営業マネジメント

ニーズあります!って顧客ニーズをちゃんと説明できますか?

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うちの営業がミーティングで「この顧客、ニーズあります!」と言いました。上司である私が「顧客ニーズをちゃんと説明できる?」と聞くと、「課題解決できるからです」と言いました。そして、さらに聞いていくと結局、課題を把握していませんでした・・(泣)。そこで私は顧客ニーズの勉強会をすることにしました。

多くの営業がニーズの意味を勘違いしているようです。そこで勉強会で説明したビジネスの顧客ニーズの定義と、顧客ニーズを把握する方法や応じるための解決策をみなさんにも共有いたします。顧客ニーズがわからないと製品・サービス・商品は企画できませんし、売れません。一緒に学んでいきましょう!

数多くの営業がニーズを勘違いしています

営業が商談化や案件化した見込み報告をする際に「この顧客はニーズがありますね」「この商談はニーズが高いです」「この案件のニーズはうちに製品にマッチしています」と言ったことはないでしょうか?営業ミーティングでよく聞く報告コメントです。

この報告時の「ニーズ」に対し、上司である私は「そのニーズってどんな内容なの?」と聞いたことがあります。すると営業は「鈴木部長、うちの製品・サービスに合っているんですよ」と答えました。

更に私は聞きました。「うちの製品・サービスに合っていることが顧客のニーズと言えるの?」すると営業は「うちの製品・サービスで課題解決できることが顧客ニーズに合っているということです」と切り返してきました。

営業の言っていることをまとめると、顧客が抱えている課題を製品・サービスで解決できることがニーズであり、顧客ニーズに合っていると思っているようでした。これは完全に顧客ニーズを勘違いしています。そして私は「ニーズありますって言うけど、顧客ニーズをちゃんと説明できる?」と聞くと、さいごに営業は答えられなかったのです・・。

自社の製品・サービスに合っていることがニーズで、顧客の課題解決できることが顧客ニーズではありません。それは「自社の製品・サービスを提案できる」という意味です。課題は顧客ニーズのひとつですが、そんな簡単に課題が把握できるわけではありません。

これは上司である私の責任です。私はさっそく、営業メンバーに顧客ニーズの勉強会を開催しました。

ビジネスの顧客ニーズとは?

「ニーズありますね」という言葉はビジネス用語の定番です。「合ってますね。マッチしてますね」という意味で使うのは理解できますが、ニーズとはどんな意味なのでしょう?ニーズを日本語に略すると「需要・必要・要求」となります。

「ニーズありますね」を日本語の文章にすると、「需要はありますね」「必要性がありますね」という意味になります。これはこれでニュアンスとしての使い方は間違っていません。しかし、顧客ニーズとなると、こんな浅いレベルの話ではありません。

顧客ニーズとはどのようなものなのでしょうか? みなさんのビジネスモデルや製品・サービスによって顧客ニーズの深さは変わってきます。BtoBやBtoCのモデルによりますし、製品・サービス・商品の単価や検討期間にもよりますし、顧客ニーズの深度はさまざまです。

顧客ニーズを最も大きく捉えるべき視点は「欲求」である、と私は部下たちに説明しました。顧客ニーズは欲求であり、ビジネスでの欲求とは「こんな効果を出したい」「こんな風になりたい」と心の中で思っている内容です。どんな企業でも事業と社員を成長させ、売上と利益を向上させ、企業価値を高めたいと常に考えています。

そのための欲求が顧客ニーズなのです。しかし、欲求は顧客の中でハッキリしているケースと、ハッキリしていないケースがあります。「このような姿になりたい!」と欲求が明確なケースと、「こんなことに困っていて、改善はしたいと考えているが改善方法や進め方がわからない」と欲求が不明確なケースはよくあります。

欲求がハッキリしているケースでも、まだまだ詰めなければならない部分は必ずあります。欲求がハッキリしていないケースがビジネスでは大半を占めますので、営業や技術が担当し、欲求を明確にさせなければなりません。

そのためには欲求を3つに分解します。それが「課題」「要求」「必要性」なのです。

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顧客ニーズを把握するために分解しよう

図1をご覧ください。顧客ニーズは欲求と言いました。欲求は明確でも明確でなくても、欲求を3つに分解して詳細を詰めていくとビジネスは進めやすくなります。その3つの分解が「課題」「要求」「必要性」です。

課題とは

現状の問題点や困っていることを聴き、整理したもの

要求とは

こんな風になりたいと思っていることを、あるべき姿にしたもの
(すでに要求する内容が決まっているケースもある)

必要性とは

経営戦略、制度対応、更新期限等の企業に求められるもの
(例:M&A、脱炭素経営、ERPシステム保守終了)

このような内容に‘顧客ニーズ=欲求’を細分化したものが、「課題」「要求」「必要性」になります。ここで図2をご覧ください。

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顧客には‘更新型’’義務型‘’業務改善型‘’イノベーション型‘の4つの購買パターンがあると言われています。ほとんど購買は、この4つをきっかけに始ります。この4つの購買パターンに顧客ニーズ=欲求を「課題」「要求」「必要性」を紐づけたものが、図2です。

「要求」「必要性」は顧客や環境が明確にしてくれているケースがあるのでわかりやすいでしょう。

例えば、IT業界であればハードやソフトの保守サポート期間が終了し、セキュリティの脆弱性対応のため、ウィンドウズサーバやパソコンを入れ替えなければならないケースが更新型です。

「今のパソコンでも十分問題はないが、入れ替えないといけないんだな・・」と社長がハンコを押してくれやすいのが更新型であり、営業としても楽な顧客ニーズです。これは必要性になります。正確には今のままでいいけど、入れ替えるしかない必要性というわけです。

インボイスや電子帳簿保存法対応、税制対応は義務型です。「国の法律への対応なので、義務としてやるしかありません」と担当者が決裁を取るケースは、どんな企業にもあるでしょう。この顧客ニーズは必要性もありますが、要求もあるはずです。なぜなら今回の義務型による必要性の投資から、「こんなシステムにしたい」という要求が存在するケースが多いからです。

業務改善型やイノベーション型は業務改善や経営改革の要求が中心となり、DXによる新しいビジネスモデルの創出などの必要性も背景にあるでしょう。

顧客ニーズを4つの購買プロセスにマッピングした時にすべてパターンに存在し、もっとも重要なのが「課題」です。「要求」「必要性」は明確なケースが多くても、企業で問題点が整理された状態の「課題」になっているケースは少ないです。

課題の状態にするには、コンサル会社が入り問題点をグルーピング・整理し、課題解決のためのアクションまで落とし込んでいるケースが多いでしょう。

すべてのテーマを課題にするためにはコストもかかりますので、毎回、コンサル会社が入るわけにはいきません。それこそビジネスモデルや製品・サービス・商品の特徴によっても課題のレベルも変わってきます。

しかし、4つの購買パターンの顧客ニーズ=欲求には、すべて「課題」が存在します。課題を把握するのが営業や技術の役割なのです。

顧客ニーズには提案で応えよう

‘更新型’’義務型‘’業務改善型‘’イノベーション型‘の4つの購買パターンに、「課題」はすべて存在します。課題とは現状の問題点や困っていることを聴き、整理された状態のものを指します。その課題を提案するために更にまとめたものが、課題整理です。

この課題整理は営業が中心になって実践するべきです。IT業界ではプレSE、製造業では技術営業と呼ばれる技術者が入らないと課題整理ができない場合もありますので、営業と技術が協力して実践するのも良いでしょう。

すでに要求する内容が決まっているケースは別として、こんな風になりたいと思っていることを、あるべき姿にするために一緒に描くことも営業や技術が中心になって実践します。

経営戦略、制度対応、更新期限等の企業に求められる必要性を、本当に今、企業に必要なのかを一緒に考える作業にも営業や技術が中心になって支援します。

みなさんのビジネスモデルや製品・サービス・商品によって、課題の深さやあるべき姿の設定、必要性の確認度合いは変わってきます。ここまでしなくていいケースもありますが、なぜ営業や技術が中心になって実践しなければならないのでしょう?

それは顧客ニーズを把握しなければ、提案できないからです。提案書を作成し、提案やプレゼンをするのは営業や技術メンバーです。営業や技術メンバーが中心になって顧客ニーズを把握し、提案に応じるスタイルが受注確率を上げてくれます。

逆に顧客ニーズを把握せず製品・サービス・商品を提案するのは、ただの押し売りです。これこそ冒頭に営業がいった「この案件のニーズはうちに製品にマッチしています」のレベルであり、これでは顧客に選ばれません。

顧客ニーズ=欲求の「課題」「要求」「必要性」を把握できてこそ、自社の製品・サービス・商品がマッチしているか知ることができます。ここではじめて製品・サービス・商品の提案ができるのです。そうすることで顧客ニーズにマッチした提案となり、顧客の期待に応えられるのではないでしょうか。

提案とは「案を提ずる」と書きます。顧客ニーズもわからないのに、自社の製品・サービス・商品を提ずるのは、顧客にとって最良の案ではありません。顧客ニーズ=欲求:「課題」「要求」「必要性」を把握してこそ、顧客の期待に応えられる提案ができることを忘れないでおきましょう。

なお、課題を把握するためには現状の問題点や困っていることを聴く力が必要になります。この聴き方や傾聴力は下記の記事に詳しく記載されていますので、ぜひご覧ください。

営業傾聴力と営業ヒアリングはどう違うの?課題整理をするための使い方

7つのやり方に売上向上のヒントが隠されている
営業・マーケティング 7つのやり方  サービス基本ガイド

まとめ

「ニーズありますって言うけど、顧客ニーズをちゃんと説明できますか?」で始まった、顧客ニーズの勉強会はこうして、終了しました。もっと以前から教えなかった上司である私の責任だと反省しました。営業も顧客ニーズを理解してくれたようで、その後、課題を把握する力と提案力は向上していきました。

顧客ニーズを把握 → 製品・サービス・商品を提案できる → 受注する

このような営業プロセスになることが基本ですが、逆の考え方もあると思っています。

受注するためには → 製品・サービス・商品を提案する → 顧客ニーズを把握する

営業は受注するために日々活動しています。どんな企業でも自社の製品・サービス・商品を売りたいものです。しかし自社の製品・サービス・商品を売るために顧客ニーズを把握しない「押し売り型」になってはいけません。

「うちの製品・サービス・商品が御社には合っていますね。ニーズがあります」と言いたければ、顧客ニーズを把握することから始めなければならないのです。

顧客ニーズ=欲求の「課題」「要求」「必要性」を把握して、「自社の製品・サービス・商品がマッチしている理由を提案で示していける営業スタイルを組織で構築しましょう。

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