第4章 営業・マーケティングのやり方(新規営業・訪問編)

インサイドセールスは内製化がよいのか? アウトソーシングがいいのか?その違いとやり方を紹介 

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コロナ禍で顧客に会える機会が減ってきて、「インサイドセールスを社員で内製化しよう!」という取り組みが増えてきている。しかし多くの企業が失敗している。それはなぜだろう?インサイドセールスを構築するためには、内製化とアウトソーシングの両面で考えていかなければならないからだ。その違いと意味について考察してみた。インサイドセールスのやり方についても解説したい。

インサイドセールスの内製化の意味
アウトソーシングとの違いとは?

 インサイドセールスが滞留するリード顧客を育成してくれるメリットは前ブログで理解できた。ナーチャリングメール(シナリオが組まれたメールでフォローする手法)だけでは、関係構築までのフォローはできないであろう。ではインサイドセールスチームを社員でやってみよう!と思った皆さんは、ここで一度考えてみてほしい。インサイドセールスは社員で内製化するのがよいのだろうか、それとも委託先にアウトソーシングするべきなのだろうか?その違いとは何なの???

 インサイドセールスがどのような活動をするのかは、前ブログで述べた通りだ。すごくできる社員をインサイドセールス担当として1名か2名で任せられるのなら属人的にやればいいが、組織に長期視点でインサイドセールスチームとして機能させたいのであれば、属人的なやり方ではダメだ。そのためにはインサイドセールス活動を組織で標準化するフローづくりが必要なのだが、正直これはかなり大変な作業だ。もう少し深堀りして説明すると、インサイドセールス実現のためには、どんな作業が必要になってくるのであろう?

インサイドセールスを内製化するためのポイント

 インサイドセールスの様々なシーンのトークスクリプトやヒアリング項目設定やQ&A集を、設計し用意しなければならない。「情報提供のためのトークスクリプト集」ぐらいであれば簡単だが、「仲良くなれて信頼されるトークスクリプト集」をチームで展開しようとするとかなり細かくなるし、教育も必要になってくる。営業・マーケティング施策の理解も必要なため、プロモーションスケジュールの把握からイベントやセミナー情報連携のための教育も必要だ。インサイドセールス自身の日・週・月・四半期のスケジューリングも考え、そのインサイドセールスをマネジメントする管理職も必要になる。このようにインサイドセールスを内製化しようとすると、大変な設計・運営作業が必要になってくる。

 そして最も大変なインサイドセールスチームの設計・運営ポイントは、「メールと電話をするインサイドセールスのモチベーション維持と心身のケア」である。後に詳しく説明するが人間は「視覚」「聴覚」「触覚」の3つ感覚を持っている。インサイドセールスはずっとメールや電話でリード顧客との接点を行っていく。メールよりも電話をかける作業が圧倒的に多い。リード顧客とは顔は会わさず、電話だけで勝負していく。3つの感覚の「触覚」だけで毎日過ごしていくため、かなりのストレスが発生するのだ。

 1日に5本程度の電話ならまだストレスを感じない。これなら営業がやっているフォロー電話と同じレベルだ。しかしインサイドセールは1日に30本~50本ほどの電話をかける電話件数目標が必要になってくる。質の前に量が必要な仕事だからだ。このような電話営業を毎日、1週間、1ケ月、1年と続けていけるモチベーションを個人で保てる社員はいるだろうか?マネージャーがフォローして組織で心身のケアができるだろうか?インサイドセールスの電話営業はそれほど過酷な作業なのである。 

 ただ「柔らかいインサイドセールス」を社員で内製化することならできる。イメージはこうだ。ショットメールを中心にひたすらメールを打っていくインサイドセールスで、電話は必要であれば1日5件までにするという感じの設計・運営だ。これなら社員でもできるかもしれない。しかし滞留するリード顧客を、HOT顧客にたくさん導いていく成果は期待できないし、柔らかいインサイドセールスを1名専任で置くコストが合うかどうかも微妙だ。そのうちマーケティング部作業が忙しくなり、インサイドセールス1名専任だったのにマーケティング部を手伝うことが増えて、インサイドセールス活動は崩壊してしまうだろう。 インサイドセールスチームをもし内製化するならば、先述したような設計・運営でメールと電話を中心に担当は2名、リード顧客に電話するのは10件/日までで活動をしていくのが限界ではないだろうか。それではインサイドセールスと呼べないし、大きな成果が期待できない。

インサイドセールスをアウトソーシングするためのポイント

 モチベーション維持と心身のケアから内製化を考えてみて、社員でやるのはちょっと厳しいのでアウトソーシングの方がいいな・・と思ってきたかもしれない。私もそう思う。ここで考えてみてほしいことが冒頭に問題提起した、インサイドセールスチームを構築するならば社員で内製化するのか、委託先にアウトソーシングするのかということの選択だ。

 ここで少し視点を変えてみよう。作業面で考えてみてほしい。みなさんは営業部やマーケティング部全体をアウトソーシングすることはしないであろう。けれど営業・マーケティングチームの「分業できる作業」を委託先にアウトソーシングすることはあるはずだ。例えば営業部なら人脈のあるベテラン営業を顧問営業として入ってもらい、知っている顧客を紹介してもらうことはある。マーケティング部ならWEB制作会社にホームページの改修作業をアウトソーシングしていることもある。役割と責任が明確な作業は、営業・マーケティングチームとして分業しやすので委託先にアウトソーシングできるかもしれない。

 インサイドセールスは内製化か?アウトソーシングか?の私の答えはアウトソーシングするべきだと思う。社員や営業・マーケティングメンバーにこのような過酷な仕事をさせたくないことが一番理由だ。もし社員で内製化したとしても「こんな仕事、ずっと続ける仕事ではない」と思い悩み、やめてしまう人が増えるだろう。インサイドセールスの内製化はせいぜい社員の営業に1日数件の電話営業をさせることが限界ではないだろうか。

 ではアウトソーシング先の人なら、インサイドセイドセールスのような過酷な仕事、電話営業を毎日、毎月させてもいいのか?という議論になる。それはその通りだ。他の会社の社員なら過酷な仕事をさせてもかまわない!と言っているようなものだ。けれど大事なポイントは、社員はインサイドセールスのための集まった組織ではないが、アウトソーシング先はインサイドセールスを実行するために集まった専門集団だということを考えてみてほしい。

 アウトソーシング先のインサイドセールスの人も過酷な仕事であることは間違いない。だが人間には電話営業が好きで得意な人もいる。インサイドセールスのモチベーションを上げて保てるテクニックを持っているマネージャーもいる。インサイドセールスの電話仕事の量をコントロールするために、インサイドセールスを複数の社員でローテションさせ、毎日ではなく1ケ月のうち数日だけ行うようにできることができる。アウトソーシング先はこのような専門集団だからこそ実現できるノウハウを持っている。だからインサイドセールス専門のアウトソーシング先に委託することはお互いメリットもあり、継続できる成果が期待できるのだ。

アウトソーシング先に委託するやり方がある 

 インサイドセールスをアウトソーシング先に委託することは非常に簡単だ。自社製品・サービスの特長やリード顧客に対して、提供したい製品・サービスの情報を理解してもらえれば、大変なインサイドセールスの設計作業は慣れたものですぐに完成させてくれる。そして実際の運営者を決めてくれ、すぐに開始できる。

 設計費用は〇〇万、インサイドセールス要員は〇〇万~〇〇〇万/月×人数分という費用感だ。コストは安くはないかもしれないが、これだけ過酷なインサイドセールスの運営ノウハウを持っていて、ずっと継続してくれることは大きなメリットだ。チームを立ち上げるまでスピードもお金で買うべきと思えばいい。

 そして当初の課題解決のための滞留するリードを育成してくれ、HOTリードにして営業に渡してくれる件数が大幅に増えれば、安いものかもしれない。私はド新規のリストからのインサイドセールスは優良なアポは期待できないと思っている。成果がアポのためのアポになってしまいがちだからだ。しかしすでに存在するリスト、つまり自社MAのリード顧客を育成するインサイドセールスをアウトソーシングすることは成果が期待できると信じている。

アウトソーシングするデメリットとは?

 しかしインサイドセールスをアウトソーシングすることは2つだけデメリットがある。まずインサイドセールスの設計や運営のノウハウは社内に溜まらないことだ。アウトソーシングした大変な設計・運営作業の基本がわからず、社員に切り替えようと思ってもかなり難しい。よってアウトソーシングを続けるしかないのだ。委託しているから仕方がないことだし、そこは割り切らないといけないかもしれない。

 またインサイドセールスと営業でよくある問題として、アポを取ったリード顧客に対し「こんな内容で商談に行かせるな。大事な時間が無駄になった」と、もめることがある。インサイドセールスはHOTリードとしてアポを取ったのに、営業が行くとそうではなかったというケース、アポの質の問題だ。しかし本当はHOTリードだったのに営業の初回訪問が下手だったのかもしれない。

 このようなケースはインサイドセールスと営業ではよくあることだ。社員同士であればお互いに譲り合いの精神や相互尊重の想いがあれば、改善してアポの質を上げていきやすいと思う。社員同士なので話し合いによる改善はしやすいのだ。ではアウトソーシングではどうだろうか?もちろんアポの質で問題なった場合はアウトソーシング先が改善はしてくれるものの、マーケティング部とアウトソーシング先との改善作業となるケースは多くないだろうか。文句は営業側から出るが、改善打ち合わせには営業が出席しないのだ。そして繰返しダメなアポが営業に継続されてしまったら、営業部側が「もう、こんなアウトソーシング先はやめろ」となってしまう。質の改善のためのコミュニケーションがうまくいかないことが、2つ目のデメリットだ。

 2つ目のデメリットはアウトソーシング先の配慮や努力で改善できると思う。営業とマーケティングチームの社員同士のようなコミュニケーションを、アウトソーシング先と取り、関係構築を深めていこう。大事なことは顧客に向けての関係づくりなのだから。

まとめ

 アウトソーシング先に対し、インサイドセールスの役割と目的「長期的な視点で見込みを作り上げ、関係作りに徹して、売り込みをしない」ことを伝えれば、しっかり実行してくれる。けれど活動の実績数字を把握できる方法を先に決めておかないと、発注側がアポ件数ばかりを成果として捉えてしまいがちになり、当初の目的を忘れてしまうことになる。ここでも表計算ソフトの利用ではなく、MAやSFAで項目設定し成果を共有していってほしい。

 インサイドセールスチームを構築するならば、2つやり方があると考える。1つ目は「インサイドセールスの内製化を社員だけで実行する方法」だ。MQLやスコアリングMQLになるまで資料ダウンロードやナーチャリングメール主体で待ち、質の高いリードだけに電話をかける、柔らかいインサイドセールスチームで運営するやり方だ。この方法を実現するためには、インバウンドマーケティングを製品ページからしっかり構築する必要がある。

 2つ目は、滞留するリードに対して、電話で大量に育成してくれるインサイドセールスのアウトソーシング型だ。この場合、「量はアウトソーシング先、質は社員(内製化)」で構築することを忘れないでほしい。情報収集できたリードで、質の良いリードには社員でインサイドセールスができる体制は作っておき、インサイドセールスのアウトソーシング先と社員の連携で内製化の実現を狙ってみよう。

 皆さんの会社にあった方を選ぶべきだが、インバウンドマーケティングが軌道に乗り、製品ページのセッションが増えリードが増えてきたら、インサイドセールスのアウトソーシング化は避けては通れない道だと思う。さあ、準備、企画、新規開拓活動をしてきてリードも増えて、アポが取れた!ここからは営業がどのように商談を進めていけばいいかについて話していきたい。マーケティング部のみなさんの仕事はいったんここまでだ。お疲れ様!ここからは営業に任せよう。次回からは営業の初回訪問(Web商談も含む)について、説明していきたい。

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