第5章 営業・マーケティングのやり方(提案・クロージング編)

クロージング営業になるために

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顧客担当者と営業がクロージングする商談シーンは減ってきた。だが顧客担当者と「握る=合意する」時にクロージング力が求められるシーンは必ずある。BtoBモデルのビジネスでクロージング営業になるためのポイントについて解説したい。

クロージング営業とは?

 商談を受注させるためにはクロージングが必要だ。顧客と交渉し、合意できる力、それがクロージング力である。だが最近は顧客の決済プロセスが決まっており、見積提出→経営会議提出→正式決定と、クロージングをするケースが少なくなっている。だが顧客担当者と営業で合意してから、決済プロセスにいくシーンは必ずある。その時のために、クロージング力を備えたクロージング営業になりたいと思うあなただけに、お話したい。

買う側にまわって、クロージング力を身につけてみよう

 前ブログでは営業として顧客をクロージングするテクニックを説明してき。だが自分が売る時だけでなく裏返しとして、皆さんが買う側に立ってみると違うクロージング風景が見えてくる。相手と交渉をしてこちらのペースでクロージングしてみると、非常に勉強になるのだ。少し単価の高いモノの方が値引きをしてくれるので、携帯電話、家電、車、住宅、貴金属・時計などがいい。担当営業や店員に筋を通して要求し、対等に交渉してみてはどうだろうか?あなたが値引きして欲しいのに、ゼロ回答だったら違うお店に行くだろうし、ゼロ回答しか引き出せなかったら、あなたの交渉力とクロージング力がないということだ(笑)。クロージングのうまい営業は、買い物もうまい。いいモノを安く買う。売るだけでなく、買うクロージング力もあるのだ。

クロージング力のない営業の3つの口癖 

最近の若い営業はクロージングができないとよく相談を受けるが、若いからが理由ではないと私は思っている。クロージングのやり方を上司が教えていないからだ。ぜひ本ブログを読んだ若い営業は明日から実践してほしいし、上司は部下に教えてあげてほしい。ただ、クロージングができない営業と話していると、典型的な3つの口癖がある。 

「見積は出しました」  

→見積を出したことでクロージングは完了し、あとは顧客待ちと思っている。

「買ってくださいとは言ってません」 

→上司の問いに、そんなことは言っていませんと堂々と回答する。

「連絡がつかなくなりました」

 →提案内容が悪く、顧客に逃げられているケースがほとんどだが、連絡がつかないことが受注できない理由になっている。担当者との関係構築もできていないので、当然、携帯番号も聞いていない。

最終見積を提出した商談の時に、次のアクションが顧客と確約されていないから、このような発言になるのだろう。「買ってください」は最終商談で言えるはずだし、狙いたい重要な顧客には「携帯電話の番号を教えてもらってもいいですか?」と聞けば、連絡は取れるはずだ。「この人の携帯は聞いておこう」という気づきを持ってほしい。

実演販売から学ぶクロージング営業

 最近のBtoBモデルでは「即決」のクロージングは少なくなった。高度経済成長時代やバブル時代は、目新しい製品が多くモノが売れた時代だったので即決営業は多かった。だが最近はその逆だ。珍しい新鮮な製品が減ってきたため、顧客が情報を収集し比較検討して、慎重にゆっくり決めるようになった。だからマーケティングが必要なのだ。だが製品によっては即決できるものもまだある。

 最近は展示会のミニセミナー講師を実演販売士にお願いすることが増えている。実演販売士はスーパーや百貨店の軒先で化粧品や包丁を売っているのはもう昔の話、今では家電量販店でデジタル家電やIT機器を店頭で説明して、その場で売っている。最近では数少ない「即決営業」だ。実演販売士は説明がうまい。わかりやすい言葉で聞いている数十人を飽きさせない。10分少々で店頭の説明で顧客にどんどん購入後をイメージさせ、「買ってみてもいいな」と思わせる。そしてクロージングが始まるのだ。どんなクロージングをするのだろう?

 まず10分間のプレゼンを聞いている顧客の中で「足の爪先が実演販売士を向いている人」を狙うそうだ。クロージングのためのペースメーカーを捕まえ、実演販売中にクロージングがスタートしていると言える。背中を押す時には「今日だけ・今だけ・あなただけ」精神を忘れずにクロージングのトークを伝える。一人目が購入してくれれば、次はどんどんあおる。「みなさんどんどん買ってますよ」「もうすぐ店頭の商品がなくなります」と言って、次々と購入者をあおっていくのだ。導入事例作成と同じ手法の「みんなやってますよ」でクロージングするのだ。BtoBモデルとは少し違うかもしれないが、実演販売士のプロのクロージングも、クロージング営業の参考にしてみよう。

沈黙に耐えられない営業にならない

 顧客がいろいろと考えているシーンがクロージング中には必ずある。例えば「この製品・サービスを導入したら本当に効果は出るだろうか?」「この金額で予算内に収まり、経営会議は通るだろうか」と静かに顧客が考えるシーンだ。この時の顧客の沈黙を邪魔してはいけない。なぜなら営業からの説明をすべて受け、金額提示も終了し、顧客はこれからどうすべきか考えているからだ。

 このクロージングの大事なタイミングなのに、顧客が黙り出すと何か話さなければならないとソワソワして、話し出す営業がいる。顧客が決断をしようとして静かになっているのに、その沈黙に耐えられないのだ。私はこのような営業を「沈黙に耐えられない営業」と呼んでいる。普通の会話は途切れないように進めるべきだが、顧客が購入をイメージし、決断している最終段階の沈黙は邪魔してはいけない

クロージング営業になるために言ってほしいこと

私はクロージングできる営業を目指すために、言ってほしい言葉がひとつある。

「たぶん、決まると思います」

と口にしてほしいのだ。もちろんすべての案件に言えばいいわけではない。まず顧客へのヒアリング項目からの裏付けを取り、顧客に価値を感じ続けてもらっている時に、顧客の感想を聞いていく。あとは経験を積み重ねていけば、「金額面の合意は残されているが、この案件はたぶん決まるな」と最終段階の少し前に感じるはずだ。営業見込み確度で言えば「確度B」か「確度C」ぐらいで感じるはずだ。確度ではなく「Bヨミ」「Cヨミ」と「ヨミ」と言う企業もある。

 確度やヨミは見込み管理用のステータスであり、それぞれの定義はある。だが営業は定義からではなく、経験値から「たぶん決まる」をチーム内で発言してほしい。そうすればクロージングの感覚も研ぎ澄まされていくし、準備や実践からクロージング力も身についていくはずだ。本ブログや第5章クロージングで説明してきたクロージングのやり方を実行しながら、顧客との交渉を楽しんでほしい。最後の決まる瞬間は営業が一番楽しい時だと思う。

 ここまで記載してきたチームで強くなる営業・マーケティングを実行すれば、必ずこのようなスリリングでドキドキする良いクロージングの場面を迎えられるはずだ。顧客と営業共に気持ちよく合意して、サイコーの握手をしよう。受注おめでとう!

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