営業が商談を進め、案件化してくためには、企業担当者以外のキーマンにアプローチする必要があります。キーマンと意思決定者や決裁者、ステークホルダーはどのように違うのでしょうか? 今の時代はオートマチックに製品・サービスの説明をして、提案をすれば受注確率が上がると思っている営業が多いと感じています。しかし、人間同士でビジネスを進めていくわけですから、人の関係構築も重要です。キーマンを言い換えると‘人’になります。‘人を’攻めて、‘人で’攻める営業になるためのやり方や方法を解説いたします。
目次
キーマンとは?意思決定者と決裁者はどう違うの?
ビジネスシーンでのキーマンとは、企業で導入する製品・サービス導入や設備投資に対し、大きな影響力や重要な役割・決定権を持った人のことを指します。キーマンは意思決定者であったり、決裁者であったり、取締役や執行役員クラス、事業部長・本部長クラスだったりします。
意思決定者とは最終意思決定をする人であり、決裁者は最終決裁をする人になります。ただし、企業ではコンプライアンス(法令順守)重視の傾向から、DMUや決裁ルートを設計し複数の人で決めていきます。
- DMU 複数の意思決定者合議で決める。Decision Making Unitの略
- 決裁ルート 複数の決裁者が合議で決める。ワークフローや稟議で対応する
DMUは顧客側の意思決定の単位(ユニット)という意味ですので、意思決定や決裁をするキーマンは複数登場します。また、キーマンは取締役や執行役員クラス、事業部長・本部長クラスだけとは限りません。部長や課長、役職のないベテラン社員にもキーマンはいます。社内で大きな人脈や専門性を保有している人がこのようなキーマンにあたり、「●●さんに選定に参加してもらって、意見を聞こう」というケースです。
キーマンは役職者だけでなく、社内で信頼されている専門性の高い人も該当します。つまり、キーマンという大きな枠組みの中に、意思決定者と決裁者が存在するというイメージです。本記事ではとは意思決定者と決裁者の違いはなく、製品・サービス導入や設備投資を決める複数の人をキーマンと定義してご紹介していきます。
そして、「攻める」という言葉は紛争や戦争の多い今の時期には不適切かもしれませんが、営業が積極的に見込み顧客へ動くという意味でご理解いただければ幸いです。「どう攻略するか」ということは営業で大事なポイントです。
今の時代にキーマンを言い換えると ステークホルダー
キーマンは意思決定者と決裁者、社内で信頼されている専門性の高い人と定義しました。しかし、今の時代にキーマンを言い換えると「ステークホルダー」という言い方が存在します。
上場企業、非上場企業に関係なく、企業はコンプライアンス(法令順守)が重視されていますので、ステークホルダーの利益のために社会道徳や規範を守る義務があります。ステークホルダーとは利害関係者のことで、株主、顧客、従業員・経営者がそれに当たります。
取締役がコーポレートガバナンスや内部統制を構築し、コンプラ強化を実行します。製品・サービスや設備投資を決める複数の人をキーマンとするならば、ステークホルダーは従業員・経営者になるでしょう。しかし、本記事で定義したキーマンと同じですので、株主や顧客の利益のために従業員や経営者が意思決定し、決裁していくことを覚えておきましょう。
キーマンになる人に会うべき理由
キーマンは複数の意思決定者、決裁者、社内で信頼されている専門性の高い人と理解できたと思います。しかし、営業が製品・サービスの導入を決めてもらうために商談をするのは、組織の担当者になります。つまり、企業担当者以外のキーマンには、普通に商談していたら会えないケースがほとんどでしょう。
営業は企業担当者に製品・サービスの提案をして、決裁へ進めてもらいます。企業担当者だけの意思や影響力で決裁プロセスに進み、営業が受注できるとすれば、キーマンに会う必要はありません。しかし、企業担当者の意思や権限よりも、キーマンの意思や権限が強い場合が多いと言えます。なぜなら、それが組織だからです。決裁権限表や職務権限表が存在していることからも、複数のキーマンの意思や権限は強いと言えるでしょう。
ならば、製品・サービスの受注確率を上げるために、営業はキーマンになる人を探し、会うべきです。一般的には、営業は次のようにお願いしていると思います。
- 「企業担当者様の上司の方にも会って、ご説明させてもらえませんか?」
- 「意思決定者の役員の方にプレゼンさせていただけませか?」
と言ったことのある営業は少なくないでしょう。けれど、企業担当者の方はこう言います。
- 「私が選定を一任されているので、私が説明も提案も受けます」
- 「競合各社の提案が整理されていない状況で、上司に会わせると私の立場がなくなります」
- 「私だけでは、信用できないということでしょうか?(怒)」
このように企業担当者が言うのは当然であり、サラリーマンとしての立場も心情も理解できます。
しかし、営業は製品・サービスの提案をキーマンにも伝え、キーマンと関係構築をして受注確率を上げなければなりません。企業担当者だけでなく、キーマンに会うためにはどのようにすればいいのでしょうか?
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人を攻められる営業になろう
「会うべき人=キーマン」に接触する方法を考える前に、BANT(バント)とMEDDPICC(メディピック)を理解しておきましょう。BANTから進化したものがMEDDPICCであり、どちらも営業が情報収集し、聴くべき項目を体系化したメソッドです。
- B 予算 Budget(バシェット)の略
- A 決裁者 Authority(オーソリティ)の略 ★人の情報収集
- N ニーズ、課題、要求、必要性 Needs(ニーズ)の略
- T タイミング、期間や時期 Timing(タイミング)の略
- M 指標・メトリクス Metricsの略
- E 決裁権限者 Economic Buyerの略
- D 意思決定基準 Decision Criteriaの略
- D 意思決定プロセス Decision Processの略
- P ペーパープロセス Paper Processの略
- I 痛みを特定する Identify Painの略
- C 擁護者 Championの略
- C コンペティション Competitionの略
BANT(バント)とMEDDPICC(メディピック)の詳しい内容は下記記事をご覧ください。
MEDDPICC(メディピック)とは?外資系営業のフレームワークとして広がる理由
本記事ではBANTとMEDDPICCの「人=キーマン」について聴くべき項目が進化している点を深掘りしていきたいと思います。次のようにBANTの時代(1990年代)から、MEDDPICCの時代(2000年代から現在まで)で、「人=キーマン」の情報収集項目が1つから3つに増えているのです。
BANTのA (1つ)
1)決裁者は誰か?
MEDDPICCのEDD (3つ)
1)Economic Buyer 決裁権限者
全社的な最終権限を持つ人は? 企業内のボトムアップとトップダウンの主導力と影響力は?
2)Decision Process 意思決定プロセス
評価から決定までのプロセスやステップは?
DMU(複数の意思決定ユニット)=意思決定者、承認者、キーマン別に把握
3)Champion 擁護者
推進してくれる人は誰か?
役職者ではないキーマンも重要(社内で信頼されている専門性の高い人)
このように「人=キーマン」について聴くべき情報が増えているのです。MEDDPICCのEDDにあるように決裁権限者だけでなく、ボトムアップとトップダウンの主導力と影響力も聴くべきです。評価から決定までの意思決定プロセスやステップを把握し、DMUも理解しておかなければなりません。
推進してくれる人は担当者であることはもちろん、役職者ではない社内で信頼されている専門性の高い人も聴き出し、アプローチをする作業も重要です。まさに、企業内の人を攻めるために聴ける営業になることが大事なのです。
詳しい内容は、下記バナー「MEDDPICC(メディピック)実践ガイド テンプレート付き」資料をダウンロードいただきますと、「聴ける営業になろう!」研修の進め方や価格が記載されています。さらに詳しい内容はお気軽に弊社にお問合せください。
つまり、企業内の人を攻められるようになるためには、まず聴ける営業になられければなりません。しっかりと聴いて、‘人を’ 攻められる営業になっていきましょう。
‘人を’ 攻められる営業になろう → 企業内のキーマンを聴き出し、アプローチできること
‘人で’ 攻める営業も目指していこう → みなさんの自社内のキーマン(役職者や専門性の高い人)
を、提案中に企業内のキーマンで会わせること
人で攻める営業も目指していこう
‘人を’ 攻められる営業になろう
企業内のキーマンを聴き出し、アプローチすること
‘人で’ 攻める営業も目指していこう
みなさんの会社のキーマン(役職者や専門性の高い人)を、提案中に企業内のキーマンで会わせること
ここまでこのように説明しましたが、仮に企業内のキーマンを聴き出し、人を攻めることができたとしても、キーマンにアプローチするためにはどうすればいいでしょうか?
企業担当者が「私が選定を一任されており、提案内容が整理されていない状況で、上司に会わせると私の立場がなくなります」と言われれば、打つ手がありません。自社内のキーマン(役職者や専門性の高い人)を会わせるどころの話ではありません。しかし、人を攻める=キーマンを聴き出すまではできたと仮定すると、何かアプローチ方法はあるはずです。
人で攻める営業のポイント
1. 企業担当者のメリットを最大化してあげて、攻める
1-1 キーマンも一緒に説明を聞いてもらった方が効率的であることをアピールする
1-2 初回訪問や序盤戦で良い提案をする。「あの部署のあの人にも聞いてもらった方が会社のために良い」と思えば、数多くのキーマンを巻き込ませる行動を取ってくれる
2.企業担当者と担当営業の知らないところで攻める(担当営業は知っていたとしても)
2-1 キーマンである役職者に対し、その他の人脈(役員つながりや外部顧問、クロスセルの他部門人脈)でアプローチする
2-2 人で攻めるために、キーマンと自社のあらゆる接点(取引先や金融機関等)を調べる
このような人で攻める営業方法があります。詳しいやり方は本記事では説明しきれないのですが、人を攻めるために聴く力をつけ、人で攻める営業方法を身につけて受注確率を高めることを目指していきましょう。
まとめ
「キーマンとは?ビジネスで人を攻める+人で攻める営業を目指そう」と題して、ご紹介してまいりました。キーマンとは、意思決定者と決裁者のような決める人だけでなく、社内で信頼されている専門性の高い人や推進してくれる担当者のことでした。
そして、人を攻められる営業になるためには、聴ける営業になるスキルを身につけましょう。そうすれば、意思決定プロセスやキーマンの情報収集ができるようになります。
そして、人で攻める営業も目指していきましょう。
1.企業担当者のメリットを最大化してあげて、攻める
2.企業担当者と担当営業の知らないところで攻める
この2点は人で攻める営業の基本方針になりますので、ぜひ覚えておいてください。
営業は問題点を課題に整理し、課題解決のために提案し、クロージングすることが仕事です。しかし、提案力やクロージング力だけが高くても受注確率は上がりません。人と人でビジネスをやる以上、人間同士の関係構築をしなければ、発注と受注のビジネスは成立しません。
キーマンを人と捉え、人を攻める+人で攻める営業組織を目指していきましょう。「人と人」を営業の真ん中において案件を進めていくことが、今の時代に足らないと感じています。営業は‘人を’攻める力と、’人で‘攻める力を、ぜひつけていってください。