営業DXとは何なのでしょうか?「なんでもDXをつければいいものではない」という意見もありますよね。しかし、事業を成長させるためにDX(デジタルトランスフォーメーション)は企業と事業部門の双方に求められているのです。そして営業DXの実現のためには、今後も続いていく非接触営業と密接に関係してきます。営業DXの実現方法、DXツール検討の落とし穴、デジタル営業の課題も解説していきます。
営業DXとは? デジタル営業チームの課題
DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に企業は動いています。DXとはどのような意味や定義になるのでしょうか?DXを定義すると新しいデジタル技術を使い、新ビジネス創出や新しい業務改革を実現し、企業の事業戦略を実行し成長させることです。シンプルにいうと「デジタルをビジネスに活用する」という意味です。デジタルテクノロジーの種類には、AI(人工知能)、RPA、IoT、データマネジメントなどがあり、DXはクラウドサービスやエコシステムがベースであるのが大前提です。DXは新しいデジタル技術という‘手段’ですので、企業が目指すべき姿になるためのDX活用である、ということを忘れてはいけません。では営業にDXを活用すると、どうような姿を目指すべきなのでしょう?
DXを活用した状態の「新ビジネスを創り、企業全体が成長している」の「新ビジネスを創る」の仕事には営業も関与するかもしれません。しかし主に経営企画部門やDX推進部門が技術部門と協力して、AI、RPA、IoTのデジタル技術を使い、新ビジネス創出をしていくでしょう。
では営業DXとはどんな状態なのでしょう?それは、まず現状の営業業務に対し「新しい業務改革による高い生産性向上を実現できている状態」にすることです。その次の順番として「新ビジネスで企業全体が成長する」ことに貢献していくべきではないでしょうか?
営業DXとはまず、日々の営業活動に対しDXを活用して改善し、生産性を高める作業から始めるべきです。しかし、まず組織を作ろう!とするのが企業です。「営業DX実現のためにデジタル営業チームを作ろう!」と専門組織ができてしまいます。「箱だけ作って魂入れず」の組織には、課題が波のように押し寄せてきます。デジタル営業チームは、非対面で営業をするスタイルで、オンラインツールと電話・メールを使って顧客と商談をしているだけで、「ただの訪問しない営業」になってしまいがちです。そしてデジタル営業チームは名前倒れの組織になってしまい、営業DXとはかけ離れた現実の課題と向き合うことになるのです。では、営業DXがうまくいかない理由は何なのでしょうか。
DX(デジタルトランスフォーメーション)はツールから入らない、その意味
営業DXを実現するために、組織から作らないことは絶対条件です。なぜかというと組織を作るとチームメンバーは「まず営業DXのためにツールが必要だ」と思うからです。武器無しでは営業DXなんか実現できない!と考え、DXツールを導入しようとするのです。営業DXと‘うたうツール’は世の中にたくさんあります。
【営業DXツールの種類】
- SFA(Sales Force Automationの略)→営業支援システム
- CRM(Customer Relationship Managementの略)→顧客管理システム
- MA(マーケティング・オートメーション) →ウェブサイトと連携する行動トラッキング機能
- AIチャットボット →ウェブサイトの質問をAIで回答や会話してくれる機能
- オンライン商談ツール、オンライン会議ツール、Web商談システム →オンラインで顧客と商談できるクラウドサービスの会議システム
- スマホ・タブレット・GPS(地図連携)を活用したDXツール
- セールスイネーブルメントツール(Sales Enablemenの略) →営業組織を継続的に強化し改善するための取組み。セールスイネーブルメントをサポートしてくれるツール
このように営業DXツールと呼ばれているものは、SFA/CRMから、最近のAIチャットボットまでヤマのようにあります。営業DXやデジタル営業チームのために、どうしてもひとつだけツールが必要だとすれば、オンライン商談ツールぐらいでしょう。その理由はオンライン会議でリモート打合せができなければ、訪問営業になってしまうからです。
営業DXを目指すためには現状の営業活動を把握し、分析をする作業から始めましょう。まずAs-Is (アズイズと呼びます)作業で、現状調査・分析で悪い部分をあぶりださないと、営業DXの姿は策定できません。次にTo-Be(トゥービーと呼びます)作業で、営業DXのあるべき姿を作成してみましょう。このように営業DXを進められれば、新しい業務改革による高い生産性向上を目指していけます。そして「新ビジネスで企業全体が成長する」に営業DXが貢献できるのです。
【営業DXがうまくいかない理由と順番】
- 営業DX専門の組織ができる
- 営業DXツールから検討・導入する
- 営業活動の現状調査・分析をしない
- 営業DXのあるべき姿の作成だけをしてしまう
【営業DXをうまくいかせるための作業の順番】
- 営業活動の現状調査・分析から始める(As-Is)
- 営業DXのあるべき姿の策定する(To-Be)
- As-IsとTo-Beの結果から、必要な営業DXツールを検討・導入する
- 事業に貢献できるのであれば、営業DX専門の組織を作る
「組織を作る」や「ツールを導入する」は、さいごでいいのです。営業DXを開始する前に必要であれば検討するのであって、まず営業DXに大事な作業は、営業活動のAs-Isから始め、To-BeでDX新ビジネスに貢献する営業の姿を描きましょう。営業DXを成功させるための本当の意味とは、ツールから入らず、DX実現のための「今とこれから」に向き合うことなのです。
非接触営業力で新規リードを商談化にできる
営業DXを実現するためには、ツール導入や組織作りから入らず、営業活動の今とこれからに向き合うことから始めるポイントは理解できました。企業によって営業DXを実行するための課題や目標はさまざまですので、みなさんで話し合ってみましょう。しかし、どの企業でも営業DXを実現するために、共通の課題になるテーマがあります。それが「非接触営業力の向上」です。
顧客と会えない日々が続きました。今後、訪問営業ができるようになったとしても、顧客は非接触・リモートで打合せできる商談スタイルの‘味’を覚えてしまいました。移動時間が不要で、全国どこからでも参加でき、柔軟に時間調整ができるのは大きなメリットです。顧客はDX実現のためにたくさんの情報収集をしたいわけですから、初回商談は今後も非接触商談を営業に求めてくるはずです。具体的に商談を進めていく商談化や案件化以降は、顧客と直接会えるでしょう。しかしやはり新規リードからの初回商談は、顧客は効率を重視し、非接触面談になるはずです。
「訪問できるリアル商談」と「訪問できないバーチャル商談」では難易度が大きく変わってきます。非接触営業の方が圧倒的に難しく、営業スキルが求められます。理由は顧客とのコミュニケーションがとりづらく、製品・サービスの良さを伝えにくいからです。営業DXのベースになるとも言える非接触営業力の向上を目指していかなかければ、2回目以降の商談化に向かっていきません。では営業DXを成功させ、新規リードから商談化を増やすための非接触営業力向上のポイントはどんなものがあるのでしょう?
【非接触営業力向上のポイント】
- 非接触営業は、とにかくリモート準備と事前確認が多いので、ヌケモレがないようにチームで標準化する
- 名刺交換ができないので、顧客全拠点の参加者の確認をして、相手の名前をメモする
- 顧客を名指しで呼ぶシーンを、意識的に増やす。例「鈴木さん、ここまででいかがですか?」説明中に、顧客の名前を多く登場させられるように、リアル商談よりも多めに商談をいったん切る
- 「みんなで打ち合わせをしていますよ」という、集団的な参加意識を芽生えさせるムードをつくる。オンライン商談はコメントや意見に入りづらいので、営業から顧客に声をかけてあげる
- 今後の進め方や次回アクションを、強力に刷り込んで終了する
「訪問できるリアル商談」以上に、「訪問できないバーチャル商談」で意識すべきポイントを簡単にご紹介しました。実際の製品・サービスのデモや説明手法など、非接触営業力を極めるためには、まだまだたくさんやるべきことがあります。営業DX実現のためのベースになる非接触営業活動のAs-Isをやってみてから、To-Beであるべき姿を描いてみましょう。何度も言いますが、これからも初回商談は非接触営業になるシーンがずっと続いていきます。営業DXと密接に関係してくる非接触営業力向上という課題に、正面から向かっていってほしいと願います。
まとめ
DX実現はこれからの企業の命題です。DXとはAIやキャッシュレスなどの新しいデジタル技術を使い、新ビジネス創出や新しい業務改革を実現し、企業の事業戦略を実行・成長させることです。営業は「売る」のが仕事です。DXによる新しいビジネスに営業が貢献し、事業を成長させるための取組みが営業DXなのです。そしてDXの先には必ず顧客がいます。顧客志向で営業DXを考えてみましょう。非接触営業は今後も続くことも忘れずに、チームで話し合ってみてください。
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