カスタマーサクセスが組織に求められてきています。クラウドサービスとサブスクリプションのビジネスモデルに必要な機能だからです。そしてクラウド&サブスクモデルを成長させるためにはチャーンやランレート、LTVという聞きなれない言葉も出てきます。カスタマーサクセスのメリットとデメリットと合わせ、解説していきます。
カスタマーサクセスとは?クラウドサービスとサブスクリプションとの背景
カスタマーサクセスとは、クラウドサービス時代に生まれた言葉であり、新しい顧客とベンダー(提供側)のしくみと言えます。サブスクリプションで製品・サービスを提供している会社には、事業を推進していくための必須機能です。 カスタマーサクセスチームを組織に組み込む企業も増えています。わかりやすく説明するために、IT業界(以下、IT)でクラウドサービスを提供していて、サブスクリプションモデルで課金している例でお話したいと思います。どのような背景や歴史があるのでしょうか?
【カスタマーサクセスができた背景】
- ITはソフトウェアの売り切り(オンプレミスや永久ライセンスと呼ぶ)モデルが多かった。
- 保守契約があるが、トラブルや異常が発生したら対応します!というサービスが主流であった。よって顧客が目指す業務改善や目的の達成に対して、ソフトの活用をサポートするものではなかった。
- そこにクラウドサービスが登場した。顧客はサーバ構築などのインフラ環境を用意しなくてよく、今後はクラウド環境でソフトウェアを提供するサービスが当たり前になる。
- そしてサブスクリプションモデル(サブスクとも呼ぶ)が主流になってきた。サブスクリプションは年間契約や月額契約の定額型になるため、ベンダーは契約が解約にならないようにしたい。顧客に活用をしてもらい、契約延長をしてもらうことが目的である。
- もちろん契約延長のためには、顧客にクラウドを活用して、目的を達成してもらわなければならない。ベンダーと顧客の「目的」が合致しないと成立しない時代になってきたのである。
このような背景から登場したのがカスタマーサクセスなのです。昔で言うとソフトのサポート部で、今はカスタマーサクセスチームと言えるでしょう。クラウドサービスとサブスクリプションとの関係性もご理解いただけたと思います。もっとシンプルに言うと、ベンダーは顧客に対して「選ばれ続ける、クラウドのしくみがある」、これがサブスク時代に必要な機能なのです。
クラウド&サブスクモデルの会社は、「ならばカスタマーサクセスチームを立ち上げよう!」と思ったかもしれません。しかし、立ち上げる前にサブスク時代に理解しておかなければならないことがあります。それがチャーンなのです。
立ち上げる前にチャーンを理解しよう
チャーン(チャートレーンとも呼ぶ)とは聞きなれない言葉ですが、クラウド&サブスクモデルに重要な要素です。チャーンとはズバリ、解約されることです(泣)。2年目もクラウドサービスを利用してもらえると思っていたのに、顧客から「使っていないので解約したい」と言われることがありますよね。それです!しかし、ただ解約されることをチャーンと呼ぶのではありません。そこにはクラウド&サブスクのビジネスモデルとの深い関係があるのです。
チャーンはクラウド&サブスクモデルが先行した米国で生まれた言葉です。チャーンが解約なら、契約が延長され売上が増えていくことをランレートと呼びます。クラウド&サブスクの実績値がこのまま続いた将来の予測売上がランレートになります。ITではライセンス数が増えたり、上位サービスのクラウドにバージョンアップするので、追加売上もあります(以下、追加クラウドと呼びます)
つまり、「チャーン=解約」「ランレート=契約延長が続いた場合の予測売上」「追加クラウドもある」という3構成がクラウド&サブスクのビジネスモデルで重要な考え方なのです。【チャーンとランレートとは?】
- 例えば、新規クラウド&サブスクを、5,000万を受注したとします。クラウド&サブスクのビジネスモデルでは、同じ月にいきなり5,000万の受注はしないので、需要月や閑散月を考慮し1年間分散しながら毎月受注、約半分の2,500万は当年売上していくと考え、計画します。
- 1年目:5,000万受注、2,500万売上だとして、2年目に売上すれば、一般的には翌年には1憶円になります。それは2年目も5,000万受注、2,500万売上の計画だからです。
- しかしランレートはこのまま増えるとは限りません。その理由は必ず解約=チャーンがあるためです。
- ランレートとクラウド追加だけを見ていくとバラ色の売上のように見えますが、違います。チャーンを防止しなければ、クラウド&サブスクのビジネスモデルの計画は達成できないのです。
- 計画達成のためにはチャーンを重視する組織体制が必要です。チャーン重視とは解約防止強化ということです。
ベンダーがクラウド&サブスクの事業を成長させるためには、チャーンを防止しなければならないのです。だからチャーン重視のためにカスタマーサクセスの機能が必要になってくるのです。しかし、チャーンを防止するためには、顧客にクラウド&サブスクを活用してもらい、導入目的を達成しなければなりません。
チャーンが先か?目的達成が先か? にわとりが先か?卵が先か?のような話ですが、お互いビジネスである以上、どちらも並列で考えるべきだと思います。このようにクラウド&サブスク時代には、カスタマーサクセスは重要なしくみなのです。ではカスタマーサクセスを組織に作る時の、メリットとデメリットは何でしょうか?
カスタマーサクセスのメリットデメリット
カスタマーサクセスの重要性は理解できてきたと思います。では組織にカスタマーサクセスチームを作る場合、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょう?
【カスタマーサクセスのメリット】
- 顧客にクラウドを活用してもらうための専門のサポートチームが、導入効果を最大化できる
- 顧客に導入目的を達成し、継続してもらうことで、チャーンを防止でき、ランレートを増やせる
- 「コミュニティ」を作れば、顧客満足度の向上だけでなく、顧客からの紹介をもらうことができる。新規営業の新しいマーケティング手法として期待できる
まさに「顧客が活用してくれて、売上は伸びて、紹介で新規営業もできる」とは、カスタマーサクセスとは素晴らしいしくみに見えます。しかし、カスタマーサクセスを作り、機能させるにはノウハウやスキル、そしてコストが必要になります。これがデメリットです。
【カスタマーサクセスのデメリット】
- 顧客が活用情報を確認できて、情報共有できる場所「コミュニティ」を立上げる必要がある
- 顧客の要望をフィードバックできる「フィードバックループ」のしくみが必要になる
- クラウドサービスに顧客の要望を迅速に実装するための開発体制「DevOps:デブオプス」が必要になる
- そして、デメリットのさいごは、これらの立上げと構築・運用のためのコストがかかります。
しかし、デメリットと記載した1)~4)のノウハウとスキルを備えたチームを準備できれば、カスタマーサクセスのメリットである「顧客が活用してくれて、売上は伸びて、紹介で新規営業もできる」を手に入れられるわけです。
ぜひカスタマーサクセスチームを構築してみてはいかがでしょうか?この4つのデメリットを克服すれば、構築できるはずです。カスタマーサクセスはクラウド&サブスクモデルの成功のカギなのです。
カスタマーサクセスチームを構築し、ランレートやLTV(顧客生涯価値)を増やしていくために、「コミュニティ」「フィードバックループ」「DevOps:デブオプス」が必要になります。では「コミュニティ」「フィードバックループ」「DevOps:デブオプス」とはどのようなものなのでしょうか?カスタマーサクセスに必要な組織・スキル・機能と合わせ、次の記事でご紹介していきたいと思います。