第2章 営業・マーケティングのやり方(企画編)

営業・マーケティングになぜ、事例はあった方がいいのか?~その理由と事例の作り方~

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営業・マーケティングを企画する際に、顧客の導入事例は年間通して増やしていきたいし、たくさん欲しい。しかしなぜ事例は必要なのだろうか?事例取材に合意をもらい、事例を制作していくやり方はどのように進めていくのが効率的なのだろうか?営業・マーケティングの事例についての取り組みをまとめた、珍しいブログです。

営業・マーケティングの事例づくりのポイント「事例」と「ロゴ」

 営業・マーケティングの企画段階で「事例数」と「企業ロゴ数」に分けて目標を考えよう。来期の事例候補の選出や事例本数目標、ロゴ使用許可目標を立てておくのだ。ところが事例はいきなり掲載許可OKが既存顧客から出ない。製品ページの事例に既存顧客に出てもらいたくても「まだ導入直後の成果が出ていないから・・」と言われ、数年待つケースもある。顧客に対し「導入した事例でロゴ掲載だけお願いします」と企業ロゴだけ集め、製品ページに掲載することはまだハードルが低い。しかし企業ロゴ使用許可も既存顧客によっては厳しいため、時間がかかることがある。事例やロゴはマーケティング部だけでは顧客と交渉はできないし、事例計画は早めに年間単位で候補先を立てて、営業に交渉してもらうようにしよう。                                      事例はどのように作成し、どんな活用をするべきなのだろうか。導入事例は製品ページの事例メニューに集め、自社の製品・サービスがたくさんの既存顧客に導入されていることをアピールするべきだ。導入事例シナリオはこうだ。新規顧客に対し、問題を抱えていて悩んでいる時に、自社の製品・サービスに出会い、これなら課題解決ができると思った。そして製品・サービスを導入し、狙い通り課題が解決され、非常に便利に活用している、という内容にするのが顧客に伝わりやすいだろう。事例はリーフレット、つまり紙の事例集にもなり、営業が手配りで顧客に渡し、提案時に近い業種・業態の新規顧客に提案をする時に活用する。事例顧客は自社セミナーに登壇してもらい、既存顧客の声として、製品・サービスの良さを話してくれるインフエンサー的な役割をしてもらえれば、サイコーの事例だろう。

事例はなぜあった方がいいのか?

ここで基本的なことだが、導入事例はなぜあった方がいいのだろう。よく営業・マーケティングメンバーが新規顧客に言われることを箇条書きにしてみたい。

・同じ業種・業態の事例や、同じテーマや課題解決で導入した事例があれば、安心するから

・新規顧客が必ず求めてくるため、当たり前のように用意しておく

・わかりやすく伝わるから

・事例がないと新規顧客は選んでくれないから

・新規顧客に自社サービスを導入した姿をイメージしてもらうため

このような新規顧客の声が導入事例にはあった方がいい理由であろう。だが事例が必要なもっとわかりやすい理由がある。これは私が導入事例を探し、作成する時の流儀みたいなものだが、ズバリ、こういうことだ。

➀経営者に響くため

②日本人は事例に安心感を持つため

この2点について、詳しく説明していくので、皆さんも事例の必要性について考えてみてほしい。

営業・マーケティングに導入事例が必要な理由 その① 経営者に響くため

 事例はたくさんあることもよいが、提案している新規顧客に近い事例であることが大事なポイントだ。事例は特に経営者に響くと言われているが、なぜだろう?経営者は様々な製品・サービスの提案を受け、最終決済をする。しかし細かなところまでは見ない。せいぜい費用感と、導入後に手にできる効果ぐらいしか見ないだろう。

 だが経営者がよく口にすることがある。「なぜあの製品・サービスを導入したのですか?」と友人の会社に聞かれたら。「うちと近いA社が入れているから」と答えることが多い。「近い業種・業態のA社で結果が出ているらしく、うちも似たような会社だから決めた」と決定した理由を友人に語っているのだ。提案書の中身を細かく見ていないにも関わらず、自社に近い事例だけは経営者は頭の中にインプットするものなのだろう。さらに知り合いの顧客が導入していたり、紹介してくれた顧客が成果を出していたりすれば、もっと事例として響く。いろんな業種・業態・分野にあった事例を集め、経営者に響かせるために事例を増やしていこう。

営業・マーケティングに導入事例が必要な理由 その② 日本人は安心感を持ちたい

世界のジョークという話で、日本人の事例に関係する話がある。この話を引用させていただきたい。

■世界のジョーク タイトル 「沈む船から飛び込ませるために」

この客船は航行中に事故に遭い、もう沈むしかない。残された時間はあと1時間だ。救命ボートは乗客全員分ないため、船長は乗客を飛び込ませたい。だがなかなか乗客は飛び込まない。そこで各国の乗客に、船長はこのような言葉をかけた。

イタリア人には「海で美女が泳いでますよ」

イギリス人には「こういうときにこそ紳士は海に飛び込むものですよ」

アメリカ人には「今飛び込めば貴方はヒーローになれるでしょう」

そして日本人には、「みんな飛び込んでますよ」

日本人にはこのように声をかければ、飛び込むそうだ。つまり、「みんなやっている」「あの人がやっているなら」「たくさんしているなら早くやらないとまずい」という精神が日本人にははたらくのだろう。導入事例にも日本人は「みんな導入している」「競合先が入れた。知り合いも導入した」「うちも早くやらないとまずい」という安心感を持ち、同じ方向に向きたいと感じている。自分のところだけ乗り遅れていない安心感も持ちたいはずだ。導入事例には①②のような大きなメリットがあることを信じて、事例づくりに取り組んでほしい。

事例を断られるケースの交渉術

お願いしても顧客は事例を断ってくるケースはある。次のように交渉してみてはどうだろう。

(1) 代理店がいるから

つまり、皆さんの会社と既存顧客の間に代理店がいて、代理店がOKを出さないケースだ。もし既存顧客が事例OKを出してもいいと言っているなら、迅速に代理店に交渉をしよう。代理店名も事例に書いてPRすれ喜んでくれるはずだ。

(2) 出せないジャンルだから

新しいテクノロジーやデリケートな業務分野で企業の機密情報にあたるというわけだ。このような顧客の顧客が情報漏えいに敏感な業種であるケースは事例にしづらい。ねばり強く交渉をするしかないだろう。

事例を顧客にお願いするタイミングとは?

次のような時はにこそ「事例になってほしい」と切り出してみる絶好のチャンスだ。ぜひ実践してみてはどうだろうか?

(1) 経営者(又は部門長)が訪問時に、経営者にお願いする

担当営業から既存顧客担当者にお願いしても、「どこの部門に許可を取ればいいかわからない」と事例許可に慣れていない人が多い。そういう時は経営者に経営者がお願いして、そこで即決してもらうのが一番だ。経営者も喜んで引き受けてくれるはずだ。営業が同行する時は、切り出してもらおう。

(2)クロージングしている受注直前に、顧客から値引き要求があった時。または新しく機能要求があった時

顧客から値引きや機能要求があったのであれば、このタイミングで、事例掲載への交換条件を出すと効果的だ。「お値引きするかわりに、事例へ」「次のバージョンアップで機能強化するので、事例へ」をアピールしながら事例になってもらおう。顧客は損をせず、値引きや新機能が手に入るなら応じてくれるはずだ。対等の立場で交換条件を出し、オフトレードの精神で交渉しよう。

営業・マーケティングの導入事例の作り方

 事例先が決まれば、正式な会社からの依頼としてレターを出そう(会社案内やロゴのデータフォーマットなどのいただきたいもの、当日の進め方、他の事例のサンプルなどを送る)。取材当日には、顧客の担当者や上司で事例写真を撮影するが、集合写真だけはぜひ社長に出てもらえるよう交渉をしよう。社長も写真撮影だけであれば応じてくれやすい。撮影もライターもプロを雇う必要はない。自社の営業・マーケティングメンバーで撮影し、書いてみよう。聞き手+ライターが1名、写真担当が1名で社内対応できるし、これはコンテンツづくりの良い経験になる。

 事例のストーリーは会社紹介⇒ 課題⇒ 製品との出会い⇒ よかったから決めた⇒ 出始めた効果⇒ これから将来はこうしていきたいという流れが一般的だろう。また私は1時間の取材中、顧客の音声を録音しない。メモをしてその日のうちに書くことをルールにしている。終了後、当日中に2時間で書いて、翌日1時間読み直しチェックをする。翌日以降になると忘れてしまうし、録音して聞き直しながら1日も2日もかける作業ではないと思っている。

 そして事例作成で一番重要なことはタイトルの「キャッチ」「つかみ」であると言える。「〇〇の取り組みで〇〇の短縮に成功!」のようなタイトルにすると、「あの会社があの取り組みをして〇〇な成果を出した」と読み手に伝わる。わかりやすく言うと、それぐらいしか、人は覚えないのだ。もちろん興味のある人は事例本文もしっかり読んでくれるので、よい内容にしよう。事例のタイトル、見出し、本文はインバウンドマーケティングの検索エンジン対策にもなるが、タイトルの「キャッチ」「つかみ」はインパクトのあるものにしていこう。顧客の記憶に刻むためだ。

自社が導入事例になっていないと顧客は納得しない

 自社は導入事例になった方が絶対にいい。しかし製品・サービスの分野にもよるので、事例になれるとは限らない。例えば生産管理クラウドサービスを提供しているIT企業は、モノづくりをしていないので自社で使うことは無理だ。だが経費精算クラウドベンダーは自社の経費精算で使用し、ツールを活用しているはずだ。製品・サービスを自分たちが使っていて、一番成果を出している、という事例は最初に作成するべきだ。特にスタートアップ製品は認知を広めるためにも必ずやるべきだと思う。自分達が使っている事例効果は一番話しやすいはずだし、営業・マーケティングメンバーも、アピールしやすいはずだ。「事例先が見つかりません」と言っている企業ほど、自社が事例掲載されていないことが多い。自分達が自社の製品・サービスを活用して、サイコーの事例になろう。

 導入事例をたくさん持っていることは非常によいことだ。特に、経営者に響き、日本人は事例に安心感を持つため、営業・マーケティングチームは一丸となって事例を増やしていこう。ただし、導入事例は顧客の購買プロセスで響くのは後半だ。つまり、認知・気づき・学びのプロセスではなく、興味・関心→比較検討のプロセスで威力を発揮する。認知・気づき・学びには、必要なコンテンツづくりの作業があるのだが、それは第三章(実行編)でご紹介していきたい。

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