クロ-ジングは営業にとって大切な作業です。誰でもクロージングができる営業になりたいですが、最近、ビジネスシーンでクロージングが減っていると言われています。それはなぜなのでしょう? そこで、クロージングを営業がやるべき意味、クロージング営業になるための例文、そしてクロ-ジングをしなくてもいい方法もご紹介いたします。ビジネスでは技術部門がクロージングするケースもありますが、本記事では営業のクロージングを中心にご説明してまいります。
目次
クロージングとは? 営業がやるべき意味
クロージングとは、営業が受注に向けて行う最終段階の作業のことです。もっとわかりやすく言うと、営業が受注・契約するための最後の折衝を指します。クロージングのことを「クローズする」という企業もあります。英語のCloseは日本語では締めるという意味であり、その進行形がclosingであり、締めくくるための作業を積み重ねて、受注しよう!という言葉と言えます。
クロージングは営業がやるべき大事な行為です。受注することが目的の営業こそ、クロージングをやらなければ、企業の売上向上を達成できません。受注に向けてのクロージングは技術部門のメンバーでは難しいでしょう。
しかし、昔と今ではクロージングの意味が少し変わってきています。現代では2種類のクロージングスタイルがあると感じています。ビジネスシーンでクロージングが減っている背景には、何が起きているのでしょうか?
ビジネスシーンでクロージングが減っている理由
昔と今ではクロージングのスタイルが少し変わってきてあり、現代のビジネスシーンでは3つのケースと2種類のクロージングスタイルがあります。その3つのケースと2つのクロージングの種類を、まずは大きな視点で考える必要があります。
A 企業のコンプライアンス重視(法令順守)から、決裁プロセスが厳格なケース
- 見積提出後に社内稟議や経営会議にかけ、正式な決裁プロセスを踏んで決まることが多い。
- 社内規定に定められている役職者に決裁権は付与され、ワークフローで決裁されていく。
- つまり、担当者や役職者が製品・サービスの選別はするものの、自身の判断だけでは最終決定できないため、営業はクロージングができない。
B ワークフローで決裁手続きをする必要はあるが、担当者の権限が強いケース
- 見積提出後に社内ワークフローにかけ、正式な決裁プロセスを踏む手順はAと同じ。
- しかし、企業担当者の力が強く、企業担当者が選別した製品・サービスで進んでいく。
- つまり、「これは会社のためになる製品・サービスだから選びたい!」と企業担当者が思ってくれれば、営業はクロージングができる。
C 紙の稟議書の決裁もなく、企業担当者の意向で決定するケース
- 昔のスタイルであり、クロージング全盛時代のパターンなので、即決受注も多かった。
- 商談中、値引きを楽しむような担当者が多かった時代である。
このように3つのクロージングのケースが、現代のビジネスシーンでは存在していると言えます。
そして、昔はCのクロージング、現代のビジネスシーンではAとBのクロージングの2種類のスタイルが主流になってきます。営業のクロージングシーンが減っているのは、このようなコンプラ強化からの決裁プロセスの定型化が理由になっていると言えます。
しかし、企業は課題解決や事業成長のために製品・サービスを選定し、1社に発注します。営業はその1社の発注に入るために、クロージングをする必要があります。担当者に意向で即決する時代でなくとも、現代の決裁プロセスに対応し案件を進めていけるクロージング営業になるためには、どのようにすればいいのでしょう?
クロージング営業になるために 例文をご紹介
現代の決裁プロセスに対応し案件を進めていけるクロージング営業になるために、みなさんに必殺技を授けたいところですが、残念ながら一発でクロージングできる技はありません。
初回訪問やリモート商談で製品・サービスの良さを伝え、問題点を聴き、課題解決のための提案を繰り返していくことが、王道の進め方です。クロージングに導いていくには、これしかないと言っても過言ではありません。
このクロージングへ向けての王道の進め方は身につけつつも、何かヒントになる技はないのでしょうか? そこでクロージング方法をお伝えしたいと思います。
クロージング 例文1 「着地点を探る = どうすれば決まるのか?」
営業 「今回の●●システムの選考基準について、優先順位1番目と2番目を教えてください」
顧客 「今回はまず、使いやすいシステムであること、次に自社で開発できる拡張性があること、ですかね」
※優先順位と聴くと、だいたい「安いことです」と値段のことは言わないので、次に予算感へ
営業 「では費用面は予算より高くなっても、大丈夫ですかね?」
顧客 「いやいや、予算内には収めたいですし、提案が良くて安い方がいいです」
営業 「では、いくらなら、決めていただけますか?」
顧客 「正確な予算は言えません。しかし、2,000万までに収めていただければ、いけるかな・・と思っています」
BANTでいうと、N(ニーズ)の優先順位1と2、そしてB(予算)を抑えながら、クロージングに向かっていく例文です。「優先順位は?」と「いくらなら?」は良いクロージングトークです。ビジネスの交渉は対等ですから、堂々と聴いてみましょう。
クロージング 例文2 「顧客から要求があれば、こちらも要求する = 対等な交渉」
顧客 「では指し値を言います。1,500万にしてもらえれば、これで決裁を通します」
営業 「さすがに2,000万から500万をお値引きするのは、ここからは厳しいです。では、間を取って、1,800万なら、いかがでしょうか?」
顧客 「うーん・・、では、少しうち寄りで1,700万ではどうですか」
営業 「では、1,700万にする条件として、導入事例になってください。ロゴ使用や取材をお願いします。」
顧客 「事例掲載ならいいですよ。では、1,700万で決定しましょう。私に一任されていますが、会社のルール通り、これで稟議を通すのでお待ちください」
営業 「ありがとうございます!」(クロージング完了)
例文2の例は、Bのクロ-ジングパターンであり、Cの昔のクロージングを思い出すようですが、意外にこのような最終シーンはあります。ビジネスの交渉は対等ですから、顧客から要求があれば、こちらも要求するようにしましょう。
値引き要求時は、なるべく値引きゼロで踏ん張ることが望ましいですが、どうしても応えなければならない局面では、「間を取る」は心理的にも有効です。「事例になってほしい」は値引き要求を受ける時に必ずセットでお願いしましょう。一番、事例になってもらいやすい瞬間です。
ただし、よく事例になることを忘れられたり、「広報がダメだと言っていて・・」とウヤモヤにされたりするケースがあるので、しっかり顧客と握りましょう。
7つのやり方に売上向上のヒントが隠されている
営業・マーケティング 7つのやり方 サービス基本ガイド
営業がクロージングをしなくてもいい方法がある
しかし、今の若い世代は例文2のような激しい交渉やクロージングをできればしたくないと思っています。製品・サービスの説明をしっかりして、要求に丁寧に答え、提案書・見積書を提出して受注メールを待つスタイルを望んでいるでしょう。その気持ち、凄くわかります。
「A 企業のコンプライアンス重視(法令順守)から、決裁プロセスが厳格なケース」が増えているわけですから、激しいクロージングをしなくてもよい時代に入っています。しかし、受注に向かうために、営業が最終クロージングに導いていく作業は、現代も求めれます
そこで、クロージングをしているのだけど、営業がクロージングをしなくてもいい方法をひとつ教えます。それは、見込み顧客である企業の導入目的をメッセージやスローガンにしてあげて、次に進めていく旗印にするという方法です。
企業には必ず何か問題があり、課題解決をするために手段を求めます。その手段とは製品・サービスを導入することかもしれませんし、内製化や社内プロジェクトにより取組むことかもしれません。そして、目的を(How)どうやって実現するか? のために手段を使います。しかし、目的が曖昧なまま、手段先行で検討されていくケースは少なくありません。
そこで営業がしっかりと「今回の導入目的は●●ですね」と、導入目的をメッセージやスローガンにしてあげるとクロージングまで進めやすくなります。
クロージングのための導入目的例
- ●●業務の効率化
- ▲▲業務の標準化
- 品質向上のための■■作業
‘導入目的’を営業が明確に言語化してあげるのです。そうすると目的を達成するために必要な手段の製品・サービスだけでなく、導入体制、進め方、移行方法や運用作業などを顧客と営業が一緒に考え、提案していけるようになります。明確な企業の導入目的が、クロージングまでの流れを作ってくれます。
「この機能は■■作業の品質向上のためには不要なものです」
「この体制では、■■作業の品質向上は実現できないので、〇〇部門の人が必要です」
導入目的例を「■■作業の品質向上」だとすると、このようなイメージで一本の提案の軸を決められるのです。導入目的を営業が初回訪問から明確にしてあげると、営業がクロージングをしなくてもスムーズに最終局面まで進みやすくなります。ぜひ、導入目的のメッセージ化・スローガン化をやってみてください。営業が自然とクロージングできるようになります。
まとめ
「クロ-ジングとは?営業ができるようになる方法 例文も紹介」と題して、ご紹介してまいりました。営業がクロージングをやるべき意味、ビジネスシーンでクロージングが減っている理由もご理解いただけたと思います。
現代のビジネスシーンでは3つのクロージングケースと、2種類のクロージングスタイルがありました。クロージング営業になるためには、例文1や例文2を参考にしていただきたいですが、今の世代の営業はできればクロージングをしたくないと感じています。
「今回の導入目的は●●ですね」と、導入目的をメッセージやスローガンにしてあげるとクロージングまで進めやすくなる方法であり、営業がクロージングをしなくてもいい方法とも言えます。ぜひ活用してみてください。そして、営業みなさんの受注が増えることを祈っています!