インバウンドマーケティングでリードがたくさん取れてくると、ナーチャリングメールを送り育成していくが、なかなか問合せにならない。Webセミナー(ウェビナー)に集客しても参加しない。つまり滞留するリードが増えてくるのだ。滞留リードに有効的なやり方がインサイドセールスだ。インサイドセールスはどのように組織で構築し、実践していけばいいのだろう?
目次
インサイドセールスとは?
インバウンドマーケティングの実践によりMQL(マーケティング・クオリファイド・リード)やスコアリングMQLのステージは確実に増えるが、もっと増えるのは資料ダウンロードをするリードだ。リードをMQLにするためには、ナーチャリングメールで待つことは常套手段だ。しかし増え続けるリードに対し、ナーチャリングメールのシナリオが終了後、何もしなければ、リードは滞留するばかりだ。つまりナーチャリングメール以外に自社からアクションを起こしHOTリード、又はMQLに育成していく作業が必要になる。
この作業を担当するのがインサイドセールスチームだ。 インサイドセールスとは一言で表現すると内勤営業のことだ。前ブログで話した、アポを取るまでの2つのやり方を実践することが主な役割である(ぜひ前ブログを後程、見てほしい)。まずインサイドセールスに関してよく聞かれる質問を整理しておきたい。
インサイドセールスは「マーケティングなのか」「営業なのか」
一番多い質問は、インサイドセールスは「マーケティングなのか」「営業なのか」という点についてだ。私の意見はインサイドセールスとは組織上はマーケティング部に属すが、営業の精神と要素を持ったマーケッターでないと務まらないと思っている。インサイドセールスはメールだけでなく電話もたくさん行う。しかもそれは毎日だ。
製品ページを通じて自社に接触してくれた顧客とはいえ電話をしてみると「資料をダウンロードしたかっただけだから、もう電話してこないでほしい」とガチャギリさせることもよくある。このような少し気持ちの萎えるシーンもたくさんありながら、「関係構築を醸成する」「リード顧客を育成する」という作業を完遂していくには営業の精神と要素がないと難しいだろう。
しかし、組織上はマーケティング部が良い。内勤営業なので訪問はせず、ましてや商談のクロージングをすることもない。新規開拓活動が主な仕事で、マーケティング部が集めてきたリードに対し、ナーチャリングメールや電話活動がメイン作業なので、マーケティング部との連携シーンが多いことも理由だ。育成中の顧客に対して、抱える課題や顧客の組織内情報(人や利用しているシステムなど)を聞いたり、MA(マーケティング・オートメーション)やSFAのテータベースに履歴を残していく情報収集管理の役割もあることから、組織はマーケティング部が望ましいと思う。しかし「営業の精神と要素を持ったマーケッター」なかなか社内にはいない。
インサイドセールスの2つの役割と目的とは?
インサイドセールスのアポ取るための2つのやり方から説明してきたが、インサイドセールスの役割と目的を2つご紹介しておこう。インサイドセールス憲章みたいなものだが、成功するためには非常に重要なポイントであるので理解してほしい。
【インサイドセールスの役割と目的】
1)長期的な視点で見込みを作り上げる
営業はアポや商談に対し見極めて、刈り取ることが仕事だ。つまり短期的な視点で商談をまわしていく。これは予算を達成するために当たり前のサイクルと言えるであろう。「ダメなら次へ」「今の顧客へ」に向かっていくことは営業の本能のような行動である。営業はリアルに情報収集ができるので商談後の良いタイミングでフォローをするかもしれないが、営業がリード顧客に1本電話をしてアポを断られたぐらいならおそらくフォローしないだろう。
このようなリード顧客に対しインサイドセールスは長期的な視点でフォローし、見込みを作り上げることが求められる。営業の「ダメなら次へ」「今の顧客へ」ではなく、「ダメならどんな情報が必要か」「今でなければいつなら話を聞いてくれるか」の心構えで1年後や2年後を見据えて見込みを作り上げる作業と意識がインサイドセールスには必要なのだ。
滞留する大量のリードに対しMAから顧客をトラッキングして検討状況を把握し、適切なタイミングだと感じ電話をしても、まだまだ本格検討は先の場合が多い。「今月のHOTリードのアポを営業に〇〇件出す」という目標にせず、リード顧客がマーケティングステージをどのように進捗していったか、どれぐらいの有益な顧客情報を集められたか(例:BANT 予算、決裁者、ニーズ、タイミング)を長期目標として活動をしてほしい。
長期視点の見込みを作り上げるためには、営業から戻ってくるMQLのフロー設計が必要だ。意外にこのフローができていない企業が多い。MQLからアポを取り営業に渡して、その後のフォローは営業任せにしている個人依存型MQLのことだ。
トップセールスはダメになった商談を適切な時期にフォローできるかもしれないが、誰にでもできるわけでない。初回訪問をしてダメだった商談はMAとSFAを連携させて、インサイドセールスに戻し「MQL戻りランクA、ランクB」のように管理をしていこう。営業から戻ってくるMQLは、営業がリアルに会い、更に情報収集してくれていることでリードの質も上がっているはずだ。ここは営業とインサイドセールスがガッチリ連携し、仕切り直しのシナリオでナーチャリングをして新しい、HOTリードとして営業に渡せるようにしたい。
【インサイドセールスの役割と目的】
(2)関係作りに徹して、売り込みをしない
関係作りに徹して、売り込みをしないということはインサイドセールスの役割として需要なポイントだ。関係作りとはとにかく仲良くなること、顧客に名前を覚えてもらうことだ。ところがインサイドセールスは内勤営業のためリアルに顧客と会うことはできない。メールの文章か、顔の見えない同士の電話でしか、関係作りの手段はない。リアルに商談で会う営業よりも、インサイドセールスはかなり難易度が高い関係づくりのスキルが求められるのだ。
しかも「一度会って話したい」と言っている顧客ではなく、「製品ページに何度か訪れてくれて資料をダウンロードした程度」のリード顧客に対して電話でアポを取り、会おうと言うのである。このような顧客にメールと電話で仲良くなれて信頼を築くことはできるのだろうか?
そのために重要なことは、まず売り込まないという姿勢を貫くことだ。あくまで製品ページに何度か訪れてくれて資料をダウンロードした「あなただけにより詳しい情報をもっと提供しますよ」、という奉仕の姿勢から始めてみることがポイントだ。
まずメールで「情報提供の電話をしてもいいですか?」とお断わりをした上で電話を差し上げ、もし電話に出てくれたら有益な情報を提供することに徹し、「また何かありましたら何でも相談のメールをください」と電話を切る。ここから始まることがインサイドセールスの流儀であろう。
関係を決めるのは顧客である。製品・サービスを選ぶのも顧客であるという気持ちを忘れないで対応してほしい。情報提供ではなく、情報を聞く!ヒアリングをしたい!という押せ押せの姿勢ではなく、リード顧客が困っていることを聞いてあげるという親切な姿勢で対応をしてほしい。インサイドセールスの姿勢や気持ちが届くと顧客は口を開き、いろんな悩みを話してくれるだろう。顧客とこのようなやり取りを何度か重ねることができれば、徐々に名前を覚えてもらい、信頼関係につながっていく。
インサイドセールスというリアルに訪問できない難しい立場で、顧客との関係との作り上げるためには、謙虚な姿勢で臨むことが大事だ。そうすればそのうちに「実際に営業と会って話をしてみたい」というチャンスが必ず出てくる。長期視点で関係作りをして、売り込みは控えながらMQLに作り上げてほしい。
インサイドセールスの関係作りは「会社名と顧客」
一般的にインサイドセールスは担当顧客や担当エリアは持たない。複数のインサイドセールスで組織的に行う場合でもMAで検討状況を把握し、SFAでメールと電話対応履歴が共有されていれば、誰がどこに電話してもいいはずだ。
「いつも電話してくれる山本さんにしか話さない!」というリード顧客もいるかもしれないが、メールや電話対応というものは意外に別の担当:中村さんが電話しても、顧客は山本さんという名前よりも、製品・サービス名や会社名の方を覚えているものだ。「先日、こちらの悩みを聞いてくれた中村さんね」という有難い勘違いで電話に出てくれるかもしれないし、接触履歴も共有できていることからインサイドセールスは誰でも同じ状態から話しやすい。
逆に担当をつけてしまうと関係作りが下手なインサイドセールスが、ずっとリード顧客を進捗させられないこともあるので、いろんなインサイドセールス担当から、会社名をアピールし顧客に情報提供をした方がいい。関係づくりをするのは個人と顧客ではなく、会社名と顧客で築き上げていくことがインサイドセールスなのだ。ここが営業との関係づくりとは大きく違う点だ。
インサイドセールスは担当を持たずフリーで対応をしていいといいながら1点だけ気をつけてほしいパターンがある。それは顧客セグメント:ABM(アカウント・ベースド。マーケティング)を設定して、ナーチャリング(育成)する場合だ。ABMとは取引を大きく伸ばしていきたいAランク顧客や、成長性のある次のAランク候補のBランク顧客をセグメント化してアプローチする手法のことだ。つまり営業部と顧客との関係や取引状況、オススメしたい製品・サービスの情報を把握しておかなければならないのでABMでインサイドセールスを実行する場合は、インサイドセールスを担当制にした方がいい。
インサイドセールスの評価方法とは?
インサイドセールスには評価方法を検討しなければならない。インサイドセールスの目的である「(1)長期的な視点で見込みを作り上げる」ことを評価項目に置くならば、MAやSFAでその評価項目をレポートできるように入力方法や項目設定から考えなければならない。
「(2)関係作りに徹して、売り込みをしない」を評価するならば、どのように顧客と仲良くなって信頼をもらえたか?を評価項目にしなければならない。しかしリード顧客にアンケートを出すわけにもいかず、アポを渡した営業から評価してもらうことも大変だし、電話件数が絶対評価指数でもないし、なかなか評価が大変なのだ。
インサイドセールス個人の職位をAランク、Bランクに分け、2段階で顧客にアプローチしているベンダーもある。アポが近い状態のリードには、Aランクのインサイドセールスを担当させ、まだまだ情報収集や学びの状態のリードには、Bランクのインサイドセールスを担当させるのだ。Aランク・Bランクの評価項目を設定し、インサイドセールスB→A→営業へ昇格をさせていく。
インサイドセールスの最終的な目標は優良なHOTリードのアポを取ることだが、やり方や目的はいくつか存在するので企業にあったインサイドセールスの評価方法を検討してみよう。これでインサイドセールスのやり方や目的、注意するポイントが理解いただけたと思う。それではインサイドセールスは社員で内製化するのがよいのか、それとも委託先にアウトソーシングするのではどちらがいいのだろう?
インサイドセールスの内製化のやり方
テレワークで営業が外出できなくなると、「営業チームでインサイドセールスを内製化しよう!」と言い出す上司はいないだろうか。営業を有効的に効率よく活動させるために、上司が考える正攻法と言えるが、ちょっと待ってほしい。「営業が電話する」ことはできるが「営業が毎日たくさんの新規電話をする」ということはかなり大変な作業だし、精神的にもキツい。営業が実際に新規電話をしているのかのチェックも必要だし、アポイントが欲しい営業はテレアポ部隊になってしまい、うまくいかないことも多い。
そこでいきなり内製化するのではなく、まずはインサイドセールスをアウトそこでーシングしてから、営業で内製化すると非常にうまくいくやり方がある。
次のブログでインサイドセールスの内製化のやり方について、詳しく説明していきたい。