第1章 営業・マーケティングのやり方(準備編)

マーケティングとは? 今さらながら考えてみよう

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今さらながら、マーケティングとは何?

マーケティングという言葉の意味は広義だ。「マーケティングをもっとやれ!」「うちはマーケティングが下手だ」と言う上司がいる。今はバズワードブームである。「これからはAIだ!」だ!「デジタルだ!」とバズワード連呼でリーダーシップを出そうとする人がいるが、悲しいかな、こういう人はその意味がほとんどわかっていない。私から言わせると、かけ声だけ出していて具体的な指示のできていないリーダーだ。そして営業・マーケティングの現場でもいわゆるバズワード的な使い方で「結果を出すためにはマーケティングだ!」と連呼する人が多い。「そのマーケティングって、どういう意味ですか?」と聞きたくなったことは誰にでもあるだろう。しかし上司には聞けないし、先輩にも言えない・・。

前ブログで営業・マーケティングは「宣伝して売る」と書いた。簡単に言うとこのような仕事をしていくのが営業・マーケティングだが、今ではちょっと言い方が古い。営業の意味はみなさんイメージができていると思うが、この10年ほどで定着したマーケティングの本当の意味はわかりづらい。本ブログの中ではマーケティングについての話はたくさん登場するので、今さらながら「マーケティングの意味」を整理しておきたい。

日本マーケティング協会のホームパージには、‘マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である’と記載されている。総合的な何なのか?と言う感じでわかりにくい。ドラッカー氏は、「マーケティングは事業の最終成果、すなわち顧客の観点から見た全事業である」と言っている。うーん、これもわかりづらいが、顧客が買いたいものを売るのがマーケティングの基本だよとドラッカー氏は言ってくれている。しかしそのやり方については、教えてくれていない。 

本ブログでは学術的な営業・マーケティング理論は書かない。売れる営業・マーケティングのやり方について徹底的に書いていきたいので、もっと具体的にマーケティングについて定義をしたい。

まずマーケティングの出発点は皆さんの会社の製品・サービスをどうやって売っていくのか?という1点の目標に尽きると思う。簡単に言うとそのための仕事がマーケティングである。ではそのためには具体的にどんな活動や作業があるのだろう。ベーシックに大別すると私はこの3つだと考えている。

マーケティングとは?を3つで説明する

➀案件創出(以下、案件を創る)
②市場調査
③ブランディング

案件創出という言い方がマーケティング用語では一般的だが、ちょっとイメージが硬い。そこで私は案件を創るという言い方にさせていただく。案件を創るとはリアル・バーチャルを問わず、顧客から自社の製品・サービスを見つけてもらい、営業の商談につなげていくことだ。リード→MQL(マーケティング・クオリファイド・リード=問合せのこと)→商談化、そして案件になっていくが、本著ではこのすべての進捗状況を営業・マーケティングで案件を創ると定義する。創るとは何もないところから創り上げていくという意味だ。案件の量は多ければ多いほどいいし、質が高ければなおさらいい。市場調査とブランディングは歴史が長いマーケティングで、BtoCの会社は昔から実行している。市場調査とは製品サービスを売るにあたり、どれぐらいの市場規模があるのか、競合はどれぐらいいるのか、そのエリアにはどんな世帯がいるのかなどをデータ提供会社から購入し分析する。小売・飲食は地図にマッピングしエリア別に出店計画を調査・分析する。ブランディングとは製品・サービス名やキャッチ・デザインを考えたり、認知やイメージを上げるために宣伝活動(テレビCMや広告など)を行い、ブランドを築き上げていくことだ。

市場調査とブランディングについては、売れる製品・サービスを企画して作るために必要なことだが、本ブログでは案件を創ることに絞り、案件を創るための営業・マーケティングについて書いていきたいと思っている。

その理由は三つある。まず一つ目は市場調査・ブランディングまで詳しく書いていくとマーケティングの範囲が広すぎて、書き切れないからである。とはいえこの二つのテーマについて全く触れないというわけではない。新しい製品・サービスを開発していくための新製品開発のマーケティングでは市場調査やブランディングはとても重要である。市場調査は新規企画・プロモーションや、ターゲティングで重要な作業であるため第二章「営業・マーケティングのやり方 企画編」で少し触れていきたい。本ブログでは自社の製品サービスをどうやって売っていくのか?に関するマーケティングの範囲に徹していきたいという趣旨をご理解いただきたい。二つ目の理由は、市場調査・ブランディングのマーケティングを実行していく優先順位が後でもよいケースがあるためだ。本著ではBtoBのマーケティングに焦点を絞り、そのやり方について詳しく記載していきたい。既存製品・サービスを売っていくためのBtoBマーケティングは市場調査・ブランディングの作業よりも、案件を創るためにやることがヤマのようにあるので、ここを徹底的に整理していきたい。三つ目の理由は正直に申し上げるが私が市場調査・ブランディングが苦手であり、案件を創るマーケティングが得意だからである。みなさんが日々悩んでいる営業・マーケティングは案件を創る、つまりリードを獲得し商談を増やすことだと感じている。案件を創ることに重きをおきながら、そこに関わってくる市場調査やブランディングのマーケティングのやり方を記載していきたいと思うので、ご了承願いたい。 

案件を創るためのマーケティングとは何か?に的を絞ると、マーケティングの活動や作業は説明しやすい。

案件を創るためのマーケティングとは? (1)宣伝をする  

会社の広報(コーポレート・IR)と製品・サービスの広報に大きく分かれる。案件を創るは製品・サービスの広報になり、Web広告や交通広告、新聞雑誌の媒体で宣伝をする。また新製品・サービスのプレスリリースを出したり、記者会見や取材に応じる。記事を掲載してくれるアナリストと関係を構築し、アナリストが調査会社で市場調査していれば自社製品・サービスの販売実績データを送り、レポートに入れてもらう活動を行う。これをアナリストリレーションという。広報は製品・サービスの認知拡大のためにプロモーション活動をする。パブリックなメディアと連携して宣伝活動をすることをパブリックリレーション(以下、PRという)

案件を創るためのマーケティングとは? (2)Webサイトをデザイン・作成し、運営する

会社ホームページ(以下、コーポレートページ)だけでなく、製品ページを作成し、顧客に自社の製品サービスの良さや実績を知ってもらうために作成する。顧客が検索エンジンでキーワード検索した時に自社の製品・サービスを上位表示できるように、検索エンジンのアルゴリズムに合った対策や仕掛け(SEO対策)を行う。最近ではブログの更新性を高めたり、顧客が検索キーワードを解決したり学べるダウンロード資料(ホワイトペーパーやEブック)を作成したりする。資料が欲しい顧客は必要な個人情報を入力し、欲しい資料をダウンロードする。この顧客情報を取得することをコンバージョンという。コンバージョンを増やすために製品サイトとWeb広告を連動させ、ランディングページを作成するケースも増えている。

案件を創るためのマーケティングとは? (3)セミナーやイベント・展示会、コミュニティを企画し実行する

(1)の宣伝をして(2)の製品ページで待っているだけでは、案件を創る量はまだまだ足らない。自社主催のセミナーを企画し集客・実行したり、外部企画会社に集客から運営まで委託することも必要だ。イベントは自社企画で展示会やフォーラムにしたり、外部の展示会運営会社に合同展示会の場所(小間:コマ)を購入し、自社で展示ブースを造作し出展するスタイルが増えている。この場合、費用はかかるが外部の展示会運営会社が新規の顧客を集客してくれるメリットがあるため、新規立上げの企業の名刺集めには有効なやり方だ。コミュニティとはクラウド&サブスクリプション型スタートアップ企業が、クラウドサービスを活用しクラウド利用を続けてもらうために、顧客顧客の利用状況の把握や関係作りを行っていくためのイベントである。カスタマーサクセスチームが担当することもある(コミュニティマーケティング)。このようにリアル活動が多いため、自社のノベルティを作成し販促活動を担当することもある。(全般的にはイベントマーケティングという)

案件を創るためのマーケティングとは? (4)製品サイトでコンバージョンした顧客やセミナー・イベントで集めた顧客をメールや電話でフォローする

製品サイトでコンバージョンした顧客や、セミナー・イベントで集めた名刺は、ほったらかしにしていては商談につながらない。いろんなステップに分けた、顧客のためになるメールを自動的に送ったり、(ナーチャリングメール)、直接メールや電話で検討状況を確認し、直接営業が訪問できるようにアポイントを取る。いきなりアポイントが取れるわけではないので、電話やメールで関係作りを行い、顧客に有益な資料を案内したりイベント情報などを提供し、潜在顧客になるまでフォローをする。(インサイドセールスという)

案件を創るためのマーケティングとは? (5)販売パートナーと開発パートナーにアライアンス活動を提供する

販売パートナーが自社製品を売りやすくするための製品情報サイトや資料を提供したり、パートナー営業向けの勉強会を開催する。パートナー会開催でアワード表彰や優秀パートナーには仕入条件を良くしてパートナーの販売意欲を高める。ユーザー会ではユーザーとパートナーを結びつける場を作り、コミュニケーションをはかる。開発パートナーには製品開発者のために技術情報の提供や製品研修(無料や有償あり)を行い、開発パートナー向けの認定資格を作る。パートナー営業に売ってもらい、技術者を増やすしくみを作ることが仕事だ。(パートナーマーケティング又はアライアンスマーケティング)

案件を創るためのマーケティングとは? (6)製品企画や製品開発をマーケティング視点で実行していく

製品の企画・開発は社内のメンバーで実行していくことは当たり前のことだ。しかし昨今では社内のメンバーだけで「こんな製品が売れるのは?」と考え、売れる製品・サービスができるほど市場は甘くない。つまり顧客の立場になり製品・サービスを考え、マーケティング視点で企画・開発していくための発想や活動が重視されている。例えば4P(企業側の視点)や4C(消費者側の視点)を比較し、製品企画に矛盾がないかを考え、少しでも売れる確率の高い製品サービスを開発していく手法が多く取り入れられている。

組織によっては製品開発と製品企画がそれぞれ独立していることもあり、製品企画にマーケティング視点の強い、製品開発のスペシャリスト(エバンジェリスト)を配置し、開発パートナーにマーケティング&技術視点でアプローチしていくやり方もある。(プロダクトマーケティングという)

案件を創るためのマーケティングとは? (7)その他のマーケティング 

マーケティングは企業によって様々なのでその他を7つ目に集約させていただきたい。グローバルのマーケティングプログラムのある企業は、グローバルマーケティングチームがある。営業販促物やテクニカルドキュメントの翻訳や音声動画の吹き替えを日本で実施し、各グローバル拠点に送り、統括管理をしている。

※「どんな商品をいくらでどのように売るか」のマーケティング戦略に4Pの手法(製品・価格・プロモーション・流通)がある。この中のプロモーションは4つあり広報・広告・販促・営業に分けられる。プロモーションとは購買の動機付けのための活動になり、(1)~(7)はプロモーションとも言える。しかし本ブログでは案件を創るためのマーケティングと定義した上ではマーケティングの活動や作業を(1)~(7)としたい。次章からはプロモーションという呼称で説明させていただく。(4Pには営業があるが、最近のプロモーションという表現はセールスプロモーション全般という意味合いが強い)

案件を創るためのマーケティングとは? まとめ

昨今では(1)から(7)に記載したような最新のマーケティング活動をひっくるめて「デジタルマーケティングだ!」と一括りでマーケティングを実践しようとしている企業が多いのが残念だ。冒頭に言った「バズワード型マーケティング」であり、それではやり方までに落とすことはできないのだ。

何度も言うがマーケティングという言葉は広義だ。案件を創るためのマーケティングとは何か?に的を絞ってまとめてみたが、それでもマーケティングの活動や作業は非常に多い。多すぎるのだ。なぜこのようにたくさんのマーケティングをやらなければならないのか、もう一度、原点に戻ってみる必要がある。シンプルに言うと顧客のインターネットの活用により、20年前と比べ売る側よりも顧客が情報を持っているからだ。もうこれは情報武装をしていると言っていい。認知→興味・関心→比較検討→購買プロセスの中で、製品・サービスによっては比較検討時にはすでに勝負が決まっていることもあるぐらい顧客が情報を収集している。

つまり顧客の買い方が変わったということだ。だから売り方も変わらなければならない。そのために、案件を創るマーケティングを我々がやらなければならないということだ。やることが多すぎてもやらなければならないのだ。キレイに言うとそれは顧客のためだからだ。顧客に有益な情報を提供し続け奉仕する。そしてその先に自社製品・サービスを認めてもらうのだ。もうひとつ、売り手として腹黒く言うと、顧客に対抗するためだ。顧客が情報武装をしているならば、我々も情報武装しなければ勝てない。マーケティングというテクニックを最大限に生かし、顧客に認知してもらい潜在ニーズから顕在ニーズに変えるまでアプローチする。それが令和時代のマーケティングなのだ。

営業マーケティング7つのやり方
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