第5章 営業・マーケティングのやり方(提案・クロージング編)

クロージングとは? クロージングのやり方には様々な方法がある

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提案書を提出し最終プレゼンに進み、最終連絡があった。「御社に決めたいのだが、相談したいことがある・・」という内容だ。相談事だけかもしれないが、顧客担当者は何か交渉をしたいと考えた方がよい。次回商談で合意するための交渉力の意味や使い方、クロ-ジングのやり方について解説していきたい。※顧客の皆さんが読み手であれば、顧客の皆さんには少し失礼な言い回しが登場する。会社のために少しでも利益を死守したい営業に贈りたい言葉なので、ご了承いただきたい。

クロージングとは? 様々な方法がある

 提案書提出とプレゼン、共に終了したとしよう。(ベンダー主導で提案した場合でも、RFP(提案依頼書)提案のどちらの場合でも同じ)。そして皆さんの製品・サービスが最終の1社に選定され、「御社に正式決定しました。発注をしたいので契約等の詳しい手続きの打ち合わせをお願いします」と顧客より連絡があった。これで正式受注だ!チームで喜びを共有しよう。提案依頼があり、顧客が組織で正式に検討して、経営会議で承認される案件のクロージングはこのような流れだ。このケースはスッキリ受注しているのでクロージングは不要だ。

 ただ1社に選定された後、続きがある場合がこれだ。「もう少し費用を下げたいのでこの機能を削減した場合の見積がほしい」とか「1次フェーズと2次フェーズに業務範囲を分けたいので見積がほしい」という要望があるケースだ。これは値引き要望ではなく、仕様や納期変更による調整的なクロージングと言える。

 顧客の要望であり顧客が感じたい価値なので、顧客の希望に対して追加提案として応えてほしい。特に値引き要請をもらっているわけではないし、しっかり対応していれば、皆さんの会社に決まっている事実がひっくり返ることはない。このケースをクロージング1として説明していくので、少し整理していきたい。

クロージングのケース1 提案依頼があり、経営会議で承認、受注される

 クロージング1のパターンは、最終段階では前述した調整力があれば問題はない。最終段階でクロージング=実際の最終交渉は省略されていて、様々な調整が最終交渉をしているようなものだ。なぜ最終段階のクロージングが省略されているかというと、正式決定するまでの具体的な提案や様々なやり取りで、顧客に価値を感じ続けてもらっているからだ。

 「事例が欲しい」「提案が欲しい」「プレゼンをしてほしい」「導入企業のユーザー見学がしたい」などの顧客要望に応えて続けてきたことで、クロージングを省略できているのある。最終段階のクロージング力よりも、顧客に価値を感じてもらう提案の積み上げが、信頼につながっているとも言える。このような進め方は「金額という価値の前に、先に製品・サービスの価値を伝え続けている」よいパターンなので、ぜひ目指して欲しい。パターン1のクロージングの展開を目指せば、競合他社と値引き合戦にならなくてよく、利益を下げなくて済む。

 もうひとつのパターン2は、最終段階でクロージング=最終交渉が必要なガチンコ案件のことだ。このケースがクロージング力を問われるので、次をご覧いただきたい。

クロージングのケース2 顧客担当者に商談中に「御社で進めます」と言ってもらうために

 クロージング2のパターンは、経営会議で承認をもらうプロセスは必要だが、顧客担当者に社内影響力や決定権があり、その人がOKと言ったらほぼ正式決定するケースである。いわゆる力のある担当者が登場する時だ。又は最終決済者の社長が登場してOKと言ってもらえるケースも含めよう。商談中にクロージング2の瞬間が訪れた時のやり方を説明していきたい。

 クロージング2のクロージング力とは顧客担当者の要望(値引き要求、納期短縮、機能アップなど)に、自社の利益が減ることを最低限に抑えて、その場で合意する力を指す。もっと乱暴な言い方をすると、最終商談で顧客に納得してもらい「御社にします」とその場で言ってもらう力だ。言ってもらうことを、更に乱暴な言い方にすると「言わせる力」がクロージング力だ。クロージングには様々な方法があるので紹介していきたい。

 顧客担当者に様々な価値を感じ続けてもらうことは、クロージング1も2も同じだ。だがクロージング1と2の選定プロセスと少し違うことがある。選定プロセスの違いとは、顧客担当者の力が強すぎるため、その場の交渉に合意する必要があるのだ。力が強すぎるということは決定権があるのでよいことなのだが、交渉のために様々な条件が出てくる。力のある顧客担当者は会社の利益になるための行動が激しい。交渉を楽しんでいるとも言える。よって値引き要求や仕様範囲や納期条件などの交渉が多くなり、交渉のための価値を感じてもらうことに、営業は集中する必要がある。これが皆さんに学んでほしいクロージングだと私は思っている。

クロージングのケーススタディ

 さて、ある商談をケーススタディで紹介する。ベンダー主導の提案で進めていくパターンで初回訪問から提案を重ね、4回目の商談で見積提出をしたとする。数日後、顧客担当者からメールがあり「提案の内容で相談があるので来てほしい」と言われた。次の5回目は提案内容についての最終確認というよりも、おそらく見積金額について値引きの最終交渉をしたいのだろう。このような連絡があればいよいよ最終段階であり、この商談をクロージングしなければならない!と感じてほしい。(何の準備もせず、提案の相談に訪問したら、エライことになります・・)

 それでは5回目の商談に向けて準備すべきことや、当日の営業のクロージングについて話していきたい。「提案の内容で相談があるので来てほしい」と連絡があったので、5回目の商談に訪問した。訪問してみると、顧客は提案内容についてはこれでOKとのこと。だが金額が高いのでこれでは経営会議にまわせないと顧客担当者が言う。提示金額を下げられないか?と、顧客は値引き要求をしてきたのである(以上の内容を以下、Aと省略)。この商談の席上で営業はどのようにして、クロージングをすればいいだろう?様々なクロージングのやり方があるので、順を追って整理していきたい。

クロージングのやり方① まず自社にベストな着地点を探る

 Aのように言われれば、あとは金額さえ合意すれば決まりだ。だが安心はしてはいけない。まだまだ席上で顧客と合意をしていないからだ。まず意識するべきことは「最低限の値引きで食い留め、個客担当者に納得してもらうにはどうすればいい?」と感じ、「できるだけ自社にベストな着地点」を考える。そのためにどうすればいいかを探ることだ。しかし顧客に探りを入れることはなかなか難しい・・。自社の利益を死守するためにまず探るとは、顧客に素直に聞くことから始めてみよう。

クロージングのやり方② カードは自分から切らない。相手から引かせる

 Aと言われたら、「では弊社のできる範囲でお値引きを検討させていただきます。弊社としましては〇〇円までが限界でして・・」と自分から先にカードを切る営業がいる。これは絶対にダメだ。なぜかというと、値引きを2回しなければならなくなる可能性があるからだ。顧客担当者が「〇〇円では、当社予算に合わず経営会議に出せないのですよ」と言われば、相手のペースなり、更に値引きをするしかなくなってしまう。営業は先に刀を抜いてしまえば、二本目の刀はない。二本目の刀が必要になった時点で、戦いは負けになると思うべきだ。

 Aのケースでまず顧客に聞くための、良いクロージングトークの例がある。「顧客担当者の〇〇さんは、いくらぐらいなら経営会議通ると思っていますか?」と営業から先に聞いてみるのだ。ここで注意しなければならないのは「予算はいくらですか?」と聞いてはいけない。予算は顧客担当者が昨年の予算取りでザックリと取っているアバウトな金額だろう。予算獲得用の金額と執行予算は違うかもしれないし、経営会議では正直、いくらなら承認されるとは決まっていないはずだ。力のある担当者と1対1の交渉なので「あなたはいくらにしたいのか?(営業から)」「私はいくらでお願いしたい!(営業から)」の展開に持っていっていき合意を目指すのだ。そのためにも最終価格ははいくらにしたいのか、先に顧客担当者にカードを引いてもらおう。ここからは相手との駆け引きだ。しかし聞くだけではクロージングはできない。では具体的にはどんなクロージングトークが必要なのだろう?

クロージングのやり方③ 値引きゼロで合意することが最高のクロージング

 「これ以上、ご提示金額から下げることはできないのです。なぜなら・・・」と正当な理由を説明し、値引きゼロで合意することが最高のクロージングだ。前述した「先に顧客担当者にカードを引いてもらう」と言ったが、「これ以上のお値引きはできません」のカードを先に切って、ゼロ値引きで踏ん張れる自信があるならそうした方がいい。又は「いくらなら通りますか?」と聞き、先に顧客に言ってもらって「その金額にはできないです。なぜなら・・」と理由を説明しクロージングしていくやり方もあるだろう。だが値引き要求をしてきた顧客に「ゼロ回答」では、なかなか気分よく合意はしてくれない。最低限の値引きで食い留め、個客担当者に納得してもらう、クロージングのやり方はあるのだろうか。

クロージングのやり方④ 交渉は対等。クロージング時に「値引き要求は1回」と伝える

 「聞く標準化=案件を進めていくために聞く項目」で、事前に決裁者については聞いているので、もう一度整理しておこう。(※前ブログ「営業の初訪問 ヒアリング項目編」で解説したので、もし時間があれば見ていただきたい)。例えば経営会議承認と稟議がまわることは事前に聞いている。ベンダー選定は検討チームにほぼ任されているので、顧客担当者が決めたベンダー提案と金額でほぼ確定だ。ならば、その場で顧客担当者と合意することを目指していこう。

 もう一度言うが、基本スタイルは値引き要求があった時に「これ以上のお値引きはできないのです。なぜなら・・・」と理由を説明し踏ん張ってみよう。値引きができない理由をしっかり説明して、それでも納得をしてくれないなら、こう言ってみよう。

 「経営会議後にまた値引き要求はないですよね?あるようならば、ここでお値引きはできません。お互い交渉ですから値引きするにしても1回にしましょう」と言ってみてはどうだろう。交渉とは対等だ。ベンダー側が卑屈になり、下手に出る必要は全くない。顧客の気分を悪くしないことにはもちろん気をつけなければならないが、クロージングに入った段階で交渉は対等に進めてよい。値引きはできればゼロで合意したい。しかし顧客の要望に応えるための値引きが必要になることがある。その時は「交渉は一回ですよ」と前置きをして、対等に交渉してみよう。

クロージングとは? クロージングのやり方には様々な方法がある まとめ

 この段階ではクロージングは完了していない。顧客が気持ちよく「御社にしますよ」と言ってくれていないからだ。顧客と合意するためには、この後、まだまだ細かなクロージングのための駆け引きや交渉が必要になってくる。次回のブログでは「交渉力の4ケ条」についてお話したいと思う。

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