更新日:2024年7月18日
MEDDPICCという言葉が外資系企業から広がり、営業現場に登場しています。この意味や読み方は何なのでしょう? またMEDDICやMEDDICCというものもありますが、違いはあるのでしょうか。そこでMEDDPICCを徹底解説し、外資系の営業で広がる理由をご紹介していきます。MEDDPICCとBANTの違い、組織で‘フレームワークと手法’の活用範囲のポイントが見えてきました。
MEDDPICCとは? 読み方と意味を解説
MEDDPICCというあまり聞きなれない言葉を耳にするようになりました。アルファベットが8個もあり、読み方もよくわかりません。MEDDPICCの読み方は、アルファベットのアタマを取って「メディピック」と読みます。
MEDDPICCとはMetrics、Economic Buyer、Decision Criteria、Decision Process、Decision Process、Paper Process、Identify Pain、Champion、Competitionの6つの要素から構成されます。営業で活用されるチェックリストであり、販売や提案を組織で円滑に進めるためのフレームワークのことです。ではEDDPICCの具体的な意味を、例を添えて解説いたします。
【MEDDPICC(メディピック)】
Metrics 指標・メトリクス
ビジネスの指標に関する質問や提案項目を決めること。
例 直近3年間の業績目標、成長率、外的要因と内的要因の排除、適正な受注単価や数量を質問できているか?提案するソリューションで解決できる気づきを見込み顧客に与えられているか?
Economic Buyer 決裁権限者
エコノミックバイヤー・メインのステークホルダー・意思決定者を把握できていること。
例 複数登場する主要な決裁者や購買担当者に適切にアプローチできているか?
Decision Criteria 意思決定基準
案件受注に向けた、顧客の意思決定に重要なポイントを理解できていること。
例 案件受注の意思決定には何が重要なポイントなのか?それは提案内容を重視、あるべき姿の達成すること、投資対効果、コスト優先、提案企業の将来性なのか?
Decision Process 意思決定プロセス
案件受注に向けた、顧客の意思決定の進め方が理解できていること。
例 案件受注の意思決定はどのように実施されるのか?それは検討プロジェクトチームの意思、経営メンバーの意思、購買部門が決裁するのか?
Paper Process ペーパープロセス
NDA(機密保持契約書)、セキュリティチェック、契約書・法律関連のこと。
例 正式受注に必要な、NDA、セキュリティポリシーのチェック、契約関連の種類や手続きは、どのようなタイミングでどのように進めるのか
Identify Pain 痛みを特定する
見込み顧客のビジネス面の痛みを特定するということ。
例 原材料費の向上によるコスト高、人手不足による生産性の低下、市場変化による売上やシェア低下、リスクを特定できているか?
Champion 擁護者
最終意思決定者でなくとも、影響力があって、見方になってくれる人のこと。
例 この人がOKであれば、ほぼ有力先として進めてくれる、提案をしている営業や企業を推進してくれる人がいるか、自社の見方がいるか?
Competition コンペティション
最終検討プロセスに向けた、競合先を把握できていること。
例 必ず存在する競合他社を把握し、用意された競合対策を意思決定者に伝えられているか?
このような6つの要素から構成されるものがMEDDPICC(メディピック)なのです。初めて聞いた方も多いと思いますが、非常に細かい構成で見込み顧客や案件・提案内容を見ていますよね。MEDDPICCはこの6つの要素をチェックリスト化し、営業に把握させます。そして組織で支援するためにフレームワークとして活用します。
しかし、MEDDICやMEDDICCと呼ばれる営業フレームワークもあるようです。こちらとの違いも少し整理してみましょう。
MEDDIC、MEDDICC、MEDDPICCの違い
MEDDIC(メディック)は1990年代にアメリカのPTC社が作った営業フレームワークです。MEDDICが元祖であり、MEDDICCやMEDDPICCはMEDDICの進化版と言えるでしょう。MEDDICがベースになっているので、MEDDICCやMEDDPICに大きな意味に違いはなく、進化してきたところ以外に基本的に同じです。MEDDPICCから説明した項目の意味も同じであり、詳しくは次のようになります。
MEDDIC
Metrics 指標・メトリクス
Economic Buyer 決裁権限者
Decision Criteria 意思決定基準
Decision Process 意思決定プロセス
Identify Pain 痛みを特定する
Champion 擁護者
MEDDICC
Metrics 指標・メトリクス
Economic Buyer 決裁権限者
Decision Criteria 意思決定基準
Decision Process 意思決定プロセス
Identify Pain 痛みを特定する
Champion 擁護者
Competition コンペティション
MEDDICがベースになり長年、活用されてきましたが、競合他社(Competition)が増えるようになった2000年代以降にMEDDICCのさいごの「C」が追加されたのでしょう。競合先の研究や対策に力をいれるアメリカらしい発想と言えます。
そして2010年以降は企業のコンプライアンスが強化され、内部統制が厳しくなっていきます。受注するためには提案の前半にNDA(機密保持契約書)締結やセキュリティポリシーチェックを受けなければなりません。提案の後半には複雑な基本契約書を締結するためのリーガルチェックも必要になります。
そこで追加されたのがMEDDPICC(メディピック)の「P」です。契約をさいごのさいごに締結するのは昔の話です。NDAを始めとする契約プロセスが複雑化している中、Pは早めに意識してMEDDPICCのPの位置に入ったのしょう。案件をすすめていくために必要なポイントを抑えていく、契約社会のアメリカらしさが出ていますね。合理的な考え方だと思います。
ここで日本にはBANT(バント)と呼ばれる営業手法があります。MEDDPICCとBANTの違いとはどのようなものなのでしょうか?
MEDDPICCとBANTの違い フレームワークと手法の活用
BANT(バント)とは営業がヒアリングして確認するべき情報収集項目として、日本では長く使用されています。BANTも生まれはアメリカですが、日本にはなじみの深い営業手法です。BANTのそれぞれの意味は次の通りです。
- B Budget(バシェット) 予算のこと
- A Authority(オーソリティ) 決裁者のこと
- N Needs(ニーズ) ニーズとは、課題、要求、必要性のこと
- T Timing(タイミング) タイミングとは、期間や時期のこと
予算、決裁者、ニーズ、タイミングの情報収集をしっかりやって、案件を進めていこう!という考え方がBANTなのです。ではMEDDPICCとBANTの違いとは何なのでしょうか?
MEDDPICCとBANTの違いは、フレームワークと手法と言えます。手法とは、営業のやり方のことです。BANTは情報収集項目として、見込み顧客を担当している営業とマネージャーの間で活用されます。つまり情報収集するべき項目は最低限抑えておいて、案件の進め方は営業とマネージャーで相談していこう!という考え方なのです。
BANTという手法は素晴らしいので、営業現場でぜひ活用してください。しかし、情報収集項目を抑えて、案件を進捗させていくという手法(=やり方)ですので、比較的簡単な案件型のソリューション営業、ルートセールスの一部に合っていると言えます。
一方、MEDDPICCはチェックリストや販売・提案のための営業フレームワークです。フレームワークとは、売上を向上させるための組織で共通する枠組みのことです。営業とマネージャーだけではなく、組織全体で使うのがMEDDPICCの特徴です。
特に外資系企業では見込み顧客を担当する営業をサポートするために、案件中心に多くの支援メンバーが関与します。営業を技術支援するプレサポート部門、製品を開発している技術部門、現場に導入する法務コンプライアンス担当部門、地域・エリア担当部門、マーケティング部門、R&D研究開発部門など、多くのグローバル部門が案件を受注するためのプロジェクト化するのです。
その時に案件を支援するために必要な「M 指標・メトリクス」「E 決裁権限者」「D 意思決定基準」「D 意思決定プロセス」「I 痛みを特定する」「C 擁護者」「Competition 競合先」を把握していかなければなりません。つまり見込み顧客に伝わっていて、どういう状況で、どのように自社を見てくれているのかがわかっていなければならないのです。MEDDPICCができていないと、グローバル部門は営業支援のしようがなく、支援もしてもらえないとも言えなくなります。
例えば、IT企業であれば、製品開発の技術部門は日本にはなく、本国にあるケースがほとんどです。技術部門に支援してもらえない営業は裸同然であり、見込み顧客からの信頼は勝ち取れません。グローバルで支援してもらうためのフレームワークでもありますが、MEDDPICCの内容の質を高めていくと、受注率も向上していくと外資系の営業は言っています。BANTのような情報取集項目ではなく、MEDDPICC提案内容を高め、見込み顧客をもっと知ることができる、組織で使える大きな武器なのです。
このようにMEDDPICC組織で共通する枠組み、つまり組織全体で使う営業フレームワークになっていなければなりません。複雑な案件型のソリューション営業やアカウント営業、B2Bエンタープライズセールスに向いている方法論だと言えます。案件単価が高く、規模の大きな案件タイプにピッタリなのがMEDDPICCなのでしょう。
アメリカでは「政治で決まりました」「浪花節や義理人情を優先します」という発注理由は存在しません。見込み顧客も提案する企業も、企業価値を高められる提案を合理的に採用していきます。アメリカらしい合理的な考え方から生まれたフレームワークがMEDDPICCですね。
これからの日本の企業にももちろん使える考え方であり、営業組織や企業全体へMEDDPICCの導入は増えていくことでしょう。MEDDPICCが外資系営業で活用が広がる理由は、このようなポイントだったのです。
まとめ
「MEDDPICC(メディピック)とは?外資系の営業フレームワークとして広がる理由」と題して、ご紹介してまいりました。MEDDPICCの意味や「メディピック」という読み方を、日本の営業現場でも覚えていきましょう。MEDDICがベースになり、MEDDICCからMEDDPICCへ進化していった歴史やその違いもわかったと思います。
日本の企業はMEDDPICCとBANTの違い、つまりフレームワークと手法の活用範囲が大きく異なることを理解し、MEDDPICCを採用していきましょう。
MEDDPICCは単なる情報収集項目ではなく、案件を提案する、進捗させるというプロセスもサポートしてくれます。そして見込み顧客にMEDDPICCのいくつかの内容が伝わって、自社をどのように見てくれているかを把握するツールでもあるのです。
MEDDPICCは情報収集だけでなく、プロセスや組織支援、両社の価値を高めていくための、営業フレームワークです。使いたくなりますね。弊社でも案件規模が大きい、エンタープライズB2B企業にMEDDPICC導入を提案していきたいと思います。MEDDPICCはこれから広がっていくと確信しています。
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