第4章 営業・マーケティングのやり方(新規営業・訪問編)

お礼メール’だけ’は送らない! 新規アポ訪問後にやるべきこと 

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初訪問後には顧客に対し、新人営業は時間をいただいたお礼メールを送るルールが決まっている会社は少なくないだろう。だが、期待して初訪問の機会をくれた顧客に、お礼メール‘だけ’を送ることは、実は期待を裏切ることになる。ではどうすればいいのだろう?

お礼メール’だけ’は送るな!って?どういうこと?

 初訪問を顧客に想像(イメージ)してもらうことを初訪問の目標とし、説明と会話に分けて進め、価値を感じてもらった顧客に最後に聞くという流れで説明してきた。今回は1時間の初訪問の終盤のシーンについて話したい。2回目以降の訪問につなげるためにはどうすればいいのか?というポイントに絞り、説明しようと思う。そして、お礼メールは初訪問後に行う営業の基本マナーみたいなものだが、「お礼メール’だけ’は送るな!」は衝撃的なタイトルだ(笑) 「新人はそう言われると真に受けて、お礼メールを送らなくなります」と言われたこともある・・汗。その本当の意味について説明していきたいと思う。順に読んでいってほしい。

新規アポ後に「正しい」次のアクションを決める 

 初訪問の終盤には「正しい」次のアクションを決めて帰ることを意識してほしい。次のアクションとはお互いの想いが一致する次の訪問理由が決まることを指す。自社製品・サービスが良いと評価を受けた後は「次はお互い、どうしますかね」となるだろう。「次はもっと関係者を集めるのでもう一回説明をして欲しい」とか「経理部メンバーの細かい作業をしているメンバーを入れるのでヒアリングして見積や提案に進んでほしい」など具体的に2回目のアクションが決まる場合はこれでいい。

 問題は「また追って連絡します」と言われる場合だ。顧客は営業のペースでどんどん売り込まれることを嫌がるので、このように「またいつか・・」となりがちだ。その時に「またご連絡お待ちしています」と普通に返してはいけない。

 具体的な「次は〇〇の細かな打ち合わせ」にならなかった場合でも、説明後の会話の中や聞く項目から「正しい」次のアクションを1つは見つけてほしい。例えば聞く項目から導き出した人や組織の情報から、「あの人に」「あの部署に」対して「次はその部署に紹介をさせてください」というアクションをお願いする方法がある。「会社の中で推進できる人を探し、会う」ことは次のアクションの基本なのだ。

  初訪問の場ではできる限り、すべての質問に回答をするべきだが、「回答できなかったご質問を調べてご連絡を差し上げます」という宿題型の柔らかい次のアクションにしておいて、次の接点を約束しておくことも悪くはない。「正しい」次のアクションとは顧客と営業の想いが一致していること、「次はこれね」とお互いが合意できていることだ。みなさんの製品・サービスにより、黄金の次のアクションが3つぐらい用意されていれば、若手の営業もやりやすいだろう。「また追って連絡します」の対策には、次のアクションを組織で考えて、ネクストアクションのバリエーションを増やしてみよう。

決まらない商談をチームでルール化する

 顧客には失礼は話だが初訪問で、筋の悪い商談、決まらない商談と感じる時がある。当て馬に呼ばれている時、永遠に決められそうにない壮大な検討範囲を担当者が語る時などがそうだ。ベテラン営業はそう感じると「この商談に今後付き合っていくと手がかかりそうだ」と思い、サッと引く感覚を持っている。この感覚を標準化することはできない。だが導入検討のための要件がおかしい時や、間違っている質問や主張が多い商談は「決まらない商談」とチームで注意することはできるはずだ。

 例えば経理部門の経費精算の計算やチェック業務の多さが残業削減の検討ポイントなのに、「ログイン時はシングルサインオンに対応(ひとつのパスワードで統一できること)していることが絶対条件だ」とか「入力画面のUI/UX(デザインなど)が最優先事項だ」のような担当者が主張するケースだ。これは、そもそも課題解決をするための本質からはかけ離れている。欲しい機能なのかもしれないが、導入検討の本質からかけ離れている商談があるのだ。

 私もチーム内で「この5つのテーマをメインに質問してくる商談は決まらない例」をルール化しており、その場合は深追いしないことをフォーメーション化している。顧客側には失礼はルールだが、すべての商談に100%に力を注ぐことは現実的に厳しいし、営業効率も悪い。決まらない商談のテーマやキーワードを標準化してみてほしい。

ダメなら情報収集に切り替える

 これまた顧客に失礼な話だが「筋の悪い商談は情報収集に切り替える」ことを営業とルール化してみてはどうだろう。決まらない商談ルールに触れた場合は、1時間を有効に使うために、業界や業務のコトを聞くだけ聞いて帰るのだ(顧客の企業情報ではなく、業界について)。顧客はその業種のプロなので、市場の成長性や競合先のポジションなど最新の情報を持っている。皆さんの製品・サービスに役立つ業種や業務についても企業によって様々なパターンがあるので勉強になる。ダメなら情報収集に徹するというフォーメーションをチームで決めて情報を集め、営業ミーティングで共有して、業種・業態向けのスキルを底上げするのもよいだろう。

SFA/CRMに記録を残す意味とメリットとは?

 初訪問の結果は貴重なノウハウなのでSFA(セールス・フォース・オートメーション:営業支援システム)/CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント:顧客管理システム)に履歴として残すべきだ。すべての初訪問の情報はSFAに報告入力してほしい。よくSFA/CRMに対して「自分のために入力する意味がない。自分はメモをしているから、手帳を見れば振り返りができる」と言う営業がいる。

 そう主張する営業は考えてみてほしい。1ケ月や半年ぐらいで受注ができる商談ばかりなら手帳管理でもまだいい。初訪問から商談が順調に進んでも半年から1年、一時中断して再開して2年や3年以上、商談を追うことはザラにある。しかもそれは1社ではなく数百社以上になる。1年ぶりにフォロー訪問をすることになって「前回の商談はどうだったかな」と、手帳のメモから瞬時に振り返れるわけがない。

 SFA/CRMに入力する意味やメリットは、フォロー訪問時の自分自身の振り返りのためである。そして営業は担当が変わることがある。前任が退社してしまうかもしれない。SFA/CRMに訪問履歴が残っていると、中途入社の営業や新卒営業が参考になり、過去の経緯を理解して営業活動ができる。履歴があれば即戦力社員として立ち上がるスピードが全然違うのだ。マーケティング部やインサイドセールスは内勤なのでMA(マーケティング・オートメーション)やSFA/CRMの入力には抵抗はない。営業は外勤だし忙しいので、つい入力を怠ったり嫌がったりするが、このように営業自身とチームに対する入力メリットがあるのでぜひ実践してほしい。

人で攻める意識を持つ

 「社長がダメと言っても、いずれ社長が変わるかもしれない。新しい社長になったら、また提案する」。これは「人で攻める」の究極の考え方である。初訪問で会った顧客担当者が自社の製品・サービスをダメだと言ったとしても、その上司は推進者になってくれる人かもしれない。顧客担当者は担当を変わることはあるし、その他にもキーマンはいるはずだ。。つまり人によって商談の質は大きく変わってくるので、今日会った顧客担当者がダメだったとしても、同じ会社1社に対して「人で攻める」ことができる。人が商談を前進させてくれるという意識を忘れないでほしい。

お礼メール’だけ’は送るな

 本ブログのタイトルになっている初訪問後の「お礼メール’だけ’は送るな」。このタイトルはある研修の時に反響が大きかった。「初訪問後のマナーとして基本だ」「営業としての爪痕(メール履歴)が残せるメリットがある」 「この意見には反対だ」と最初は否定的な意見が多かった。タイトルだけ見れば礼儀は無視しているように聞こえるし、顧客を大切にしていないように感じるのも無理はない。初訪問後の当日か翌日までに顧客に対してメールを送ることは必要だと思っているし、送った方がいい。

 私が言いたいことはそのメールの内容が、初訪問の貴重な時間をいただいたお礼に関すること‘だけ’になっていてはダメだと伝えたいのだ。私も初訪問の営業を受けるが、あれだけ私の想いや弊社の問題点を話したのに、「鈴木様には貴重なお時間を頂きましてありがとうございました。・・以下御礼文」メールがくるとガッカリする。なぜガッカリするかというと、御礼をすることが次のアクションになってしまっていることに残念で仕方がないのである。もしかするとこの会社は、必ずお礼メール’だけ’を打つことを組織でルール化しているのかと思うと、上司はなんてムダな標準化をしているのだろう、と思ってしまう。

 このようなお礼メール‘だけ’になってしまうのだろう?理由は「正しい」次のアクションがないから、御礼だけになってしまうのだ。具体的に2回目以降に進めないことはある。それは仕方がない。だが「回答できなかったご質問を調べてご連絡を差し上げます」という宿題型の次のアクションぐらいは作ることができる。

 また初訪問の資料を紙で手渡しするだけでなく、あえてメールで送る専用資料を用意しておく営業チームもある。このように‘御礼’を次のアクションにしないで、次の接点を何か約束して、御礼と共に送ってほしいのだ。お礼の前に、顧客の課題解決に近づくための次のアクションをすることをチームで標準化してほしい。次回アクションがあれば、送ったメールの内容の中に、自然と御礼が含まれているはずだ。

まとめ

 次のアクションとお礼メールは連動していると私は思う。お礼メールだけを送ると礼儀正しいしマナーはいい営業だなと好印象を与える反面、「まだまだ若手営業であんまりやることがないのだな」と私は感じることがある。「まだ私とやり取りするレベルないな」と頼りにならない感も出てしまうのも事実だ。そんな営業に限ってお礼メール後には、二度と連絡がない。顧客に頼られて信頼されるためにも、御礼だけではなく、せめて宿題型の次のアクションは持って帰ってこよう。その宿題を送るメールがメインであり、初訪問の御礼を添えることにしよう。それが本当の好印象を与える初訪問後のお礼メールなのだ。

 先日、会食後や懇親会後のお礼メールはどうするべきか、という質問を若手・中堅営業から受けた。ご馳走していただいたなら、これはもう必ずお礼メールを翌日に送らなければならない。しかし会食中に次のビジネスの協業で盛り上がったり、課題解決のために次はこのテーマに取り組もう!など、初訪問後と同じように次のアクションについてのヒントが何かあるはずだ。会食後や懇親会後のお礼メールはマナーとして翌日に送るべきだが、合わせて次のアクションについてもメールに含めてみよう。酔っぱらって忘れることなく、しっかり覚えておくことも基本だ(笑)

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