受注確度やランクの定義はどのようにすれば実現できるのでしょうか?またランク・確度管理をすれば受注率が上がると言われていますが、本当にそうなのでしょうか?そこで、受注確度と受注ランクの違いと、営業の活動管理と情報収集とランクの関係性を解説いたします。受注確度の定義/基準例はABCランク管理でご紹介します。本記事を読めば、実践的なランクの定義と組織で受注確度管理が実行できる方法がわかります。
目次
受注確度と受注ランクの違いとは?
営業の案件管理で受注確度と受注ランクという言葉が出てきますが、それぞれどのような意味なのでしょうか?受注確度の意味とは、受注までの正確さの程度を表すことです。受注ランクの意味とは、受注までの正確さの具体的な状態を示すことです。
つまり、受注確度と受注ランクの言葉の意味には大きな違いはありません。受注確度が受注までの状態を大きな視点でとらえている言葉で、受注ランクは受注までの状態を、より具体的に定義された指標でとらえている言葉と言えるでしょう。よって本記事では、受注確度を管理していく大きな意味で受注確度管理、受注確度を見極めていく意味をランクと呼ぶこととします。
受注確度の基準を設け、管理すれば予算達成ができる
受注確度管理をすれば営業は成長し、営業マネジメントは強化でき、受注率は確実に上がります。このような良いことづくめの理由は、本記事をさいごまで読んでいただければわかると思います。まず触れたいテーマは最近、受注確度管理ができていない企業が多いことです。
「見積もりは出しました」
「今月には決めたいと見込み顧客は言っています」
「来月ぐらいには受注できるんじゃないですかね」
このように組織に受注確度管理が存在しない企業がいるのです。景気の良い時期はいいですが、市況が厳しい時期になると受注が減るだけでなく、企業も営業も成長しません。
なぜ受注確度を定義し管理をすれば受注率は上がり、営業が成長するのでしょう。理由は4つあります。
受注確度管理で受注率が上がる理由
- 営業が顧客と案件の見極めを正確にできるようになるから
- 営業が受注への責任感が強まるから
- 案件の状態を把握でき、見込みの精度が上がるから
- 組織で予算達成する意識が強まるから
このような理由で受注確度管理をすれば、受注率は確実に上がり、予算達成ができます。受注確度管理で受注率が上がる理由で記載した「見極め」「責任感」「予算達成のための精度と意識」の詳しい内容については、後半の記事を読んでいくとご理解いただけると思います。
「じゃあ、さっそく受注確度管理の方法を教えてほしい」「ランクを決めればいいの?」という声が聞こえてきそうですが、受注確度管理をするために、まず整理することがあります。それは営業の活動管理と情報収集項目の定義です。
営業の活動管理と情報収集との関係性
受注確度管理のためには、ランクを定義するだけではダメです。多くの営業現場でランクは定義できていても、営業の活動管理と情報収集項目が連携できていない組織はヤマのようにあります。
ランクの定義は後半の例文でご紹介しますが、ランクABCを決めるだけでは受注確度管理はできません。なぜなら、ランクだけだと客観的な情報だけでなく主観的な想いが入ってしまうからです。客観的にランクの定義をしようとしても、どうしても「今月には決めます」「今期中には決めたいです」という営業の主観的な想いは入ってしまいます。これは仕方がありません。
そこで客観的な状態や情報で判断できる材料が、営業の活動管理と情報収集項目になります。営業の活動は実際に行った商談の動きとなりますし、情報収集項目は見込み顧客から取得できた事実だからこそ、客観的な状態や情報と言えるのです。営業の活動管理と情報収集項目にはどのような例があるのでしょうか?
営業の情報収集項目を定義した例1 BANT(バント)
- B 予算 Budget(バシェット)の略
- A 決裁者 Authority(オーソリティ)の略
- N ニーズ、課題、要求、必要性 Needs(ニーズ)の略
- T タイミング、期間や時期 Timing(タイミング)の略
営業の情報収集項目を定義した例2 MEDDPICC(メディピック)
- M 指標・メトリクス Metricsの略
- E 決裁権限者 Economic Buyerの略
- D 意思決定基準 Decision Criteriの略
- D 意思決定プロセス Decision Processの略
- P ペーパープロセスPaper Processの略
- I 痛みを特定するIdentify Painの略
- C 擁護者 Championの略
- C コンペティションCompetitionの略
BANT(バント)は昔から情報収集項目としては有名ですが、決裁プロセスが複雑化している中、BANTだけでは情報収集は足らないと言われています。
そこで外資系企業から登場したのがMEDDPICC(メディピック)です。企業が目指す姿や競合先、セキュリティ基準や契約プロセスなどの情報も把握する手法として広がっています。大型案件の営業スタイルに合っている情報収集項目ですが、法務やセキュリティチェックの視点が私は良い部分だと思います。参考になる項目だけでも、みなさんの組織に取り入れてみてはいかがでしょう?詳しくは下記記事をご覧ください。
MEDDPICC(メディピック)とは?外資系営業のフレームワークとして広がる理由
営業の活動を定義した例
【自動車営業】
初商談 → 2回目以降商談 → 試乗 → 査定 →見積提出 → クロージング →契約後作業
【IT営業】
初訪問(リモート含む) → デモ・商談 →プレゼン →見積提出 →受注前フォロー →クロージング →受注後作業
営業活動の定義は業種・業態によって様々ですので、みなさんの組織で基準を整理し定めてみてください。受注に向かってランクを上げていくための重要な営業活動を定義していきましょう。
しかし、営業の活動にランク=進捗が混ざってしまう例があるので注意しましょう。例えば「商談化・案件化」や「契約・受注」という定義は、受注確度管理の進捗=ランクになります。詳しくは下記記事をご覧ください。
案件ランク(進捗)に基準を設ける
受注確度管理はABCランクを定義するだけではなく、情報収集項目と活動項目を連携させ、基準を設けなければ実践できません。つまり、前述したような情報収集ができていて、一定の活動がクリアできていなければ、一定のランクにはならないという基準を設けるのです。
例えばIT営業で言えば、MEDDPICC 8つの情報項目の50%は把握できていて、デモ・商談まで完了していたら、ランクCになるというような基準です。プレゼンと見積提出ができていないと、ランクBにはならないという基準を設定する場合もあります。
このように受注確度管理のランク(進捗)を定義する時には、一定の活動や情報収集ができていないとABCランクにはならないという基準をぜひ設けてください。
ランクにはどうしても営業の主観も入ってきますので、一定の活動クリアや情報収集項目の把握による客観的な情報がないと受注確度管理は成立しないのです。ではいよいよ、受注確度管理のランク定義/基準例をご紹介していきます。
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ランクの定義/基準例 ABCランクで管理
受注確度管理のランクはABCランクで管理するのが一般的でしょう。呼び名は企業によって根づく名称であれば、どれでもOKです。「確度A」「見込みA」「Aヨミ」「A」というようにみなさんの組織の共通の言語になることが大事なポイントです。
もちろんABCランクだけでなく、Sを受注としたり、Dランクを長期案件にしたり、競合負けのZを定義したりする企業もあります。言語はなんでもOKですので、受注率を上げていくためのランクを定義していきましょう。
ランクにはどうしても営業の主観的な想いが入ってしまうと説明しました。しかしABCランクに営業の主観を入れすぎると受注確度管理ができなくなります。そこで客観的な情報には「タイミング・時期」と「顧客の状態」を入れることをおすすめします。それに加え、営業の活動と情報収集の状況を加えるのです。
受注確度管理のABCDランクの中に、商談化と案件化の定義も入れておくとよいでしょう。上司から「この前の案件はどうだった?」と聞かれ、営業が「あれはまだ商談です」と言語が食い違うケースがよくあります。。ABCDの中に「これは商談化」「これは案件化」と決めておくと、組織内での勘違いが減り、受注確度も上がっていくでしょう。詳しくは下記記事をご覧ください。
商談化と案件化の定義、違い、平均率とは?これであなたのチームは確度管理ができる
受注確度管理のためのランクの定義/基準例 IT営業のケース
確度D(商談化) 1年以内には検討を開始する進捗。製品・サービスに示している状態。受注確率は無し。
【クリア条件 活動:初訪問(リモート含む)】
確度C(商談化) 6ケ月以内には具体的な検討が始まる進捗。受注確率は無し。
【クリア条件 活動:デモ・商談、MEDEDPICCの情報項目50%以上の取得】
確度B(案件化) 3ケ月以内に結論を出す進捗。50%の受注確率。
【クリア条件 活動:プレゼン →見積提出、MEDEDPICCの情報項目60%以上の取得。セキュリティ条件や契約内容確認などの実行】
確度A(案件化) 1ケ月以内に契約できる進捗。80%の受注確率
【クリア条件 活動:クロージング →見積提出、MEDEDPICCの情報項目80%以上の取得。セキュリティ条件や契約内容確認などの実行】
確度S(受注) 正式に合意し、契約手続き中の進捗
ABCDランクにはこのような客観的な事実を中心に、受注確度管理を実践していきましょう。
しかし、「見込み顧客が言っていたから」というようなケースがあります。
タイミングや時期、クリアされた活動や情報収集が客観的な事実とはいえ、見込み顧客と営業の商談の中で把握していく内容ですので、どうしても「見込み顧客が言っていたから」となってしまうというケースです。
つまり、見込み顧客が言っていたこととはいえ、その情報には真実と虚像が存在します。そこに営業のヨミが必要になります。見込み顧客が「1ケ月以内に結論を出す」と言ったものの、MEDEDPICCの決裁プロセス情報から、「経営会議は月に1回しか開催されず、次の経営会議での決裁を逃したり、議題が多すぎて乗らなかったりするので、そんな短期間では結論はでない」と営業が見極めをすれば、確度Aではなく確度Bになります。これが営業のヨミです。
このような逆のケースもあります。客観的な事実に営業のヨミを加えるだけでなく、営業の主観的な想いが入ってくるケースも当然あります。見込み顧客の担当者が「1ケ月以内に結論を出す」と言ったものの、担当者の結論で契約ができる場合です。
営業は予算達成のためにタイミング・時期を早めたいと考え、「クロージングで今月中の合意交渉をするので、確度Aとします」と営業が言えば、確度Bではなく確度Aとしてもいいでしょう。
「今月には決めます」「今期中には決めたいです」という営業の主観的な想いが入るのは、営業の責任感が高まり、営業は成長できます。また逆に管理職の上司が営業に対し、「組織の予算達成のために、君の案件の中から確度Aにしてコミットしてほしい」と宣言させるマネジメントも意外に受注への責任感が高まり、予算達成のための精度と意識が高まります。
しかし、このような営業の想いや管理職のマネジメントの主観的な想いだけで、受注確度管理をしてはいけません。ここまで記載してきたような主観的な想いと客観的な事実を組み合わせてABCランクをしていきましょう。
そうすることで営業が顧客と案件の見極めを正確にできるようになり、予算達成のための状態を把握でき、見込みの精度が上がります。組織で予算達成する意識が強まり、責任感が高まるランク・確度管理をぜひ実践してみてください。
またこれらを収集・管理できるSFA/CRMシステムの導入も必要になってきます。しかし、全く受注確度管理ができていない企業は、まずはエクセルで管理していきましょう。エクセルでランク・確度管理ができてきたら、営業ツールを検討し、効率化を高めてみることをおすすめします。
まとめ
「受注確度やランクを定義すれば受注率が上がる その理由」と題して、ご紹介してまいりました。受注確度と受注ランクの違いや、営業の活動管理と情報収集とABCランクの関係性がご理解いただけたと思います。
受注確度・ランクの定義/基準例のABCランク管理にあるようなランク・確度管理を、ぜひ組織で実践してみてください。必ず受注率が向上すると思います。しかし、大事なポイントはみなさんの営業現場に合った言語とやり方でやってみることです。仰々しい外面やカッコ良さを意識したランク・確度管理はやらないでください。
受注確度管理やABCランクの定義に対し、「うちは特殊でケース byケースなので難しい」という管理職がいます。営業組織で話し合い、整理すれば「特殊」とか「ケースbyケース」といいような魔物はいないことがわかります。営業の標準化のためにもランクを定義し、受注率が上がる受注確度管理ができることを祈っております。
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