営業マネジメント

営業失注 「値段で負けました」ではなく「営業負けでした」と言う営業の成長力

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営業の失注とはどんな意味なのでしょう?競合他社に負けた時に 「値段で負けました」という営業と「営業負けでした」と言う営業の違いには、これからの成長に関する大きな意味があります。失注案件を正確に失注分析する方法やその事例をご紹介しながら、営業失注を減らす手法を一緒に考えていきましょう。

逸注と失注の違いとは?

営業として商談化や案件化した見込みが、逸注や失注にはなりたくないものです。当たり前の理由ですが営業としてのゴール、受注をしたいからです。失注とはどういう意味でしょうか?失注とは製品・サービス・商品を提案・見積をして、案件化した見込みが受注・成約に至らなかった状態のことです。最近のビジネスの商慣習では契約後にキャンセルになることを失注とは言いません。理由はこのようなキャンセルになるケースが減ってきているので、失注とは呼ばなくなっているのでしょう。

企業によっては逸注という言葉を使うケースもあります。逸注と失注の違いとは何なのでしょう?逸注と失注の違いは大きなとらえ方では存在せず、ほぼ同じ意味です。使っているニュアンスで整理してみると、案件型営業で見込み顧客がハッキリと見えるケースが失注、ルート型営業で代理店や販売店の先に意思決定者がいるケースが逸注と言っているようにも感じます。

逸注を使う企業は業歴が長い、歴史のある企業が多いように感じますし、最近では逸注とはあまり言いませんので、本記事では失注と表記し、失注案件を中心にご説明いたします。

失注案件は必ず競合他社に負けている 

失注案件の中に、案件クローズや案件が保留になるものも含まれると言う人がいますが間違っています。この状況は失注ではなく、ペンディング(中断・保留)です。市況などの外部環境の変化や、経営戦略などの内部環境の変化により検討していた案件を中断・保留するということです。つまり、今後環境が変化すれば、案件検討が再開する可能性があるので、前向きな状態とも言えます。よくあるケースですので、営業は失注とは言わず、次の検討再開までしっかりと営業フォローをしていきましょう。

失注案件とはペンディングとは違い、完全に決着がついた状態を指します。見込み顧客は自社の提案を選ばず、他の企業の提案を選んだ状態を失注と言います。つまり、失注案件は必ず競合他社に負けているということです。「競合他社に負ける」という結果は受注できるはずだった案件を失うのもショックですが、自社提案ではなく他社提案を選ばれてしまったショックの方が大きいでしょう。私も経験がありますし、誰でも営業をやっていれば失注からは逃れることはできません。

しかし営業の失注は減らしていきたいものです。失注のショックが続く現実への対応方法は、心のコンディションを整理していけば立ち直れます。しかし、失注が続けば当然、受注が増えないため、失注を減らさなければなりません。失注を減らすためにまずやるべきことは「失注分析」です。なぜ競合他社に負けてしまったのか?原因や理由をハッキリさせるのは失注分析なのです。

「値段でまけました」と言う営業の失注分析

失注分析をしていくと競合他社に負けた理由はいくつか挙げられます。よくある失注理由を記載してみます。

【競合他社に負けた理由】

  • 価格
  • 納期 (希望納期等)
  • タイミング (提案が遅かった等)
  • 機能、仕様 (製品・サービス・商品に対する)
  • 品質
  • 見込み顧客が求める課題解決策と、提案のアンマッチ
  • 導入実績
  • 企業への信用
  • 営業への信頼

主にこのような失注理由が挙げられるでしょう。この失注理由の中で最も多いのが「価格」です。営業が一番多い失注理由として報告する「値段でまけました」です。よく聞く失注理由ですね。

「値段でまけました」と言う営業の失注分析は正しい場合もあります。このように市場価格よりも明らかに高い価格でしか提供できない企業は、製品・サービス・商品の価格改善をしなければなりません。

しかし、「値段でまけました」と言う営業の失注分析の大半は間違っています。見込み顧客は競合他社を選ぶ時に、その競合他社の営業と深くたくさんの商談をして決定します。おそらく、競合他社の営業と仲良くなっているケースが多いでしょう。

競合負けする営業はその逆です。商談回数も少なく浅い商談を繰り返し、見込み顧客の困っていることに踏み込めず、結局仲良くなれていません。だから、正しい失注理由を聞けていないのです。

競合負けした営業に断りを入れる見込み顧客も、正確な失注理由は伝えません。ありきたりで無難な失注理由、「御社が提案した製品・サービス・商品の方がかなり高かったから、競合他社に決めました」とメールで回答します。仲良くなっていないので営業に電話では言いません。

競合負けした営業は見込み顧客が言っている通りの失注理由、「値段でまけました」と報告し、自分自身の営業失注分析も「価格」と思い込みます。提案中に自社に不利な点を何も感じず、商談をしていることも、「価格」と思い込む理由のひとつです。これが失注理由に「価格」が多い背景なのです。

正確な失注理由を把握するためには、商談を重ねる中で営業が感じていくしかありません。そして万が一競合負けしてしまったら、お断りの連絡をしてきた見込み顧客に正確な失注理由を聞き出さなくてはなりません。人は別れ際なら本音を言ってくれます。このように正確な失注理由を感じて、事実を把握しているのが成長する営業です。

「営業負けでした」と認める営業が成長する理由

失注する理由には価格以外にも、納期、タイミング、機能・仕様、品質等は現実に存在します。これらは営業がコントロ-ルできないものでもあるため、営業は失注理由として挙げやすいでしょう。このような失注理由が事実であれば会社として改善していかなければなりませんが、問題は事実ではない場合です。

「自分のせいではなく、会社のせい」というスタンスで営業は報告できるので、自分のプライドは傷つきません。事実よりも自分のプライドを守るための報告をしていては、また失注は繰り返されます。もちろん会社のためにもなりませんね。

営業のプライドが傷つく失注理由の第1位は「営業のせい」です。競合他社の営業の方が提案力もあり、人としても信頼できて好きになれるケースです。一般的には「営業負け」と呼ばれています。価格や機能・仕様がほぼ同じ提案だったとしても、営業力で負けているのです。

失注理由を「営業負けでした」という営業は少ないでしょう。なぜならプライドを守りたいこともありますが、その事実を見込み顧客が正確に言ってくれないからです。しかし、現実に営業負けで失注する案件は意外に多いのです。

「営業負けでした」と失注理由を正確に把握し、認める営業がいます。この営業はまず、商談を重ねる中で見込み顧客が言っている内容を細かく理解して、競合他社の営業よりも自分が劣っている部分、優っている部分を感じています。

挽回しようと改善し努力するのですが、競合負けしてしまったとします。そして競合負けのお断りの連絡をしてきた見込み顧客に、「負けた理由を正直に教えてください」と正確な失注理由をしっかりと聞き出しています。

競合負けしたとしても、商談中に些細なことを感じる作業を重ね、別れ際こそ事実を聞ける心理状況を知っているのです。このようにして「営業負けでした」と認める営業になるわけです。営業負けを素直に認める営業は成長します。その理由は、人は感じると、気づき、改善に動きます。逆に感じないと人は、気づきもしませんし改善もできません。

「営業負け」と感じ、見込み顧客に本当の理由を聞ける営業は次に活かします。同じ轍は二度と踏まず、改善作業を繰り返して営業活動をします。若いうちに「営業負けでした」と感じ、見込み顧客にしっかり聞ける営業になれば、その先に待っているのは営業としての成長です。

「値段で負けました」という営業は小さな自分のプライドを守り、事実と向き合いません。当然、成長しないですよね。成長力もついてきません。営業負けは誰でもあるケースですが、早いうちにその負けパターンを理解しておくことをおすすめします。

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競合他社に勝つための事例紹介

競合他社に勝つためには、いくつかの対策や方法があります。外資系企業は競合分析をする専門チームがいて、競合他社別に競合トークや提案方法を決めています。本記事では競合分析について記載しませんが、ぜひ一度、営業チームで情報を集めて、ディスカッションをしてみてはどうでしょうか?

本記事では競合他社に勝つためにまず「営業負けでした」と感じ、事実を認め、対策と方法につながる事例をご紹介します。

【競合他社に勝つための事例紹介1】

2009年のセリーグ首位攻防戦では落合監督が率いる中日ドラゴンズと、岡田監督が率いる阪神タイガースが接戦を繰り返していました。その首位攻防戦では僅差で岡田阪神が中日に3連勝をしました。際どい勝負を阪神がものにしていくポイントには、勝負時に打者や投手を投入する岡田監督の細かな采配が光ったからでした。そして3連敗した落合博満監督はに「監督で負けた」と言わしめたのです。

まだ監督として若かった落合監督は「監督負け=監督で負けました」と感じ、素直に認めました。その後、自分が他の監督に劣る部分を改善していき、中日ドラゴンズ全盛時代につながっていったのです。こんな超一流の選手でも営業負けを認め、次の指揮につなげていくのですね。営業だけではなく、「管理職として負けました」の事例とも言えます。

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【競合他社に勝つための事例紹介2】

図1をご覧ください。営業報告から予想していた失注理由を、SFA/CRM導入後に計測した失注分析の結果です。失注分析をすると失注理由は「価格」ではなく、実は「営業」と「機能・仕様」だったというデータが出たのです。 

この企業もSFA/CRMを導入する前は「値段で負けました」が失注理由として横行していました。会社は「失注理由は顧客の声で最高峰であり、宝の山」と考え、製品開発や市場調査、設計や生産にも役立てるため「失注の責任を個人に追求しないので、見込み顧客に正確に失注理由を聞いて、事実をSFA/CRMに入力してほしい」と組織全体に依頼と宣言をしました。

そして半年後に蓄積されたデータを失注分析すると、失注理由は価格ではなく、「営業」と「機能・仕様」と「タイミング」が多いことがわかりました。営業が言う「値段で負けました」が失注理由の第1位ではなかったのです。

そこでこの企業は組織改善と教育に動きました。製品開発部門には競合他社に劣る機能や仕様を徹底的に分析させ、製品の機能強化をはかりました。営業には見込み顧客にアプローチするタイミングが遅かったため、マーケティングと営業部門・インサイドセールスの連携を深め、見込み顧客への新規営業活動を増やしました。

営業負けしている事実が把握できたため、営業力強化研修を増やし、営業同行からの商談手法の改善に着手したのです。

SFA/CRMのデータから失注分析をすることは簡単です。しかし、正確な失注理由が入力されていないと、いくら高機能の分析システムが入っていても結果は間違ってきます。

組織が「責任を問うための取り組みではなく、顧客に選ばれる事業に改善するためのデータ入力である」と宣言するとデータの精度は上がります。営業に正直で正確な入力を協力してもらうしくみづくりが大事ですね。そんなポイントがわかる競合他社に勝つための事例でした。

まとめ

「営業失注 ‘値段で負けました’ではなく‘営業負けでした’と言う営業の成長力」と題して、ご紹介してまいりました。逸注と失注の違いはなく、ほぼ同じ意味です。失注案件とはペンディング(中断・保留)は含まず、必ず競合他社に負けているという状態のことでした。

「値段でまけました」と言う営業の失注理由は、実際に合っているケースもありますが、自分のプライドを守るために、見込み顧客に言われた通りに疑いなく報告をしているので間違っていることの方が多いのです。

「営業負けでした」と認める営業は成長力がついてきます。理由は見込み顧客との細かなやり取りから変化を感じ、事実をしっかり聞けるスタイルを大切にしているからです。営業負けという正確な状態を素直に受け入れて、そこで初めて失注分析ができるのです。

若いうちに「営業負け」を感じ、認め、経験すれば、中堅・ベテランになれば営業勝ちと競合勝ちは間違いなく増えます。

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