第5章 営業・マーケティングのやり方(提案・クロージング編)

プレゼン資料の作成 準備編

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顧客のRFP(提案依頼書)に対し、提案書を提出し、提案書選考には残れた。最終プレゼンは4社で1週間後に行うことになった。プレゼンをする時間帯はいつがいいのか?どのようにプレゼン資料を作成していけばいいのか、誰がプレゼンをするのか、プレゼン資料の作成:準備編と題し、成功させるためのプレゼンについて解説していきたい。

プレゼン資料を作成する前に

 顧客主導でRFP(提案依頼書)案件に提案書を期限通り提出し、10社から4社に絞られ、次はプレゼンに進むことになったとしよう。提案書選考では落ちなかったので、ここまではまずまず順調だ。プレゼン日は1週間後で、1社の持ち時間は1時間(45分説明、15分質疑応答)と決まっている。 4社に絞った理由はおそらく1日でプレゼンが終了するからだろう。

1番目9:30~10:30
2番目11:00~12:00
3番目13:30~14:30
4番目15:00~16:00

 プレゼンの時間割りは以上となっている。顧客側は1日プレゼンを聞くのはとても疲れるだろうが、良い提案で価値のあるソリューションを選びたいと思っているからこれぐらいは当然だ。1日で一気にプレゼンを聞いて、16:00以降にプレゼンを聞いたメンバーは、検討チームが用意した提案比較表に記入しに提出する。その場で少し話し合うこともできるし、結論は出しやすい。その後1社に絞り、経営会議で最終承認まで行く流れが一般的だろう。
 RFP案件は顧客主導で進むので、提案書作成は大変だし、見積提出にも細心の気を配らなければならない。だが結論はスケジュール通りに顧客が出してくれることは、RFP案件の良いところだ。10社競合でベストな見積を提出しているのだから「御社に決めるので、金額ももっと値引いてほしい」という更なる値引き要求も少ないだろう。  

プレゼンの時間を選べるとしたら、何番目がいいのか?

 プレゼンの順番は顧客が決めることが多い。だが関係構築ができているベンダーであれば、「好きな順番を選んでいいですよ」と言われることがある。既存システムを担当しているベンダーや、質問記入票のやり取りで訪問ができて評価されたベンダーがそうだ。このようなケースでは何番目の順番を選ぶと、プレゼンを優位に進められるのだろう?
 これは答えを先に言おう。「1番目」が絶対有利だ。1番目がもし埋まっていたら、早い方がよいので2番目だ。後半になればなるほど不利になっていくのが、BtoB提案のプレゼンだと考えよう。漫才やコントのコンテストは「1番目は最初に点数がつきにくいので不利だ。後半の方が良い」と言われている。テレビ番組上、1番目が点数の基準になるので、審査員も1番目には慎重に点数をつけてしまうからだろう。
 だがBtoBのプレゼンでは、各ベンダーの点数は最後に記入してもいいし、4社のプレゼンを聞いてから相対評価をしてもいい。つまりすべてのベンダーのプレゼンを聞いてから最終評価を決めるのだ。ならば最後の順番でもいいのではないと思うかもしれないが、最初のプレゼンが一番記憶に残りやすいのだ。これは間違いない。顧客側は聞いているうちにプレゼンに飽きてきたり、昼食後の昼一で眠くなってきたりして、記憶が薄れてくる。もちろんプレゼン内容がよくなければ1番目でも最後でもダメなわけだが、もしプレゼンの順番を選べるのならば、トップバッターの1番手を選び、強烈な印象を与え、少しでも有利に進めていこう。
 それでは1週間後のプレゼン日までにどのように準備を進め、当日にプレゼンを行えばよいのか、プレゼン資料の作成(準備編)と(実行編)、そしてプレゼンのやり方に分けて紹介をしていこう。

プレゼン資料の作成(準備編) ①まずプレゼンのやり方と印刷物の確認

 1社の持ち時間は1時間(45分説明、15分質疑応答)と聞いたが、まずプレゼンの資料の印刷について確認が必要だ。提案書や見積書はすでに提出している。300ページの提案書を45分で説明することはできない。顧客からは「提案書から抜粋してもらってプレゼンをしてください」というケースが多いだろう。そしてプレゼン用の資料を作成していくわけだが、まずプレゼン資料は当日印刷して渡すかどうかの確認をしてほしい。初回訪問時のように資料は先に配りたくない。理由は、先に読まれるとインパクトが薄れるからだ。

 ではベンダーは顧客にはこう伝えてみよう。「提出した提案書と見積は弊社で印刷して持参します。プレゼン資料は提案書から抜粋し別途作成するので印刷はしません。プレゼン時に提案書の資料内からいくつか引用しますので、細かな内容は提案書を見ていただきながら進めます」という展開が一番やりやすい。

 その理由はプレゼン資料をギリギリまで作成できて、より良い提案書にブラッシュアップできるからだ。提案書を提出することで「提案」はいったん終了している。これからは「提案内容をプレゼンする」ことに顧客は期待しているので、やり方は任せてくれるはずだ。プレゼンのやり方はベンダー側で主導していこう。もちろん提出した提案書から逸脱したプレゼン内容にはなってはいけない。「提案書に準拠した伝わるプレゼン」を目指し最善を尽くそう。

 顧客側が「提案書は社内でファイル共有しておきます」というパターンはよくある。自社で印刷する手間が省けるので、ついついお願いしてしまうことがあるが、断った方がいい。プレゼンを聞く経営者や現場層のほとんどが事前にファイルを見ていないし、どこにファイルがあるかさえ理解していない。1時間の中で提出したい資料はベンダー側で演出することも手を抜かないでおこう。つまり印刷物とプレゼンで話す資料を分けて、印刷物を準備して訪問することも、良いプレゼンをするための流儀だ。

プレゼン資料の作成(準備編) ②プレゼンの目的を再確認

 プレゼン資料はベンダー側に任せられることになったので、いよいよ提案書を作成していくが、もう一度、当日のプレゼンの目的を、プレゼンメンバーで再確認しておこう。顧客からのRFPに対応するための提案書一式(新業務機能記述書、機能要件一覧書、提案書、別提、見積書)はすべて提出した。提案書一式の内容を全ベンダー分、すべて目を通しているのは、検討チームの管理部の数名だろう。プレゼンを聞くすべての参加者が隅から隅まですべて読んでいるケースは稀だ。提案ベンダー4社の提案比較表は管理部が作っていて事前配布していれば、プレゼンを聞く人の4社の情報は提案比較表程度だと思った方がいい。

 つまり、まだどのベンダーにするかは決まっていない初回訪問時の状態と近い「顧客は平等に期待している」ということだ。初回訪問の目的「想像(イメージ)してもらう」ことも思い出そう。プレゼン時も初回訪問と同じ目的と近いのだが、プレゼン時の方がもう少し顧客のインプットが前進している。

 プレゼンの目的は「顧客に自社の提案が一番いい」と言ってもらいことだ。だが具体的な提案の中には顧客が「こうなりたい」というあるべき姿(ToBe)が書かれている。顧客が提案を受ける目的は「あるべき姿に一緒に変われるベンダーを選定する」ということだ。ならばプレゼンで顧客の期待に応えるための目的は「顧客をRFPに記載されているToBe(あるべき姿)に変えるために、自社を選んでもらう」となる。プレゼンの目的は「弊社のソリューションを選んでいただければ必ずあるべき姿を目指せます!一緒に変わっていきましょう!」というメッセージにしていこう。

プレゼン資料の作成(準備編) ③プレゼンは誰がやるのか

 プレゼン実行者は、魂を込めて作成し提案書をまとめてきた営業がいい。業務要件や技術要件に関する説明はSE(技術・開発)が行い、営業とSE(技術・開発)でバランスよく分担してプレゼンを演出したい。
 ところが、ベンダーによっては技術営業やプレコンサル営業が提案書を作成し、プレゼン専門のチームとして登場する。当然プレゼン専任なのでプレゼンはうまい。ところがそのベンダーに発注して、担当SE(技術・開発)がキックオフ時に来たら、全然イケていない人が来て、その後の開発・導入作業に苦労することを顧客は知っている。RFPを作成したコンサル会社に、このようなプレゼンパターンを耳打ちされているのだろう。
 選定後のSEギャップを避けるため「プレゼンは導入後に担当するプロジェクトマネージャー(プロマネ・PM)が行うこと」と決められている場合がある。つまり担当するSEがプレゼンで説明してくださいということだ。これは最近よくあるパターンのプレゼンスタイルで、注意しなければならない。

 SEは導入後の要件定義や設計・開発は得意だ。だがプレゼンのように顧客を大きく包み込みながら提案の良さを伝えていくことは得意ではない。技術者は「できる・できない」を論理的に判断し、正確に物事を進めていける。だから開発や導入作業は得意だ。しかし論理的にハッキリしすぎていて「できないことはできません」と回答して、受注するための気の利いた表現が少し欠けている場合がある。営業は「できた方がいい、できないとまずい」と受注するための配慮や気配りの営業視点がある。だから営業とSEでバランスよくプレゼンをしていくことがベストなのだ。

 顧客の指定であれば、SEがプレゼンを行うしかなく、こうなればSEに頑張ってもらうしかない。SEにもプレゼンスキルが必要になってきたと言えるのだろう。SEが製品の技術面の良さを伝えていくエバンジェリストという人材を育成し、製品担当技術としてプレゼンを実行する会社も増えている。本ブログでは説明を割愛するが、技術者のプレゼンスキル向上も目指していってほしい。

 しかし、もう一度営業とSEの2名でプレゼンができるよう顧客にお願いをしてみよう。「導入後に担当するSEに、業務要件や技術要件の細かなところやスケジュールや体制は説明させます。ですが全体の提案書作成は営業が取りまとめていて、SEがすべてを把握しているわけではありません。よって第一章の提案方針とその他の一部分のプレゼンは営業に担当させてください」とお願いするのだ。プレゼン内容のすべてをSEが話さなくても、導入後に担当するSEが、開発や導入に関する大事な部分を話していれば、顧客の要望は満たしているので、承諾をしてくれるのではないだろうか。これは良いプレゼンにするための交渉である。頑張ってぜひ顧客にお願いしてみてほしい。次はプレゼン資料の作り方について、説明していきたい。

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