやり方を学ぶために本を探してみると、「営業だけ」「マーケティングだけ」の基本やマナー、テクニックを教える本はあるが、営業・マーケティングのやり方が一緒に書かれた解説書はほとんど存在しない。

もう一つの理由は「営業・マーケティングのやり方がわかりません」と正直に相談してくる人の少なさには驚かされることだ。「営業・マーケティングでしょ、一応やってます」「やり始めました」「なんとかなく頑張ってます」という人が圧倒的に多いと感じている。正直、私は最初はやり方が全くわからなかった。同業の仲間に相談したり、先行している企業から学んでいった。これからのデジタル時代の営業・マーケティングのやり方は、まだまだ学ぶべきことがヤマほどあるのだ。この本ですら1年経つと新しいやり方で抜けていることもあるだろう。

競合他社の製品・サービスページを見て、マーケティングのやり方を学ぼうと思った人もいるはずだ。しかし製品・サービスページを見てメニュー構成や、やろうとしているWebマーケティングの特徴は盗めたとしても、営業・マーケティング部門が連携している裏側のやり方は盗むことはできない。どのようなペルソナを対象として構築されているのか?認知から購買までのシナリオはどのように考えているのか?そこにナーチャリングメールやインサイドセールスや営業はどのように関与してくるのか?

営業が初回訪問から提案・クロージングまでにどのように営業対応すればいいのか?マーケティングのリードが営業訪問後、戻ってきた場合の対処は?このような営業・マーケティングの疑問に明確なやり方を示すことがこの本の目標だ。

営業・マーケティングに携わる対象者や業種・業態は広い。本著の対象者は前述したビジネスリーダーであれば、営業・マーケティングの未経験者でもOKだ。つまり「とにかくもっと会社を良い方向に変えたい人」に対して発信したい。(営業・マーケティング用語集のような専門用語の解説はしないので検索して調べてほしい) 私はBtoBのIT業界にいるが、業種はIT以外の製造業や流通業、サービス業など、すべての営業・マーケティングのヒントになる内容になっている。本著では案件を創るという表現だが、案件型の営業だけでなく、ルート型やコンシューマ販売型営業にも適用できる部分は多い。

ビジネスリーダーに加え、もう一人だけどうしても伝えたい人がいる。それは若手の営業・マーケティングメンバーだ。現在所属している人だけでなく、営業・マーケティングをこれから目指したい人、辞めてしまった人でもいい、営業・マーケティングに興味がある若者に聞いてほしい。営業は泥臭いイメージがあり若手に人気がない、マーケティングは華やかなイメージがあったが、やってみると地味な作業が多く失望した人もいるだろう。それは、その通りである。正解だ! しかしその理由として組織全体がつながるやり方がわからず、楽しくなかったのではないかと私は思っている。組織が強くなる営業・マーケティングはやり方がわかればサイコーに楽しい仕事であり、これからの日本の若者に一番やってほしい職種であると思っている。そんな若手にも楽しく伝えたい。

ひとつだけ非対象者を申し上げておく。それは「直接、顧客が見えない営業・マーケティングの人」は対象外とさせていただきたい。パートナー営業や流通営業の直接顧客に接触できない人のことだ。私が直販タイプであることも理由だが、最大の理由は今後サブスクリプション型の直接購入スタイルが増え、パートナー販売や代理店販売は今後、減っていく。

また収益認識基準法適用により、中抜き型流通営業はなくなっていくことも理由のひとつだ。直接顧客に接触できない営業・マーケティングはどんなやり方を持ってしても、目標予算を達成し、売上を向上させていくことは厳しい。それは相当難しいことだ。これからの営業・マーケティングのやり方は、もっと今以上にモーレツに顧客中心に展開していくであろう。

このブログでは営業の基本やマナー・精神論は教えないし、マーケティング部門がよく求めてくるSEO対策的なテクニックだけを書いているブログではないことも再度、お断りしておきたい。「チームが強くなる営業・マーケティングのやり方」というタイトルにしたように、営業・マーケティング部門の連携の悩みや、これから営業・マーケティング部門をつくっていきたいみなさんに、明日から実践できる「勝てるチームになれる営業・マーケティングのやり方」を紹介していこうと思う。ちょっとだけ、自分の営業・マーケティングを変えたい、責任者として大きく組織を変えたい、どちらの人にも営業・マーケティングのやり方がわかる本になっているので、この本を通じて共に学んでいこう。そして営業・マーケティングはやり方がわかればサイコーに楽しい仕事であることを実感してくれればとても嬉しい。

営業・マーケティングのやり方を知りたい!と思う人に贈る言葉

営業・マーケティングのやり方は教えられないと先輩・上司は言う。

その理由は「難しい」「特殊だ」「ケースbyケース」だからだそうだ。

その人のやり方を100%、個人と組織で習得することは無理だ。しかし、どんな業務でもやり方は教えられると私は確信している。勝てるやり方を50%までに標準化することは、必ずできる。それが営業・マーケティングの組織がまずやるべきことなのだ。

営業・マーケティングのやり方 「英語について」 

大事なことなのではじめにもう一言だけ、申し上げておきたいことがある。英語についてである。

私は意味不明な英語が大嫌いだ。先日、外資系の営業が中途入社してきて、突然「レベニューが、少し足らなくて・・」と言い始める。レベニュー?という定着していない営業・マーケティング用語を突然使うのだ。よく意味を聞いてみると、レビューとは売上のことで前職の外資系企業の社内用語だった。そんな組織に馴染んでいない英語を使うな!最初から売上と言え!と注意した(笑)

私はIT業界にいるので、英語が多い。私の業界は仕方がないかもしれないがそれが普通だと思っていると社内だけでなく、顧客にも伝わらないのだ。例えば先日、クラウドの意味は通じていたが、オンプレミスの意味は顧客に通じていないことがあった。(クラウド=サービス提供で月額利用、オンプレミス=ソフトウェア提供で購入利用) 日本人に浸透している一般的な英語は増えてきている。それらは使ってよいと思うが、馴染みのない英語を使用する場合は、組織で宣言することが必要だ。

マーケティングの世界では英語がたくさん登場する。マーケティング用語は特にそうだ。私はチームで新しい英語の用語を使う時には「これからこう呼ぶので統一してほしい」と標準化することを宣言する。例えば、Web問合せという言葉をやめて、MQL(マーケティングクオリファイドリード)に統一することにした。理由はマーケティングオートメーション(以下、MA)のツール用語だったから、ツールの活用度を上げるためにそうした。けっしてレベニュー!的なノリで使用したわけではない。このようにマーケティングはアメリカからやってきた手法なので、英語が多いのは仕方がない。外資系の企業はいいかもしれないが、国産バリバリの日本企業はチームには使用する意味の説明と標準化宣言をしてから使ってほしい。 

このブログは「チームが強くなる!営業・マーケティングのやり方」と名付けた。言葉の粒度を合わせてセールス・マーケティングとはしなかった。セールスが日本人に浸透していないためだ。(私自身もセールスと呼ばれたくない想いや、営業という呼び方に誇りもあることも理由だが)

しかしマーケティング用語は英語だらけである。用語説明や図解も交えてわかりやすく説明をしていくが、どうしてもわからない用語や文章が登場したら、検索エンジンで調べてほしい。

2020年6月、コロナ後の新規営業をどうしていくか? 考え始めた営業・マーケティングチームは多い。みなさん、不安そうに私のところに相談にやってくる。その理由はこれまでに誰も経験したことがないからだ。だが対策は必ずある。私が持っている答えを検証しながら、みなさんにご提供していきたい。

営業マーケティング7つのやり方
サービス基本ガイド

ラシックマーケティングがご提供するサービスの具体的な内容や進め方が記載されている資料です。「コロナ後」の新しい営業・マーケティングのやり方について、ヒントが書かれています。ぜひ参考にしてみてください。

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