第5章 営業・マーケティングのやり方(提案・クロージング編)

提案の意味とは? 「提案する」と「提案書を作る」は違う

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顧客から「提案してほしい」と言われたら、すぐに提案書を作ることに向かう営業がいる。提案書を作る提案もあるが、提案書を作らない提案もあることを理解すると、営業のやり方が大きく変わってくる。では提案とはどのようにすればいいのだろう?顧客志向で提案の意味について、考えてみよう。

提案とは?どういう意味なのだろうか

本サイトでは営業力強化の記事を右記に記載している。第4章では新規営業・訪問編で初回訪問のやり方を紹介し、ここからはいよいよ第5章「提案・クロージング編」に入っていきたい。

例えばこのようなケースを紹介したい。初回訪問で顧客に製品・サービスの魅力を伝えられ、次回以降は顧客から「具体的に提案してほしい」「やり方は御社に任せる」と言われたとする。初回訪問は成功し商談化から案件化に進捗できた状態だ。では提案フェーズに進めていくためには何か必要だろうか? そもそも提案のゴールは何だろうか?そして提案とは何なのか?

みなさんの業種・業態や企業ごとにスタイルは違うと思うが、どんな企業でもどんな営業で共通の提案スタイルがある。それは提案とは顧客に対し「案を提ずる」ということだ。顧客の現状の問題点を聞き、課題整理し、製品・サービス導入後のメリットを伝え、あるべき姿を描いてあげる作業だ。AsIs(現状の改善すべき姿)を整理し、ToBe(あるべき姿)を示す。そのための具体的な案を提ずるのだ。これが提案だ。 英語で言う提案、suggestionである。 

提案するソリューションは、ひとつではない

提示した案が自社の製品・サービスがピッタリはまればサイコーだ。だが顧客の課題を解決してくれるもの=ソリューションは自社の製品・サービスだとは限らない。

たとえば製品・サービス導入の前に課題を整理し、あるべき姿を作りと今後の進め方を示してもらうためのコンサルティングサービスかもしれない。もしかすると課題解決できる製品・サービスに投資する以前に、顧客で取り組めることがあり、社内改善チームで1年間活動することがソリューションかもしれない。

営業は当然、自社の製品・サービスがソリューションになれば一番いいが「案を提ずる」とは顧客のAsIsの状態によって、ベストなソリューションが変わってくるということは忘れないでほしい。提案するソリューションはひとつではないし、顧客の課題解決の状態によって変わってくるのだ。

「提案する」と「提案書を作る」は違う

では顧客への提案は自社の製品・サービスがベストだったとしよう。費用対効果も導入メリットも顧客はその製品・サービスの提案手法に期待している。では提案はどのように進めていけばいいだろうか?提案をするためには提案手法がいくつかある。

まずは顧客の現状をヒアリングして、製品・サービスのデモで解決策を伝えていくことは提案の代表的な手法だ。IT業界ではソフトウェアを見せながら紹介していくことをデモと言うが、プロダクト(自社製品・サービス)を持っている企業は、プロダクトを見せていく提案手法は同じだと思っている。デモで見せながら、顧客の問題点ややりたいことを確認していく。これも立派に案を提ずる、提案だ。

AsIsを聞いて、ToBeを描いてあげ、しっかり提案書を作り提出することも提案手法だ。カタログだけで何度が打ち合わせを重ねることも提案手法だ。提案手法は顧客が満足し提案にOKを出してくれば、どんなやり方でもいい。それが「具体的な提案をしてほしい」という顧客の要望に応えていることになる。ところが「提案してほしい」と顧客に言われるとすぐに分厚い提案書を作り提出しなければならないと思う営業がいる。提案すると提案書を作るはイコールではないのだ。

粗く言うと、顧客が提案に満足してくれれば、提案手法は何でもいい。競合先が100ページの提案書を提出し、私の会社が何の提案書も提出せず、デモと打ち合わせだけで受注したこともある。理由は数回の打ち合わせの中で、課題について具体的な解決策を提案をしたことが評価されたからだ。

ただマナーとして顧客の課題整理したサマリーや提案のポイントを簡単にまとめた資料に加え、製品・サービスの特長を紹介した提案書ぐらいは提出した方がよいだろう。いずれにしても「提案」と聞いて「提案書をたくさん作らなければ・・」と余計な提案書づくりに時間を割くことはやめよう。

提案書を作らない場合、打ち合わせの中で提案をするときにはひとつ意識してほしいことがある。それは「自社製品・サービスの業種と業務について我々には圧倒的なノウハウがあります」の情報を多めに発信していくことだ。

この分野の専門なので当然理解していますというムードで製品・サービスの価値を伝え、圧倒的な顧客事例からたくさんの同じ業種の課題を知ってます!と顧客に教えてあげるぐらいの提案スタイルだ。そして「さすが、その分野でTOPクラスの製品・サービスですね」と顧客に評価をしてもらえることを目指してみよう。

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提案のゴールとは?

そして提案のゴールとは何であろうか。顧客が「この提案により課題が解決できて、導入効果が期待できる」と思ってもらい、「あとは社内で検討しお返事します」と言うまでの作業が、提案のゴールだろう。

競合が存在する場合は当然あるので、自社をメインに考えてくれている状態を保ちつつ、この状態を目指してみよう。 提案手法は様々なやり方で良いが、提案のゴールには見積書は必要だ。費用がいくらかかるのか、顧客は把握できないと最終選定はできない。

みなさんの製品・サービスによって1プライスの価格体系もあれば、カスタマイズ型で個別見積になるものもあるだろう。イニシャル費用とランニング費用で5年間総額はどれぐらいの費用になるのか、資産計上するものとしないものはどれなのか?など導入費用は検討に密接に関係してくる。

見積は提案のゴール直前で提出しよう。概算費用は初回訪問で伝えるが、2回目などのアクションで見積を提出してはいけない。(「やってはいけない〇〇営業」に登場する、自分から見積出します&提案します営業のこと) 見積は提案のゴールで必要であり、最終のタイミングで正式見積を提出しよう。

提案する「型」は業種・業態によって違う パターンと方法を紹介

本記事では対象となる営業・マーケティングの業種や業態、スタイルは限定していない。どんな営業スタイルにでも本記事のやり方は当てはまるはずだ。ただし「提案する」となると業種・業態別に変わってくる。

私はIT業界なので、他の業種はみなさんの方が業種・業態別の提案パターンについては詳しいと思うが、どんな営業スタイルと提案パターンがあるのか、関連性を少し整理してみた。業種・規模・エリアはたくさんの種類あるので割愛させていただく。営業スタイルから「提案の型」と方法をご紹介したい。

ルート型

業種 →食品、飲料、日用品、家電メーカー/卸:小売・量販。

提案 →定番商品にするための棚割りシーズンの提案や特売提案・企画提案を行う。

案件型

業種 →金融、派遣、事務機、IT、警備:エンドユーザー。

提案 →顧客に個別の提案を行う案件型タイプが多い。

物件追跡型

業種 →建設系、ゼネコン、設計事務所、設備メーカーは施主にアプローチをする。

提案 →物件が特定できたら図面や見積などの個別提案を行う。

開発営業型      

業種 →精密機器、装置、化学のサプライヤー(部品)メーカー。

提案 →技術営業が試作品を作り試作提案から本作に進み、量産できるよう提案する。

コンシューマー型(BtoC)

業種 →自動車販売、保険、住宅の個人が直接購入する単価の高い商品。

提案 →製品・サービスの実物で提案と見積をし、個人(BtoC)に提案していく。

サブスクリプション型 

業種 →サブスク契約(一定定額で付加価値が年々上がっていくサービス)はサービスや物販など広がっているがサブスクはビジネスモデルであり業種は問わない。

提案 →BtoBであれば提案が必要だが、BtoCであれば製品ページや広告から提案していく

このように様々な「提案の型」があると言われている。私はBtoBで営業・マーケティングを実践してきたので、BtoCの対象企業に本記事の提案手法は少し違うことはご容赦いただきたい。

しかし基本的な提案手法には共通点は多いと思う。営業スタイルの提案の型がわかったところで、次は実際に提案の大きな2つの種類のやり方について説明していきたい。特に詳しく伝えたいことはRFI(情報提供依頼書)・RFP(提案依頼書)から始まる提案だ。提案書を作るやり方についてまとめていきたい。

「案を提ずる=提案する」と「良い提案書を作る」を両立させる提案営業

顧客に対し、ベストな案を提じ、その案をしっかりと文章と図解で説明した提案書を作成する方法がある。ダイジェスト版をサマリーしてみると下記のようなポイントが挙げられる。

提案営業という、膨大な量の提案書を作らなくても、顧客に提案ができる手法がある

→顧客に「提案してほしい」と言われると、すぐにたくさんの提案書を作成する営業がいるがそれは間違っている。膨大な量の提案書を作成しなくて、顧客に提案できる手法があるのだ。

なぜRFI・RFPが顧客から出てくるのか?

 →RFI案件やRFP案件にはできればしたくないが、顧客が使う理由がある。まず理解しよう。

RFI(情報提供依頼書)RFP(提案依頼書)への提案手法とは?

 →RFI案件への提案マナー、RFP案件への提案ルールの基本を習得しよう。

RFP案件の提案方法は、まず作業分担から

 →RFP案件への対応は相当な提案書作成ボリュームになる。社内メンバーの作業分担をすればいいものでもなく、提案の一貫性を持たせる作業分担がある。

RFP案件の前半戦は、質問記入票がポイント

→良い質問の聞き方、悪い質問の聞き方を理解しないと顧客に嫌われる。そして質問の量はどれぐらいすればいいのだろう?

良い提案書の書き方とは?

→読み手によって全体構成を工夫して分ける手法をやってみよう。そして第一章で提案方針を伝え、一貫性を持たせると提案書がグッと締まる。

やってはいけない提案書作り ダメなことを先に理解しておくと作業効率が上がる

→RFPから逸脱したシナリオになっている提案書は自己満足?製品画面の貼り付けオンパレード提案になってしまうには理由がある。

提案書の作り方とは? 

→提案書で使わない方がよい文章、使うべき文章がある。理解するかしないで伝わり方が全然違う。提案書の書き方のフレームをいくつか持っておこう。

提案書フレーム(テンプレート)や見積書の作り方も記載した、「提案書作成・書き方ブログ」このブログの下にリンクに続いています(下位から上位にシリーズが進んでいきます)。みなさんが全部読めば、良い提案ができ、良い提案書が書ける営業に前進できます。

また具体的な提供サービスの進め方は、「営業・マーケティング7つのやり方 サービス基本ガイド」をダウンロードいただければ、詳しく記載されています。

「提案営業」になれるよう本記事と資料から習得し、実際の案件から学び、成長していきましょう。

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