ABM(アカウントベースドマーケティング)とアカウント営業は何が違うのでしょうか?「営業手法とマーケティング手法の違いかな?」というイメージですが、アカウント営業とインサイドセールスとはどのような関係性があるのでしょうか?ABMの意味と、会社や企業での使い方、そして2022年から使える新しいABMについて解説していきます。
ABMとは? シンフォニーマーケティング(株)庭山さんが伝えたかったこと
Webマーケティング(ウェブ広告等)やインバウンドマーケティング(検索して見つけてもらう手法)は、不特定の個人(ペルソナは想定)に‘量’でアプローチするマーケティング手法です。それに対しABM(アカウントベースドマーケティング)は、特定された企業の個人に‘質’でアプローチするマーケティング手法です。Webマーケティングやインバウンドマーケティングは広く認知してもらい量で待つイメージですが、ABMは個に対して、質で攻めるための面でターゲティングをするようなイメージでしょう。 ABMはマーケティングコストを効果的に投入し、成果を上げるために考えられた‘質のマーケティング’なのです。
ABMとアカウント営業は似ていますが、実は違います。ABMはマーケティング部門が実行し、リアルに動くアカウント営業をサポートするものなのです。ABMは2016年ごろに日本でスタートし、BtoBマーケティングの新しいグ手法として期待されました。日本でABMを広げていったのは、私がマーケティングの師と仰ぐシンフォニーマーケティング(株)庭山社長です。当時、庭山さんに私が教えてもらったABMの定義ややり方があります。
【庭山さんに教えられたABMとは?】
- ABMとは定義されたターゲットアカウントから最大の売上を上げる手法である。
- そのためには営業が「こんなところに行きたい!会いたい!」と行き先をまず決めるべきだ。そしてマーケティングチームとしっかり連携することが重要である。
- ターゲティング企業のデータ統合をして、点から面でグリップする環境を作り、新規リードとMQL(問合せ)の質を上げていく。
- 日本企業が抱える多くの課題を解決できる。ターゲット企業を戦略的に攻略して、売上を伸ばすための手法である。
グローバルなマーケティングで活躍し、日本のトップ企業のマーケティングをデマンドセンター型でサポートしてきた庭山さんだからこそ、ABMが提唱できる!と感じました。予想通り、シンフォニーマーケティング社が提供するABMは大きな成果を上げました。さすが庭山さんです。
しかしABMはシンフォニーマーケティング社‘以外’のマーケティング支援企業が提供したら、うまくいきませんでした。そのようなマーケティング支援企業から、ABMを導入してもうまくいかなかったのです。その理由はABMに乗っかって、製品・サービスを売ろうとするベンダーが多かったからではないでしょうか。インサイドセールスを提供するベンダー、企業データベースのリストを提供するベンダー、SFAやMAのツールを提供するベンダーが「ABMを実現するためにはツールやリストを中心」に提供したのです。
そうすると結局、特定されたアカウント企業に対し、リストを整備する、電話する、ツールにアカウントを設定し結果を入力する・・になりました。このような「ショボいABM」が巷に氾濫し、せっかく素晴らしいマーケティング手法:ABMを提唱してくれた庭山さんの想いとは違う方向に進んでいったのです。その後、ABMがブレイクすることはなく、アカウント企業の売上の最大化もできなかったのです。
ABMの条件とメリット・デメリット
もう一度、‘正しいABMについて整理していきましょう。まずABMを導入する企業には、向いている条件があるのです。ABMの条件とは何でしょうか?
【ABMの条件】
- BtoBで単価の高い製品・サービス
- 大手企業がターゲットのアカウント型スタイル(1社に対してアップセル・クロスセルできる)
- よってターゲット企業の意思決定者が多い
- 自社の組織がアカウント営業体制になっている
逆にABMに合わない企業は、このABMの条件の逆です。「単価の安い製品・サービスで、中堅企業や中小企業向けであり、アカウント営業スタイルではない企業」は、ABMには向いていません。ではABMの条件に合った会社の、ABMのメリット・デメリットとは何でしょうか?メリット・デメリットも整理してみましょう。
【ABMのメリット】
- アカウント企業のアカウントが見える化できるので、計画と実績も可視化しやすくなり、組織で効率的な対応ができる
- 営業・マーケティング・インサイドセールス・カスタマーサクセスの組織リソースが有効的に使え、チームが一体感ややりがいを感じられる
- アカウント別のコンテンツや施策を届けられるので、MQLの質が高まる
- マーケティングROIが高くなるので、効果が出るところにコストを集中投入できる
- アカウント企業との関係がより強くなり、売上の向上につながる
ABMを実践すればメリットだらけのように見えます^^ しかしABMを実践することは簡単ではありません。ABMのデメリットについても整理してみましょう。
【ABMのデメリット】
- アカウント企業のアカウントが増えない。アカウント営業からもらったアカウントリストのまま、新しい意思決定者やキーマンを見つけられない
- 営業・マーケティング・インサイドセールス・カスタマーサクセスの組織にスピード感を求められる。よってABM導入前に比べ、かなり忙しくなる
- アカウント別にコンテンツや施策を作るパターンやシナリオ、量が非常に多くなる。コンテンツと施策のマンネリ化にもなりやすい
- マーケティングROIが高くなるので、効果が出るところに集中投入できる
- マーケティングチームはアカウント企業の深い理解度と、関係性向上が求められる
ABMのメリットだけ見るとバラ色に見えますが、ABMを実践していくのは営業・マーケティングメンバーに高いスキルが求められるのです。ABMが成功すれば大きなメリットを得られるので、そのためにはデメリットを克服するしかありありません。そこで最近、ABMのデメリットを軽減し、新しいABMのスタイルが登場してきたのです。 それがABMとインバウンドマーケティングを組み合わせる手法です。
組織で実践するためにはABM ×インバウンドマーケティング
ABMの問題点のひとつに「ABMはWebマーケティングには不向き」と言われてきました。追跡型広告をアカウント企業のアカウントにやりすぎ、追跡しすぎたから嫌われているのは間違いありません。追跡型広告はどんな見込み顧客にも嫌われています。しかし、不向きな本当の理由は違うのです。
それは「アカウント企業のアカウント(経営者)はウェブを見ない」と思われてきたからなのです。昔はそうだったかもしれませんが、今は違います。これだけ事業成長の決断が難しい時代に、経営者がウェブで情報を探さないわけがありません。しかもウェブの情報量は多く氾濫しているので、経営者は経営判断に役立つ情報を、効率よく探したいのです。
そんな経営者に最適な情報を届けられ、検索した時に自社の製品・サービスを見つけてもらう方法がインバウンドマーケティングです。インバウンドマーケティングの構築方法については、右記のインバウンドマーケティングカテゴリーに詳しく記載していますので、ぜひ読んでみてください。最強の新規営業・マーケティング手法だと思っています。
ABMのもうひとつの問題点は、アカウント企業の新規アカウントが増えないという点です。アカウント営業が作成したアカウントプランの中には、アカウント企業の組織情報から人をターゲティングしたリストがあります。アカウント営業が知っている部門別の担当役員や事業部長、業務部門担当、情報システム部担当などが記載されているリストは、ABMを実践するマーケティング・インサイドセールス・カスタマーサクセスメンバーに共有されます。
このリストの新規アカウントが増えないことが、ABMの最大の弱点と言えます。なぜかというとリスト内の同じ人にチームメンバーで電話して、メールを送って、コンテンツや施策を提供しているだけだからです。これではアカウント営業が訪問するのと変わりません。多少の活動量や顧客接点が増えただけと言えるでしょう。
そこでインバウンドマーケティングとABMを組み合わせると問題点が解決されます。 アカウント企業から作成された人のターゲットリストに、インバウンドマーケティングで取得した新規アカウントをリストに追加していけるのです。オーガニック検索してきた新規見込み顧客の多いインバウンドマーケティングの特性を活かし、アカウント企業リストに新規アカウントを増やしていくのです。
ABMは意思決定者が多い企業に合っていると前述しました。例えば、なかなか会えなかった経理部門の責任者が資料ダウンロードをして、アカウント企業のターゲティングリストに追加させるかもしれません。新しい意思決定者やキーマンがインバウンドマーケティングによりどんどん増えていき、インサドセールスが電話対応し、アカウント営業につないでいけるのです。
まとめ
このようにABMにインバウンドマーケティングを組み合わせる方法が、新しいABM手法と注目されています。図1にあるように新しいABMを実践するためには、様々なツールやサービスが必要です。今度は製品・サービスやツール・リストを売りたいからではありません!ABMとインバウンドマーケティングを組み合わせた、新しいスタイルに必要なツールとサービスを次の記事でご紹介していきます。