「内輪の話で恐縮ですが・・」や「うちの恥をさらすようですが・・」と見込み顧客が社内議論やディスカッションを営業の前で始めるケースがあります。見込み顧客の内部の話に、外部の営業が付き合わされているようなイメージがありますが、これは、とても良い商談と言えます。どこが良い商談の傾向なのでしょうか? そこで、ビジネスシーンの内輪の話を定義し、内輪話のような社内議論が始まりやすいテーマ、問題点と課題の違いをご紹介していきます。
目次
ビジネスシーンの内輪の話
プライベート・私生活での内輪の話とは、他人に知られたくない個人や家庭の話のことです。
ビジネスシーンの内輪の話も会社以外の人に知られたくない社員や会社の内々話のことです。
本記事ではビジネスの内輪の話についてご紹介していきますが、会社の中の噂話や内輪話、または機密情報に関する内容ではありません。営業が見込み顧客と商談をしていて、業務改善や効率化を目指し、製品・サービスを検討しているときに時々登場する「内輪の話で恐縮ですが・・」という社内議論が始まるシーンについて解説していきます。
図1にあるような商談シーンを経験した営業はないでしょうか?「内輪の話なのですが・・・」と社員同士でディスカッションが始めるシーンです。
- 「そもそもの問題点はここにあるから、改善が必要なんだ・・」
- 「うちの根本の原因は、●●だよ!」
- 「うちの会社は、■■から□□に変わらなければ、ダメだ」
商談中にこのように社員同士で議論が始まってしまうことがあります。一通り議論が終わったら、「ラシック鈴木さん、内輪の話でスイマセンね。お恥ずかしい限りなのですが、これが現状なんです」と言われます。なぜ、このような状況になるのでしょうか?
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内輪話は問題点が多い証拠
「内輪の話なのですが・・・」が始まる時は、見込み顧客に問題点が多い証拠です。製品・サービスを導入する前に、会社の中の制度やルール、企業文化や風土、組織的な問題を解決しないといけないという想いから出てくる議論と言えます。例えば、社内議論が始まりやすいテーマや問題点には下記のようものが挙げられます。
社内議論が始まりやすいテーマ
- 顧客の業務やシステムの具体的な問題点
- 社内の規定やルール、しくみがない点
- 組織づくりの問題 など
このような社内議論が存在すると、製品・サービス導入の前にやるべきことが数多くあるため、すぐに受注できないかもしれません。しかし、まず社内で解決しなければならない重要な問題点を議論しており、良い商談になっていると言えます。私はこのような「内輪の話商談」になることを歓迎しています。
「うちの恥をさらすようですが・・」と顧客がディスカッションを始める時は問題点の本質を突いていて、営業に聴いてほしいという状態になっています。説明中の顧客のヒソヒソ話、メモを取るポイント、うなずくしぐさはリアル商談であれば、キャッチでアップできる反応であり良い情報です。リモート商談では感じられないことです。
このような反応を見逃さず、機能やサービスの説明だけでなく、「議論がすべき企業のテーマ」を商談の真ん中に投げてこんでみましょう。そしてもうひとつ、「内輪の話商談」にするために、大切なポイントがあります。それは、問題点と課題の違いを知っておくことです。
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問題点と課題の違いを知っておこう
問題点と課題という言葉を同じ意味で、使っている営業が多いと感じます。「御社の課題を教えてください」と初回訪問や初めてのリモート商談で言ったことのある営業は数多くいるでしょう。問題点と課題の違いを知っておかなければ、「内輪の話商談」にすることはおろか、見込み顧客から信頼されません。では問題点と課題の違いはどんなものなのでしょう?
問題点とは?
- 企業の「お困りごと」「困っていること」であり、まだ漠然とした状態である
- まだ解決に向かっている状況ではなく、組織の中で問題だと感じられている事象のこと
- 問題点を組織で理解し、整理できた状態が「課題」になると言える
課題とは?
- 問題点が整理され、体系化された状態である
- 解決策が見えてきており、組織で目的を設定し、取組みが始められる状況
- 課題解決のための手段を探そうとしている
問題点と課題の違いにはこのようなポイントがあります。総括してみます。
総括
- 問題点はまだまだ序盤戦の商談
- 課題は具体的な解決策を検討していく、中盤戦以降の商談
このような違いがあると言えるのではないでしょうか? 「内輪の話なのですが・・・」が始まる時は、見込み顧客が課題と認識できている状態ではありません。潜在課題から顕在課題に変わろうとしている時期かもしれません。
顕在課題とは、社内議論はすでにしっかり行われていて、問題点が課題に整理され、解決策を検討している状態と言えます。もしかすると、コンサルティング会社が有償で入り、課題整理と解決策の提示、次のアクションプランまで策定されているかもしれません。
「内輪の話商談」は、初回のリアル訪問で行われる傾向が強いです。リモート商談では「内輪の話」のケースはありません。なぜなら、リモート商談では複数の見込み顧客が、別々の場所からリモート参加しているため社内議論がやりにくいからです。
私はこれまで、一度も「内輪の話リモート商談版」が起こったケースを見たことがありませんし、起こせる自信もありません。やはり、突然起こる議論やディスカッションはリアルの場だけしかないと言えるでしょう。
営業は問題点と課題の違いを理解しておき、リアル商談で見込み顧客が社内議論をしてくれるテーマを紹介したり、導入事例を説明したりしてみましょう。
本当に、「身内(社内)の恥をさらすようですが・・」「内輪の話なのですが・・・」は、良い商談になり、時間がかかったとしても、受注するケースが多いと感じています。営業と見込み顧客が一体化して、課題解決に向かう感じでいいですよね。
まとめ
『「内輪の話で恐縮ですが」は良い商談 問題点と課題の違いを理解しよう』と題して、ご紹介してまいりました。ビジネスシーンの内輪の話の傾向や、内輪話の商談になる時は問題点が多い証拠であり、営業は良いチャンスに出会えたと言えます。その良いチャンスに出会えたらなら、製品・サービスの説明の中に、社内議論が始まりやすいテーマを加えてみましょう。
内輪話の社内議論が始まりやすいテーマ
- 会社の中の制度やルール
- 企業文化や風土
- 組織的な問題を解決しないといけない人間系のテーマ
- 顧客の業務やシステムの具体的な問題点
- 社内評価や規定、しくみがない点
- 組織づくりの問題 など
製品・サービスの説明の際に、導入事例を紹介する時にこのようなテーマを入れてみたら良いと思います。例えば、「弊社の人事考課・タレントマネジメントシステムを導入したA社さん事例をお話します。まず社員の評価制度を変えて、社員と上司の目標管理をサポートする組織を作り、その後、システム構築に進みました」と説明すると、見込み顧客は人事評価制度変更の社内議論を始めるかもしれません。
「内輪の話で恐縮ですが・・」の商談シーンがあれば、受注に近づきやすいと思います。そして、営業は問題点と課題の違いをしっかり理解し、まずは「問題点」の的を絞り、序盤戦の良い商談を増やしていきましょう。