第5章 営業・マーケティングのやり方(提案・クロージング編)

プレゼンのやり方とコツ

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顧客のRFP(提案依頼書)に対し提案書を作成し、提案書選に残り、プレゼン資料が完成した。実際のプレゼンはどのような点に注意して進めていけばいいのだろう?プレゼンのやり方とコツ、成功させるため必要なプレゼンスキルについて解説していきたい。

プレゼンのやり方とコツとは?

 これから説明するプレゼンのやり方には簡単なものと、経験を積む方法しかないものがある。簡単なものは基本的なプレゼンスキルなのですぐに身につけてほしい。だが高いプレゼンスキルをつけたければ、基本を習得して自分のベースを作り、あとはプレゼンを繰り返して経験を積む方法しかない。提案書作成と同じでプレゼンも力をつけるまである程度の期間が必要なので覚悟してほしい。基本+経験でプレゼン力を自分自身に実装していこう。ではプレゼン会場に入ってから終了するまでの流れで説明をしていきたい。

プレゼンのやり方とコツ ①会場に到着したら、まずプレゼンで話す場所に立つ

 当日、プレゼンで話す場所に立ち、自分が話している光景をイメージしながら本番を迎えるとプレゼンの成功率は上がると言われている。事前に下見ができればよいが、RFP(提案依頼書)案件ではプレゼン会場の会議室の下見にいくことは難しいだろう。だが直前でも下見はできる。  

 例えば9:30のプレゼン開始だとしよう。資料配布の準備のために、9:20にプレゼン会場には入れば、まずプレゼンで話す場所に立って全体を見渡し、自分が話すイメージをしてみよう。残りの10分間で準備をしながらでもプレゼンイメージはできるし、自分自身の緊張も和らぐだろう。ぜひ営業とSE(技術・開発)のプレゼンの場合でも、二人で実行してみよう。

 また、私は質問記入票で訪問できた帰り道に「どの会議室でプレゼン予定ですか?」と顧客担当者に聞いて、会場が空いていたら下見をさせてもらえるようチームのメンバーに指導している。「下見をしてその場に立つ」は必ずやった方がプレゼンの成功率が上がる。

 このやり方は大きなセミナーの講師を実行する時も使える。セミナー会場は下見に行けるはずなので、勝負のセミナーは会場の近くを通ったら寄ってみて、当日までステージから話す自分をイメージしよう。

プレゼンのやり方とコツ ②3つの距離と3つの感覚(社会距離+視覚と聴覚)を思い出して

 初回訪問で説明した社会距離のプレゼンテーションになる。触覚は使えず、顧客との距離はあるが一人一人に語りかけるようなプレゼンは実行できる。マイクがなければ大きな声で、スクリーンのプレゼン資料とプレゼン者だけを見ている視点を、プレゼンターのあなたが支配してほしい。

プレゼンのやり方とコツ ③最初に後ろ向きなことは言わない

 少し緊張していると意外に言ってしまうことがある。「御社の提案書提出とプレゼン資料作業に追われていたので、準備不足なのですが・・」「昨日、他の案件のトラブルがあったのでバタバタしていて・・」「子供が熱を出して昨日は眠れていなく・・」と理由はどうであれ、後ろ向きなことをプレゼンの最初に言うことは禁句だ。初対面の顧客は「理由はどうであれ、そちらの事情でしょ?」とプラス評価はしてくれない。前向きな発言で明るく始めよう。

プレゼンのやり方とコツ ④時間と構成を守り、ここでも「説明」と「会話」で勝負する

 持ち時間は1時間(45分説明、15分質疑応答)だ。時間厳守で進めていこう。そしてここでも初回訪問と同じように説明をしっかり行うだけでなく、質疑応答の「会話」で盛り上げよう。顧客も大きな投資を行うわけでこのプレゼンで1社に決めるので会話はしたいはずだ。会話を優先し説明を5分早めに終わらせるぐらいのプレゼン構成で進めていこう。

プレゼンのやり方とコツ ⑤ゴールを伝え、安心感を与える

 営業とSEでプレゼンを分担するならば最初にプレゼン分担のアジェンダを伝える。「営業が第一章で提案方針をお伝えし、その後SEが第3章業務要件と技術要件を詳しきまして・・、そして最後にご提示費用のご説明を私が・・」というように分担する役割とゴールを伝える。

 プレゼンの途中でゴールを伝えることも忘れないでほしい。「ここまでで、ご説明で半分が終了しました」と最後と途中のゴールを伝えると顧客に安心感を与えることができる。プレゼン中の表現の最初と最後も同じゴールを伝えるようにしてほしい。第一章で伝えた提案方針と同じように、プレゼンの最後も同じ内容で締めくくろう。一貫性があることはもちろん、プレゼンそのものがキレイに終了できるし、顧客に好印象のはずだ。

プレゼンのやり方とコツ ⑥スクリーンを見た時は、接続詞で振り返る

 スクリーンはなるべく見ないようにするために、レーザーポインターを使わない資料作りをしてきたはずだ(前ブログ:プレゼン資料の作り方を参照)。なるべく顧客と目の前のプレゼン用PCの画面を見ながら正面を向いてプレゼンを進めていこう。だがどうしてもポインタを当ててスクリーンを見るときはある。そしてスクリーンから顧客側に振り返る時は、接続詞で振り返ると強調しやすいと言われている。振り返る時は「そのために、(振り返る)この機能があるのです」「したがって、(振り返る)御社のあるべき姿が実現できるのです」と接続詞を使うと効果的だ。顧客が納得しやすいプレゼンスタイルなので一度実践してみてほしい。

プレゼンのやり方とコツ ⑦ペースメーカーを見つけて、自分自身もノっていけるようにしよう

 45分間プレゼンで聞き手(顧客)と共感を生まれると、うなずいている人が現れる。うなずく人を見つけたたら、この人はマラソンで言うペースメーカーだ。自分自身のプレゼンがノッていけるので、全体に話しながらも、要所要所ではうなずいている人に語り掛けてみよう。共感を持ってくれている特定の人(うなずいている人)が増えれば増えるほど、良いプレゼンになってきて、プレゼンターも自信がついてくる。会話の時間(質疑応答)には、うなずいている人に対して「何かご質問はないですか」と聞いて、会話が盛り上がるための口火を切ってもらおう。プレゼン中に特定の人と関係構築をするスキルも重要だ。

プレゼンのやり方とコツ ⑧ここ一番の勝負時は、顔より上に手を上げる

 プレゼン中の身振り手振りや、重要箇所でのレーザーポインターの使用は実践してほしい。だが最も伝えたいプレゼン内容の瞬間には、顔より上に手を上げてみよう。例えば「いいですか皆さん、本日のプレゼンでここが一番重要です(ここで顔より上に人差し指を立てて、手を上げる)」これはプレゼンには非常に効果的だ。オバマ元大統領が大統領選で「YES YOU CAN」と言った後に実践していた手法で、聞き手を自分の意見に同調させていくプレゼン手法だ。

 使うべき顧客視点の言葉と語尾を意識しよう。「 ~このように変わります。」「~これが実現できます。」「~こうなります!」プレゼン資料と同じような口調に合わせてほしい。「できます営業」「可能ですSE」はNGだ。封印しよう。前向きで肯定的なムードをプレゼンでは演出していこう。

プレゼンのやり方とコツ ⑨聞き手の顧客は45分間も集中はできない。「チェンジ オブ ペース」で工夫する

 どんなにプレゼンスキルが高く、話し方がうまくても、同じペースで同じ論調で説明を続けていては、聞き手の顧客は集中できない。数回はプレゼンのペースを変えることを心掛けてみよう。

例1 最初に顧客に挙手を求める

セミナーの最初などに「〇〇製品・サービスを知っている方は手を上げていただけますか?」と挙手を求めて、参加者の状況を把握し最初に共感を得ようとする手法がある。最終プレゼンの顧客には聞きづらいと思うので、「弊社のご提案書にすべて目を通していただいた方は挙手をお願いします」を実践してみよう。参加している顧客も「どれぐれぐらいのメンバーが全部の提案書に目を通しているのか?」は知らないはずなので、聞いてみていいと思う。「しっかり目を通している場合」と「全然見てくれていない場合」で進め方にも強弱をつけられるので、事前情報収集としてもよい。

例2 プレゼン側から区切りをつけて、ペースを変えるサインを出す

「さあいよいよここからご提案の心臓部に入っていきます」「さあここからは製品のデモ、実際に動くソフトウェアの画面でご覧いただきます」「この後のご説明はご発注をいただきましたら、実際に御社を担当するSEよりご説明いたします」と10分以内に一度、説明が変わることをアピールしてみよう。これまで説明してきたトーンから声を変えて、できれば大声で区切りを伝えるのだ。10分以内に一度、聞き手の脳に刺激を与え、集中を再度開始する場を作ってあげると効果的だ。

例3 社会距離でも触覚を使う唯一の方法

 社会距離では触覚は使えないと前ブログで言ったが、顧客自身で触覚を与えることはできる。プレゼン中に顧客に背伸びをしてもらったり、体操をしてもらい身体に刺激を与え、ペースをリセットするやり方だ。「ここまででご説明が半分終わりました。ずっと座っていると腰や背中に悪いので、ちょっと皆さんで起立して腰を伸ばしましょう」と顧客に動いてもらい、ずっと聞いている疲れを取ってもらおう。特に長めの1時間以上のプレゼンには効果的だ。唯一、プレゼンで触覚を使える手法なので、視覚・聴覚。触覚の3つの感覚が揃えば、記憶に残りやすいかもしれない。

これらがプレゼンのペースを変え、集中する機会を与える「チェンジ オブ ペース」だ。ぜひ実践してみてほしい。

プレゼンのやり方とコツ ⑩最後の最後にもう一度、「人の心を動かす一言メッセージ」を!

 プレゼンで「説明」はうまくいき、「会話」も盛り上がり、持ち時間の1時間が終了した。顧客担当者が「社内の皆さん、他にはご質問はないですかね。それではこれでA社のプレゼンを終了します・・」と言った後にもう一度、伝えたいことを一言で発してみよう。プレゼン終了後の顧客は「想像(イメージする)」もできて「A社の提案いいな」と思ってもらっているかもしれない。
 プレゼン目的は「顧客をRFPのToBe(あるべき姿)に変えるために、自社を選んでもらう」とした。 ならば最後の最後に一言、発するならば、「弊社と弊社のソリューションを選んでいただければ必ずあるべき姿を目指せます!一緒に変わっていきましょう!」と人の心を動かせるようなメッセージを顧客の記憶に刷り込んで、御礼と共に終了しよう。

まとめ

 これらがプレゼンのやり方とコツであり、伝わるプレゼンに必要なスキルだ。プレゼンの話し方を説明している本はたくさんあるが、BtoB提案・プレゼンの勉強は、プレゼンの話し方から入ってはいけない。本ブログ(過去参照)で説明してきたように「チームで提案書を作成し、プレゼン資料を作り、プレゼン方針に沿ってチームでプレゼンを実行する」の一連の流れがひとつになって、初めてプレゼンの話し方ややり方が実践できる。プレゼンだけうまくなっても、BtoB提案のプレゼンは成功しない。ベンダー主導の提案、RFP提案のどちらでも同じだと思う。提案をする、提案書を作る、プレゼン資料を作る、を習得し、プレゼンスキルの基本を構築して、個人もチームも顧客に評価されるプレゼンができるように日々学んでいこう。

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