第5章 営業・マーケティングのやり方(提案・クロージング編)

RFI(情報提供依頼書)とは?RFPやRFP(提案依頼書)への提案手法はこれだ!

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顧客からRFI(情報提供依頼書)やRFP(提案依頼書)が出てくる案件があります。「依頼書に沿って提案してほしい」と顧客主導で進んでいく案件です。ではRFI案件やRFP案件にはどのような提案手法で進めていくのがベストなのでしょうか?ベンダー主導ではない、顧客主導の提案案件について解説していきます。

なぜRFI・RFPが顧客から出てくるの?

RFI(情報提供依頼書)やRFP(提案依頼書)が出てくる案件は、後手になっている’後手営業・マーケティング’と言えます。しかし、RFIやRFPを顧客側が出し、進めていく案件は顧客側の権利であり、顧客が定めた提案のルールと言えます。買う側の顧客として良い製品・サービスを安く買いたいのは当然ですし、そのための提案依頼なのです。

しかしRFIやRFPを作成することは相当な労力が必要です。顧客だけでしっかりしたRFIやRFPを作ることは困難であり、コンサルティング会社に依頼すると費用もそれなりにかかります。しかしなぜRFIやRFPを出てくる案件があるのでしょうか? 

その理由は提案の範囲が広いためRFIでたくさんの会社から情報収集をし、RFPで要件を正確に伝え、要求する仕様をRFPで守りたいからです。例えば、建設業界の施主が自分の持っている土地にビルやマンションを建てたいとします。ホームページを見て「こんな感じの建物を提案して欲しい」と提案依頼をすると、正式決定後に「あれも足らない、これも違う」となるのがオチです。そこでまず設計事務所を探して設計者を決め、建てたいビル・マンションの図面を書いてもらいます。そして施工者(ゼネコンなど)に図面や技術情報書をベースに、提案依頼をしてコンペをさせて決めていくのです。ビル・マンションの要件範囲が広いため図面ベースに要求仕様を固め、顧客主導でRFPを出して良い建物を建てるやり方と言えます。

IT業界だと企業の基幹業務システムやERP(エンタープライズリソースプランニング=統合された基幹システム)の範囲は広いです。販売業務や購買業務だけでなく生産管理業務や人事・給与・会計・債権債務業務があります。各業務システムを動かすネットワーク基盤も必要になります。要件や要求仕様は細かくなるのでRFPには新システム(新基幹システムとネットワーク基盤)の構築要件の概要、技術要件、システム開発要件、システム運用要件等の要求仕様を示した内容が記載されます。

そこで現状の課題(AsIs)やあるべき姿(ToBe)を示し、導入スケジュールと提案・プレゼンの依頼内容などをRFPに記載します。このように提案の範囲が広いため提案依頼内容を定義し、正式決定後のトラブルを減らすためにRFPに守ってもらうのです。このような提案範囲が広いジャンルの製品・サービスは必ずあります。顧客主導の業者やベンダー選定のやり方なので、RFPのルールやお作法に沿って提案を進めていくしかないのです。ではRFIやRFPに対して、どのように提案を進めていけばいいのでしょうか。

図の流れでIT業界向けのRFIやRFPに対しする対応方法を説明していきます。検討範囲が大きいためコンサルティング会社が入っていて、RFI・RFP作成支援をしているケースが多いです。図のように進め方もキッチリ決まっているので、この流れで提案していくことになります。まずRFIが各ベンダーに出されることからスタートです。

RFI(情報提供依頼書)への提案手法

RFIとは提案に対して様々な情報を提供してほしいという依頼書です。内容には会社情報、製品・技術情報、業務に関する情報などがあります。例えばIT業界だと製品・サービスの機能一覧表や業種・業態事例や標準フロー例、競合比較資料、インフラ・セキュリティの技術資料等が求められます。様々なベンダーの企業情報や製品・サービスの情報を集めるので、比較検討をしてRFPを出す候補先の選定作業も含まれていると言えます。「情報提供依頼だけど、ちゃんと情報を提供してくれないと、RFPを出す候補先にしないよ」という背景もあるのです。注意しましょう。

また選定以前に、製品・サービスから業種や業務ノウハウを集めて、RFP作成のネタにしていくケースもあります。つまりRFIで各ベンダーの製品・サービス情報を集め参考にして、数ケ月後にRFPが出てくるようなパターンは多いと言えます。

RFIに対する提案手法は「とにかくできる限り資料をたくさん送ること」、これに尽きます。要求された資料はすべて揃えて提出することはもちろんですが、「これだけノウハウがあるソフトウェアやクラウドサービスです!」と主張できるぐらい資料を提出しましょう。RFIへの提案手法は顧客を圧倒するぐらいの量でアピールすることが基本です。

そしてRFIの要求内容に対し、少し気を利かせてみましょう。例えば「このような業務を標準機能で実現可能か?」と詳しく記載されていた場合、自社製品・サービスが標準機能で実現できる資料を提出しながらも、「その他にもその業務に関するこんな資料もあります!こんなことも知っています!」と、プラスアルファの情報を提供するのです。

RFIのやり取りでは、数多くの実績からノウハウが詰まっているという製品・サービスの資料を、アピールすることを心がけてみましょう。RFIの提案手法は資料を出す作業が中心になるので、定型化された提案資料がたくさんあるベンダーはさほど労力はかからないと思います。過去に提案した資料を定型化しておくような’ナレッジ活動’を心掛けましょう。

RFP(提案依頼書)への提案手法

RFPとは企業が最適なベンダーを選ぶための提案依頼書です。導入を失敗しないための提案依頼書とも言えます。検討範囲が広い業種・業態でRFPは採用されます。自社でRFPを作成しようとすると、様々なホームページでRFPの書き方は情報発信しているので参考にはできます。

しかし、目次やアジェンダ程度の情報がほとんどで、これでは顧客が自分自身でRFPを作成することは難しいでしょう。それでも自社でRFPを作成し提案依頼をかけると、ベンダー側が困惑する「なんちゃってRFP」が誕生してしまいます。「こんな新システムが欲しい」「現状システムの仕様を踏襲してほしい」などが記載されているケースで、これではRFPで要件を伝え、自社の基幹システムを守ることはできません。要件定義や設計・開発が始まったら、仕様漏れでトラブルが多発するのケースが多いでしょう。

失敗しないベンダーを選びたいならば、顧客はお金をかけてRFP作成をコンサル会社に依頼した方がいいでしょう。RFPの具体的な作成は専門のコンサルティング会社がたくさんあるので相談してみてください。専門家が作るRFPにはAsIs(現状の改善すべき姿)やToBe(あるべき姿)、求める要件や細かな要求仕様、提案のルール(質問記入表)などが細かく記載されていて、安心してベンダー選定をしていけます。つまり、コンサルティング会社が作成したRFPは、 目的先行の選定になると言えます。逆に顧客・ユーザーが作成したRFPは、手段先行になるため、要件もハッキリせず、発注後のトラブルが多くなるわけです。

RFP案件 提案の進め方

RFP案件は、顧客主導の提案ルールに沿って、提案していくことがベンダー側の役割です。「RFPをいただいたのでデモや打ち合わせをまずお願いします。その後、提案をさせていただきます」とベンダー主導では進められません。そんな進め方をお願いしたベンダーは即脱落、失注になります。RFP事前説明会の顧客面談だけとなり、その後は「プレゼンまでのベンダーとの個別打ち合わせは原則禁止」とRFPには書いているケースが多いでしょう。

提案をするための情報はすべてRFPに記載されているので、提案ベンダーはRFPを読み込むしかないです。提案をするための情報はRFPに記載されているとは言うものの、文章と図解だけでは読み取れないこともあります。その場合は質問をするための打ち合わせをお願いしたいところですが、これもNGというケースが多いです。

理由は10社に提案依頼をして、10社からの質問を面談で答えていたら効率が悪いからです。そこで質問があれば質問記入表に記載して、顧客側がメールやExcel(エクセル)による回答か、またはコミュニケーションツール等で回答するケースが多いでしょう。回答はすべてのベンダーに公開されるので、同じような質問に何度も答えなくて済むので、効率的なのです。

RFP案件は顧客主導なので、複数ベンダーを競争させ、良い提案で良い製品・サービスを安く導入するための効率的な提案依頼手法と言えます。顧客はそれを一番狙っているのです。ではRFPに対してどのように提案書提出までの作業をしていくべきか、質問記入表にどのように対応をしていくか、どんな提案書を作成していけばいいかを次の記事でご説明していきます。提案書が提出されるまでは顧客とは会えないが、1回か2回訪問するための方法があるのです。どんな提案手法なのでしょう?詳しくはこちらの記事をご覧ください。
RFPの作成と提案方法とは? 質問記入票の書き方がポイント

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