第2章 営業・マーケティングのやり方(企画編)

営業・マーケティングの展示会出展のやり方 ~リアル展示会とバーチャル展示会の両面で考えてみよう~

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コロナ禍やテレワークの中、営業・マーケティングが企画するべき、展示会出展のやり方についてまとめてみました。またコロナが終息すれば展示会開催ができるかもしれませんので、その時期に備えながら、現在、活況のバーチャル展示会についても触れています。リアル展示会とバーチャル展示会の両面で考えていきましょう!

営業・マーケティングが企画するべき、展示会出展とは?

 自社イベント・セミナーは自社で企画し集客をすることは大変だが、前ブログに書いた通り、営業部とマーケティング部で考え、集客し、講師や会場の手配をしていけるよう頑張ってほしい。何度も申し上げるが、自社イベント・セミナーはコストを抑えられるプロモーションであることが大きなメリットなので、自社で企画・実行できるチームになろう。

 しかしリアルな自社イベント・セミナーを企画して集客していくには労力もかかるし、企画数(例:セミナー数)にも限界がある。そこで、コストがかかっても外部にアウトソーシングするイベント・セミナーも併用していきたい。それが展示会出展だ。(本ブログでは展示会出展とは自社ではなく外部の企画運営の展示会を指す)

 展示会出展は企画・準備・集客の苦労を、展示会運営会社に任せればいいので楽だ。自社の営業部・マーケティング部は出展ブース設計の企画や運営だけを考えればいいし、何よりもたくさんの新規顧客が来場してくれるので、新規アプローチできるメリットは大きい。ただその分、コストはかかる。それは展示会運営会社が企画・準備・集客をする費用が含まれているからだ。展示会運営会社は場所(小間:コマ)を販売する。1小間100万ぐらいなので2小間出展すれば200万ぐらいかかる。加えて展示ブースやコンパニオンやノベルティ費用も内容によるが、場所:小間費用以上は必要になる。つまり2小間なら場所で200万、展示ブース一式で200万~300万、合計500万ほどかかる。運営する社員のコストはこれとは別だ。大手IT企業や製造業向け工場設備を展示するようなケースは、10小間~20小間の場所の広さになっていくので高額なプロモーション費用となる。そしてこの展示会出展を課題解決のテーマ別に年間何本も続けていくと、社内マーケティング予算の最大シェアになることもある。このようにコストはそれなりに覚悟しなければならないが、狙いがよければリターンが最大化できるのだ。

よい展示会出展を企画するための3つの考え方

展示会出展を企画していくための狙いや背景は様々だが、整理してみると3つの考え方に落ちつく。この3つの考え方に当てはまる場合は、積極的に展示会出展を検討してみよう。

(1)新しい製品・サービスを認知してもらうための展示会出展

新しい製品・サービスをリリースするときは、誰も知らないわけだし、製品・サービスを認知してもらうには相当苦労する。これはスタートアップ企業も同じだ。Web広告や交通広告、テレビCMに広告を出し、新しい製品・サービスを認知してもらうやり方もひとつだが、展示会出展以上にカネがかかるし、広告は直接案件へのつながりが見えづらい。早期に案件を創りづらいのだ。展示会出展は新規顧客が数日間で数万人も来場するので新しい製品・サービスや企業の認知向上の活動と、新規案件を早く創る活動に向いている。

(2)新規リード数の年間目標をクリアするための展示会出展

KPIが設定されている企業は、営業部の目標予算を達成するために、④案件化数から逆算して、③商談化数―②MQL数-①リード数の過去実績を把握している。つまり今期の目標予算を達成するためには、リードは何万件必要だ!ということをマーケティング部は理解している。④③②①がマーケティング部のKPIの柱になるケースが多い。リードはインバウンドマーケティングで獲得するリードもあるし、自社イベント・セミナーのリードもある。しかしそれだけでは目標リード数は補えない。そこで展示会出展をすることにより、集客がよめる展示会出展で獲得リード数を獲得したいのだ。リードが取れれば、マーケティング部でナーチャリングやインサイドセールスで育成できる自信があるチームの出展理由と言えよう。

(3)展示会の出展テーマと自社製品・サービスの狙いが合っているための展示会出展

展示会には〇〇展という集客が見込める「旬」な課題解決のテーマで構成されている。展示会運営会社の企画力はここにあるし、集客もほぼネーミングで決まる。例えば「働き方改革展」「AI展」「VR Expo」「量子コンピュータExpo」のようなタイトルである。このような展示会のテーマと、自社製品・サービス販売拡大の狙いが合っている場合は、出展するべきだろう。人気展示会になる可能性が高ければ、獲得できるリード数も期待できるからだ。

(1)も(2)も展示会出展理由としてはセオリーだし、プロモーション企画段階で出展計画をすることは良いと思う。狙い目は(3)の出展テーマで決める場合なのだ。

展示会の潮目が変わる2つの瞬間を見逃すな!

 展示会には「旬なテーマ」の時が必ずある。それが前述した(3)の場合だ。「例えば私はIT系なので、ある時期に「AI」と「自動化(RPA)」のビックワードが猛威をふるった。このテーマだけで展示ブースに人がどんどんくるのだ。「AI」と展示ブースに書いているだけで、名刺を置いていく人もいたぐらいだ。

 このように業界をあげてのビックワードが展示会テーマになる時はあるはずだ。潮目が変わる瞬間があると、言っていい。この潮目には2つの種類があるので抑えてほしい。1つ目の潮目は新しいビックワードのテーマがくる「第1回目〇〇展」が開催される時だ。展示会企画は展示会運営会社が考えてくれるので任せておけばいいが、第1回目を新設するということは、新テーマを狙っているということだ。つまり第1回の来場者数は、フレッシュな新テーマなので来場者数が多い。展示会はたくさんの種類の「〇〇展」が開催されているが、何回もやっている歴史のある「第10回〇〇展」と「「第1回〇〇展」ではテーマの鮮度が全然違う。

 そして第1回目展示会の良い展示会に出展するためには、展示会運営会社の営業と関係作りをしておくことが大事だ。私は「第1回目が企画されたら、必ず教えてほしい」と伝えている。これだけで情報キャッチはできる。多くのリード獲得ができるはずなので、第1回目狙いは徹底してほしい。さらに「自社製品・サービスの狙い」が合っている場合は積極的に検討するべきだ。

 2つ目の潮目は、新しいビックワードのテーマが終焉する潮目を感じてほしいということだ。どんな旬なテーマでも必ず終わりがくる。ずっと定番のテーマ「〇〇展」で集客できている業界はあるのでこれはいい。しかし、来場している顧客が新しいテクノロジーや業務の課題解決テーマのために情報収集している時期から、十分に情報取集ができて、製品・サービスの導入を完了した、という時期に変わる瞬間があるのだ。このようなブームが去る瞬間の潮目を見逃さないでほしい。つまり「旬なテーマ」が「枯れたテーマ」になる潮目があるのだが、それは展示会の現場に入なければわからない。  潮目をキャッチするためには毎年運営のために現場にいる、営業・マーケティングのメンバーのレギュラーを決めることだ。毎年コロコロと入れ替わっていては、潮目もわからない。もうひとつのやり方は、第5回目ぐらいで見切りをつけることだ。どんなビックワードのテーマでも飽きられてしまう。ブームはずっと続かないものなので、終焉は仕方がない。皆さんの業界や業種によっても「定番テーマ」と「新しいテーマ」の循環度合は違うと思うので、一概には言えないが、展示会現場で潮目が変わる瞬間は、現場で感じ取ってほしい。

展示会出展は「場所」で7割決まる!申込時期を抑えよう

 展示会出展で質の高い商談数獲得とリード獲得(名刺)の成功のポイントは、先述した展示会テーマだけでなく、もうひとつある。それは場所だ。場所がよくなければ、いくら良い展示会テーマでも、素晴らしい展示ブースを作ったとしても、お客さんは来場してくれない。良い場所に出展することは、展示会の重要な成功要素なのだ。メイン通りは大きな小間に設計されており、カドの小間も同じだ。予算都合もあるが「メイン通り」+「カド地」はサイコーのロケーションなので抑えたい。良い場所を抑える方法は、お金をたくさん払えば抑えられるわけではない。早い者勝ちなのである。

 展示会出展の企画で抑えておきたいポイントは、出展者が募集されるタイミングだ。皆さんもご存知の通り申込時期は1年前から始まる。ちょうど展示会に出展している初日か、その2週間ほど前から募集される。つまり1年前に展示会出展を計画し、ある程度の企画を行っておかなければならない。つまり来々期の計画になるケースが多いだろう。まだ来々期の予算も決まっていないのに、数百万~数千万の申込ができる営業・マーケティングのメンバーはそうはいない。一度申し込むとキャンセルはできないので、もし製品・サービスの営業方針や施策が変わり出展が取りやめになってしまったら責任が取れないからだ。

 しかし早く予約しないと良い場所は取れない。解決策としては予算を担当する営業部かマーケティング部の責任者が抑えるか、先を見据えた長期ビジョンのマーケティング計画を考えておくしかない。定番の製品・サービスであればある程度予算は毎年決まっているはずなのでやりやすい。新しい製品・サービスが開発されていて、来年大々的に発売されることも責任者であれば知っているだろう。ここは営業・マーケティングの1メンバーではなく、責任者の判断と責任で、よい場所を抑えてほしい。

 展示会出展はこのような勘所を抑えてもらい、企画をしていってほしい。製品・サービスの特性によっても様々だが展示会出展から獲得したリードの商談化率、案件化率、受注率は高いとは言えないかもしれない。一方で「うちは受注率が高いですよ」という人もいる。経営者の来場が少なく、一般社員の来場が多い展示会出展も少なくない。展示会出展の活用ポイントは企業によって様々なので、費用対効果を考え、しっかり企画をしてほしい。

営業・マーケティングの「やってはいけない展示会のやり方」

 展示会出展でひとつだけやめてほしい考え方がある。それは「展示会に出ていないと予算達成できない」というマインドだ。これは営業責任者に多い考え方だと感じている。予算達成できるかどうか不安なので、展示会出展の効果をあまり測定せず、同じような出展を何度も繰り返すやり方だ。 展示会出展を続ければ予算達成ができるわけではない。予算達成をするためには営業・マーケティングのやり方を組織で標準化し、新規プロモーション企画を営業部とマーケティング部で連携して、たくさん考えること大事なのだ。先述した「潮目」を感じ出展計画をしてほしいことと、製品・サービスの営業方針を前年度にしっかり考え、よい場所を早く予約してほしい。展示会出展は新規顧客が数日間で数万人も来場してくれるので、営業・マーケティングのプロモーションを力強く支援してくれる。効率的な展示会出展の企画を営業・マーケティングチームで議論してほしい。そしてこれらのすべてのプロモーション企画が決まったら、マーケティング計画書の作成に入る。本章では企画のやり方を中心で説明をしていくが、計画書作成について本章の最後に触れたい。

バーチャル展示会が増えている。営業・マーケティングで検討してみよう!

 バーチャル展示会はリアル展示会にずっと押されて気味で、年々低迷していた。しかしコロナ禍・テレワーク・在宅勤務・リモートワークが中心の今、リアルな展示会が開催できなくなったので、再度注目を浴びている。1社で数千万円をかけてバーチャル展示会ブースを作成した会社もある。Webから来場すると、ブース別に制作された製品・サービスの動画が流れ、説明してくれるという流れだ。

 自社で開発するのはコストがかかり大変なので、Webメディアがバーチャル展示会を共同出展で運営しているものもある。このスタイルであれば、費用も削減でき、テレワークの顧客でも気軽に来場できる。バーチャル展示会終了後、製品・サービス説明のために制作した動画ももらえるサービスもあるので、一度検討してみてはどうだろうか?

 しかしバーチャル展示会は一般的に「顧客の本気度が低い」「臨場感がなく、軽い感じの参加意識」と言われている。Webセミナー(ウェビナー)も同じように「質」が悪いと言われているが、新規営業・マーケティングの新しい企画を考えていかなければならない今、挑戦してみることも大事だろう。