営業戦略事例にはいくつか種類があります。その中で効果的なのが、導入事例とユーザー見学です。導入事例の掲載は様々な企業でも取り組んでいます。しかし、ユーザー見学をさせてもらう顧客とは、どのような方法で探せばいいのでしょうか?テンプレートやシナリオにそって営業戦略事例の作り方、同業他社・競合他社でもユーザー見学ができる3つのポイントを解説いたします。
営業戦略のための事例テンプレートとシナリオ
営業戦略の立て方にはいくか方法があります。BtoBであれば製品・サービスのブランディングをしたり、新規リード獲得ができるウェブサイトを作ったりします。営業人員を増強したり、営業力強化の教育や人材育成に注力したりする方法もあるでしょう。
営業戦略の中で効果的な手法が「導入事例の公開」です。製品・サービスが顧客に導入され、課題解決のために活用されている成功事例をたくさん作るのです。見込み顧客は製品・サービスの機能や特長、価格や導入サポートなどを評価しながら検討を進めます。その中で見込み顧客が重視するのが導入事例です。
導入事例は具体的な顧客名が出ているため、導入効果から成功イメージがわかりやすくできます。 また同じような業種・業態の事例や、同じテーマや課題解決で導入した事例であれば、見込み顧客は安心して検討・導入できます。それこそ知っている仲の良い顧客名が導入事例になっていれば、経営者や担当者は直接、事例顧客に評価を聞けます。
事例がない製品・サービスを新規顧客は選んでくれない、とも言えるでしょう。営業戦略のひとつとして事例を増やすテンプレートやシナリオを作りましょう。営業が顧客と合意し、マーケティングチームが取材して作成していくのです。導入事例はウェブサイトに掲載したり、リーフレットとして営業ツールに使用したりしますので、アウトプットとしてのテンプレートやシナリオづくりを心がけましょう。
しかし営業戦略のひとつとして、導入事例集を作っていくのは当たり前になっていきています。競合他社もそうですし、ほとんどの企業でやっています。そこで営業戦略事例の最高傑作と言えるのが「ユーザー見学」なのです。
なぜか同業からユーザー見学の要望が多い理由
ユーザー見学とは導入事例である顧客のオフィスに、見込み顧客をお連れし、見学させてもらうことです。見込み顧客から「ユーザー見学をしたい」と要望されることもありますし、自社から「正式決定される前に、同じような導入をされている弊社のお客様を見学してみませんか?」と提案する時もあります。
ユーザー見学の狙いは様々です。見込み顧客の狙いは「自分の会社に近いスタイルの導入事例企業を見て、正式決定前に納得したい」と思っているでしょう。製品・サービスを提案している会社は「見込み顧客の業種・業態に近い導入事例企業を見てもらって、正式決定の決定打にしたい」と考えるわけです。ユーザー見学は実際のユーザーの声も聞けますし、臨場感がありますので、営業戦略の中でも最も効果的です。導入事例の最高傑作なのです。
ユーザー見学を求めてくる分野やジャンルの商品は、「投資金額の高い商品」が多いです。「安い商品」のユーザー見学のケースもあるかもしれませんが、見込み顧客は安い商品で見学まで求めるのは気がひけるでしょう。やはりコストの高い商品がユーザー見学を求められます。例えば、ビル・マンション・工場などの建設工事、システム開発などのITはユーザー見学ができる顧客を持っておくべきです。建設営業やIT営業はユーザー見学できる導入事例企業を、複数か持っておくことをオススメします。
ところが、なぜかユーザー見学は同業他社からの要望が多いのです。 同業他社とは、競合企業にもなりうる同じ業種・業態の企業のことです。例えば製造業が工場を新設するために、導入事例に掲載されている同業他社をユーザー見学させてほしいと言うケースがあります。社内の大きなシステム開発:基幹システムを刷新するために、導入事例に掲載されている競合企業をユーザー見学させてほしいと言う難易度の高い場合もあります。
同業他社にユーザー見学を要望する理由は、大きな投資に対し効果を出すために、説得力のあるユーザーの声を聞いて意思決定したいからです。 その想いは理解できますが、導入事例企業がたくさんあっても、さすがに同業他社に見学に行くのはハードルが高すぎます。導入事例企業側にも企業情報の漏えい防止や機密保持もあります。さすがにこのようなケースのユーザー見学は断るべきかもしれません。
しかし、「同業他社でもユーザー見学をさせてもらえるところがあるので、そちらに行きましょう」とベンダーが提案するケースがあります。同業他社でも工場や社内システムをユーザー見学させてもらえるというのです。こうなると、最終提案で不利になります。ではどうすれ同業他社でもユーザー見学ができるようになるのでしょうか?
成功事例だからユーザー見学ができる セミナー講師の作り方
ユーザー見学は導入事例企業が、物件や製品・サービスをうまく活用している成功事例だからこそできます。「うまく活用できていない」「失敗した」となるとユーザー見学はできませんし、そもそも導入事例にすらなってくれません。
しかし成功した導入事例企業であれば、ユーザー見学ができるかというとそうではありません。ましてや同業他社でもユーザー見学OKをもらえるようにするのは至難の業です。ではどうすればいいのでしょうか?
物件や製品・サービスをうまく活用し、導入効果を出していることは大前提です。営業や技術担当・サービス担当だけでなく、経営者も含め会社全体で、導入効果を出すためのサポートをしてきた実績は絶対条件です。その他に同業他社でもユーザー見学OKをもらえるポイントが3つあります。
【ユーザー見学をさせてもらう顧客を作る方法】
- 会社全体でサポートし、導入効果を出し成功事例にする
- 導入事例企業と信頼関係を作る
- 業界の発展のための大義を、お互いで持つ
導入事例企業と信頼関係づくりは当たり前のことであり、基本中の基本です。営業担当とユーザー担当者、技術者・サポート担当とユーザー担当者で仲良くなり、信頼関係を築けている状態は当然です。導入効果を出し成功事例にするために尽くし、互いに協力してきた実績がベースになります。
そしてこの信頼関係に加え、なくてはならないものは、経営者同士の信頼関係です。導入事例企業の社長と、提案側の社長や役員が仲良くなって、信頼関係がなければユーザー見学にOKを出してくれません。経営者同士は訪問による信頼関係づくりだけでなく、会食やゴルフなどの公私も含めた活動から成立します。
もっとハッキリ言うと、経営者が登場しない案件はユーザー見学をできる関係にはならないと思います。 経営者が登場せず、担当者同士であれば導入事例掲載がいいところでしょう。営業は自社の経営者も巻き込んで、ユーザーとの関係づくりを長時間かけてやっていきましょう。
もうひとつは業界の発展のため、大義をお互いで持つということです。業界の発展なくしてユーザーも提案側企業も成長はありません。消費者に購買をしてもらい、業界全体が成長していく意識をもたなければ、物件も製品・サービスも売れません。このような「業界発展のためにお互い尽くしましょう」という想いを、経営者同士で持っておくのです。
業界の発展のための大義をお互いで持てば、同業他社からのユーザー見学の要望にも応えてくれるはずです。事業根幹の機密情報は見せられないが、同業他社に工場のユーザー見学OKという大手自動車メーカーや部品メーカーは存在します。競合他社同士で切磋琢磨すれば、業界の発展と市場の成長につながることを経営者は知っています。建設営業やIT営業は自社とユーザーの経営者を巻き込んで、営業戦略事例の最高傑作:ユーザー見学をさせてもらう顧客を作っていきましょう。
そしてもうひとつ、セミナー講師の作り方について説明します。できることならば、ユーザー見学をさせてもらえる経営者や担当者にセミナー講師になってもらいましょう。 自社のセミナーやフォーラムでユーザー自身が講師なって、成功事例を話してもらうのです。これは導入事例のウェブサイトや事例リーフレットよりも効果は絶大です。
しかし「一人でセミナーを30分から1時間も話せない」というユーザーの経営者や担当者は必ずいます。当然そう思いますよね。その時は営業・マーケティングメンバーがユーザーと一緒に登壇し、一問一答・Q&A方式で講演する方法であれば、難易度は下がります。
とはいえユーザーの経営者や担当者がロジカルで話し好きの方が向いているので、可能であればセミナー講師スタイルをお願いしてみましょう。このようなやり方を事例テンプレートやシナリオに入れていけば、最強の営業戦略事例づくりが可能になります。 ユーザー見学をさせてもらう顧客を作る方法、セミナー講師の作り方をぜひ実践してみてください。
まとめ
「営業戦略事例の最高傑作 ユーザー見学をさせてもらう顧客を作る方法」というタイトルでご紹介してきました。営業戦略では導入事例だけでなく、ユーザー見学をさせてもらう顧客を作ることが重要だとわかりました。その方法は事例テンプレートやシナリオにそって作っていきます。
同業他社へのユーザー見学の要望に応えていくためには、次の3つのポイントを意識しましょう。
【ユーザー見学をさせてもらう3つのポイント】
- 会社全体でサポートし、導入効果を出し成功事例にする
- 導入事例企業と信頼関係を作る
- 業界の発展のための大義を、お互いで持つ
成功事例だからユーザー見学ができますし、セミナー講師になってもらえるようお願いをしてみましょう。ユーザー見学ができる導入事例企業が増えていって、営業提案手法の切り札になることを祈っています。そして業界全体の発展ためのユーザー見学という想いも経営者同士で構築していきましょう。