第5章 営業・マーケティングのやり方(提案・クロージング編)

プレゼン資料の作り方 実行編

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顧客のRFP(提案依頼書)に対し、提案書を提出し、提案書選考には残れた。最終プレゼンは4社で1週間後に行うことになった。提案書は200ページを提出しているが、そのままでは45分のプレゼンではおさまらない。ではプレゼン資料はどのように作成していけばいいのだろう?プレゼン資料の作り方:実行編と題し、成功させるためのプレゼン資料について解説していきたい。

プレゼン資料の作り方(実行編)とは?

 いよいよ45分間で説明するプレゼン資料を作成していこう。提出した提案書が200ページだとすると、プレゼン資料が同じ200ページでは所定の時間内にはとても収まらない。しかしイチからプレゼン資料を作っていくことは提出した資料と一貫性がないし、そもそもそんな作成時間もない。そこで提出した図の提案書・200ページをベースにして、プレゼン資料を作成していこう。

 まずプレゼン当日に提案書一式(新業務機能記述書、機能要件一覧書、提案書、別提、見積書)はすべて参加者に印刷して渡す予定だ。質疑応答時のベンダー回答で「お手元の資料の〇〇ページをご覧ください」と資料を見てもらいながら説明できるので、印刷物があれば安心だ。プロジェクタで映すと小さくて見えにくい資料があっても、同じように印刷物を見てもらい補足説明ができる利点がある。

 プレゼン資料はプロジェクタでスクリーンに映し、参加者全員スクリーンを見ていることを前提に作成していく。配布資料はないので、小さな文字は徹底的に大きくしていきたい。「①プレゼン用に作成するプレゼン資料」と「②提案書から抜粋する資料」をバランスよく作成していく。SE(技術・開発)が説明する業務要件や技術要件の資料は第3章が中心になり、第4章以降からも抜粋する。ただしSEも第3章で強調したいポイントをプレゼン資料として作成していこう。

 営業は第1章の提案方針で抜粋する資料以外は、プレゼン専用の資料を作成しよう。ここからのプレゼン資料の作り方を説明していきたい。政治家の街頭演説は声だけのプレゼンだが、BtoBにはプレゼン資料がある、プレゼン資料の作り方でプレゼンの説明が引き立つ、いくつかテクニックがあるので、解説していきたい。

プレゼン資料の作り方 ①フラッシュプレゼン型で作る

 プラッシュプレゼンとは簡単に言うと文章を読ませるプレゼンスタイルではなく、大きな文字と図解で顧客の記憶に刷り込ませるプレゼン方式である。プレゼンの前半説明や一番伝えたい内容はフラッシュプレゼン型で作成し、細かな説明は提案書から抜粋していく。

 第1章で提案方針を伝えた提案書の文章から、提案ポイントをフラュシュ型にする。「本提案はRFPの求める要件や要求仕様△△を□□ERPソリューションで実現します」(これで1ページ使っていい」「提案金額〇〇円、スケジュールはご希望通りの◆◆日稼働です」(同じく1ページ) 「RFPに記載されているあるべき姿に加え、弊社から提案の姿もお聞きいただき、両社で一緒に変わっていきましょう!」(1ページ)というような流れでプレゼンが進んでいく。顧客の記憶に刻まれるように説明していくやり方が、フラッシュプレゼン型だ。伝えたいポイントはこのようなフラッシュプレゼン型でプレゼン資料を作成していこう。だらだら説明する文章型資料はプレゼン資料には向かないのだ。

プレゼン資料の作り方 ②レーザーポインターを使わなくとも伝わる資料を作る

 プレゼン当日には指し棒は使わない方がいい。理由は先生のようなイメージを顧客に与えてしまい、ベンダーが顧客を見下してしまうように見えるからだ。レーザーポインターでスクリーンをずっとグルグル指しているプレゼンもよく見かけるが、これもよくない。レーザーポインターは「ここぞ」という時に使うべきで、最近はレーザーポインターを使わない資料作りが伝わりやすいと言われている。フラッシュプレゼン型の資料作りを行いながら、PowerPointのアニメーション機能で強調したいポイントを伝えていける資料にしていこう。

プレゼン資料の作り方 ③3点強調法で伝える

 人間は3つのポイントやメリットが記憶に刷り込まれやすいと言われている。4つや5つでは多すぎて、記憶が薄まってしまう。図のご提案方針の、「1.□□を実現する」「2.◎◎の対応」「3.▲▲化の推進」が伝えたい3つのポイントであれば、これが3点強調法だ。もちろんフラュシュプレゼン型でまとめてほしい。この3つのポイントはすべて1ページに収めてまず強調し、その後、 「1.□□を実現する」の詳しい説明が次ページで説明されている展開がよい。「フラュシュプレゼン型」+「3点強調法」は人間の記憶に残りやすい最強のプレゼン手法だ。次にプレゼン資料の中の、細かな文章の表記や図解についても説明をしたいと思う。

プレゼン資料の作り方 ④文章は体言止めが良い

 提案書は文章が中心になるので「~実現できます」「~のように変われます」と表記する方がイメージしやすいが、プレゼンは顧客の記憶に残ることが重要なのでプレゼン資料は体言止めがよい。

 例えば、「× ■■で実現できます」ではなく、 → 「〇 ■■で実現」 の体言止めの方が記憶に残る。橋本元大阪府知事・大阪市長は「× 12月のこの時に大阪市と大阪府の力を結集しようではありませんか」とは選挙演説では言わず、「◎ 今、この時。大阪市、大阪府の力 全員で結集しようではありませんか」と体言止めを多用しているので記憶に残りやすいのだ。

プレゼン資料の作り方 ⑤わかりやすい日本語を多めに、顧客視点で作成する

 IT業界は特に英語が多く、アルファベット3文字だらけだ。聞き手の顧客・情報システム部の人は知っているかもしれないが経営層や現場層は知らないケースが多い。「難しい言葉は知らない前提」でプレゼン資料を作成してほしい。IT業界以外でも専門用語連発のプレゼン資料は、特に経営層に伝わらないので要注意だ。専門用語でなく、文章のひとつひとつを顧客視点の言葉にしてほしい。「このように使えます」「活用できます」「グラフを見ることができます」というように顧客が実行する側なので、顧客視点の文章にしていこう。

プレゼン資料の作り方 ⑥プレゼン資料は装飾する

 事実を正確に伝えることはビジネスの基本だが、プレゼンでは装飾が必要だ。事実であることはもちろんだが、より素晴らしい製品・サービスや提案に見えるやように装飾をしていこう。

 例えば、「× お鍋を食べられる夜」は普通すぎるので、 →「〇 アツアツの鍋をフーフーしながら食べられる夜」と装飾してみたり、「× 店長オススメのサラダ」ではなく、 →「〇 シェフの気まぐれサラダ」 のような表現の方が顧客はイメージが沸きやすい。顧客が良いイメージができるように、どんどん装飾をしてみよう。

プレゼン資料の作り方 ⑦絶対時間より相対時間を採用する

 人間は絶対時間より相対時間の方が行動に移しやすいと言われている。例えば「× 絶対時間(例) 新システム導入により2021年4月1日にあるべき姿に変われます」よりも、 
「〇 相対時間(例) 新システム導入により1年後にあるべき姿に変われます」
と言った方が顧客は行動に移しやすい。新幹線の「只今、三河安城駅を予定通り通過しました。あと9分で名古屋駅につきます」は、顧客がスムーズに降りる準備をしてもらうために、相対時間を使っている。「一緒に弊社と共にあるべき姿に変わりましょう」とプレゼンで伝えたいのであれば、相対時間をプレゼン資料に使っていこう。

プレゼン資料の作り方 ⑧図解は右肩上がりがよい

 プレゼン資料にグラフや矢印が登場することは多い。例えば自社製品・サービスの導入実績や企業の業績のグラフなどがそうだ。顧客のRFPに沿ったグラフや改善後の矢印も登場するかもしれない。人間はグラフや矢印は「右肩上がり」の方が好印象を与えられる。‘右上へ’、‘下から上に’を意識してプレゼン資料に取り入れてみよう。

プレゼン資料の作り方 ⑨最初と最後は同じゴールを伝える

 第1章で提案方針を伝えたフラュシュプレゼンと同じように、プレゼン資料の最後も同じ内容で締めくくろう。一貫性があることはもちろん、プレゼンそのものがキレイに終了できる。

プレゼン資料の作り方 ⑩プレゼンのリハーサルは上司には見せるな

 営業とSEで1週間かけて作成した資料をすり合わせて、簡単にリハーサルをやってみよう。私はあまりたくさんのメンバーを集めてリハーサルはしない。実際に魂をこめて作成した営業とSE数名で改善意見を言い合う方が実戦的で臨場感があるし、より良いプレゼン資料に磨かれていく。
 ところが顧客のことやRFPを知らない上司にプレゼンを見てもらうと一般的なアドバイスしかしないし、とんちんかんで非効率な修正点を指示されたりするので、やめた方がいい。見積や提案書提出は審査会があると思うので承認を取らなければならないが、その後のプレゼン内容まで承認が必要な会社があるのなら、時間がいくらあっても足りないし、ムダな会議なのでやめた方がいい。上司が提案段階から入ってくれるなら、一緒にプレゼン内容のすり合わせをし改善をしてける。そんな上司が欲しい、と思う。(最近はそんな上司が減ってきたと感じる・・)

プレゼン資料の作り方 ⑪プレゼン資料は直前まで磨く

 プレゼン資料は印刷して提出しないと、顧客からOKをもらっているのだから、プレゼン直前は営業とSEそれぞれでプレゼン直前まで、資料を修正しよう。分担ページと全体シナリオが変わらない修正であれば、個人が予行演習をする中で修正箇所はいくつか見つかるはずだ。プレゼン直前までどんどん修正して、よいプレゼン資料に磨いていこう。プレゼン資料を印刷提出しないと、このような直前までプレゼン資料を磨け、改善していけるメリットもある。「データで資料が欲しい」と言われたら、プレゼン後に提出をすればよい。

プレゼン資料の作成(準備編)とプレゼン資料の作り方(実行編)はここまでだ。このようにプレゼンの準備と作成をすれば、プレゼン資料の準備は万全だ。だが当日のプレゼンで提案内容が顧客に伝わらなければ、プレゼンは成功しない。顧客にRFPのToBe(あるべき姿)に変わるために、自社を選んでもらうためのプレゼン手法は重要なポイントだ。では実際のプレゼンのやり方はどこを注意し、どのようなプレゼンスキルが必要なのかを説明していきたい。

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