顧客とユーザーの違い、顧客起点と顧客視点の違い、顧客視点とは何か、顧客に関する言葉の定義はわかりにくいものです。そこで本記事でしっかりと整理しながら考えていきたいと思います。さらに顧客視点に立ち営業視点で考えるマーケティング手法には、良い営業視点と悪い営業視点があるようです。そして顧客視点のマーケティング事例の良い事例と、悪い事例につながっていきます。 顧客視点と営業視点の関係性をマーケティング手法や事例にそって解説していきます。
目次
顧客とユーザーの違いとは?
まず顧客に関する様々な言葉を整理していきたいと思います。まずは顧客とユーザーの違いについてです。顧客とはすでに取引のあるお客様を指すようなイメージがありますが、合っているのでしょうか?なぜなら新規顧客、見込み顧客、既存顧客という言葉もあり、すでに取引のあるお客様は既存顧客だからです。
さらにユーザーという言葉もあります。顧客が英語になっただけ?というイメージがありますが、ユーザーを日本語にすると利用者や使用者という意味です。IT業界でクラウドサービスやソフトウェアの利用者や使用者をユーザーと呼びます。ウェブ検索したり、Web広告みたりをする人をユーザーとも呼びますので、インバウンドマーケティングのようなGoogle検索をする人をユーザーと表現しますね。
しかし、パートナービジネスで商流が複雑な場合、実際に製品・サービスを使い、お金を払うお客様をエンドユーザーと呼びます。だんだん顧客とユーザーの使い方が見えてきました。
<表1>
総称 | 商談化 案件化 | 受注時 | サービスの利用者 |
顧客1 | 見込み顧客 | 新規顧客 | ユーザー |
顧客2 | 既存顧客 or ユーザー | 既存顧客 | ユーザー(又はエンドユーザー) |
表1をご覧ください。顧客、見込み顧客、既存顧客、新規顧客、ユーザー、エンドユーザーをまとめると、このようになるのではないでしょうか?顧客とユーザーの違いは、顧客とは取引のあるお客様はもちろんのこと、まだ取引がなくても取引の可能性があるお客様も含める総称です。ユーザーは製品・サービスを利用する人で、お金が発生しないクラウドサービスのようなケースもあるので取引は関係がありません。ユーザーは取引よりも会員であることの方が重要かもしれません。顧客とユーザーの違いがわかったところで、次は顧客起点と顧客視点の違いについて整理してみましょう。
顧客起点と顧客視点の違いとは?
顧客起点と顧客視点の違いとは、何でしょうか?顧客に対する‘起点’と‘視点’の違いなのでしょうが、これまたわかりづらいですね。マーケティング・営業の視点から整理してみましょう。
まず 顧客視点とは、顧客から見えるもの、顧客からの見え方です。 マーケティング・営業の視点で言うと、顧客から見える会社や製品・サービスです。みなさんの会社や自社の製品・サービスが顧客からどのように見えているのか、ということです。
そして顧客起点です。 顧客起点とは、客観的に顧客側で見つめてみるということです。 顧客視点は顧客からの見え方ですが、顧客起点はマーケティング・営業の視点で言うと、みなさんの会社や自社の製品・サービスを顧客側の立場になってみて、どんなことを顧客が求めているのか客観的に整理する作業です。
もうひとつ顧客志向という言葉もあります。 顧客志向とは、顧客のメリットに対して企業側がビジネスを考えるという意味です。 顧客志向につきましては下記記事に詳しく記載してみますので、ご覧ください。<記事>→ 顧客志向とは?顧客志向経営からマーケティングと営業を実践しよう
【言葉のまとめ】
- 顧客視点とは顧客から見えるもの、顧客からの見え方です。
- 顧客起点とは客観的に顧客側で見つめてみるということです。
- 顧客志向とは、顧客のメリットに対して企業側がビジネスを考えるという意味です。
本記事ではお互いに取引をする顧客と営業の視点に沿って、整理していきたいと思います。ここからは顧客視点に立って、営業視点を入れながらマーケティングを考えていきましょう。
顧客視点とは? 顧客視点に立つ+営業視点も入れてみる
顧客視点とは、顧客から見えるもの、顧客からの見え方です。顧客からみなさんの製品・サービスがどのように見えているのかということです。顧客視点に立つ理由は、顧客の立場から、みなさんの製品・サービスはどのように映っているのかを考えるためです。顧客から見て特長や機能はどんな風に感じられているのか、価格・費用は高く感じているのか安いと思ってくれているのか、競合他社と比較して優位な点や優先順位はどうなのか、などを考えてみることでしょうか。
でもちょっと待ってください。これらは営業視点から顧客視点の立場になりすぎています。機能や価格・費用、競合状況は営業視点からいきすぎています。このような顧客視点もありますが、顧客視点に立つということは、もっと客観的に顧客側に立つ必要があります。前述した‘顧客起点’も入れるべきなのです。
顧客はどんな業務をしていて何で困っているのか、どんな問題を抱えていて解決のヒントを探しているのか、明確な課題となっていて解決策の製品・サービスを見つけようとしているのか、
などが顧客視点に立ち、客観的に考えた結果ではないでしょうか。
マーケティング・営業は顧客に尽くしすぎると、ボランティアになってしまうと言われます。顧客視点に立つといっても、売るために見つめ直す作業ですから、営業視点が入るのは当然です。しかし、営業視点が入りすぎた顧客視点に立つと、機能や価格や競合の発想になってしまいます。このような発想をプロダクトアウトと言います。製品・サービスを売りたいために、顧客視点になっているということです。これは悪い営業視点と言えるでしょう。
本当の顧客視点に立つということは、顧客のお困りごとから考えます。そして問題と課題が解決できる製品・サービスを作り、売っていきます。顧客が求める製品・サービスを市場全体から考えていくことをマーケットインと言います。これは良い営業視点と言えます。これぐらいの発想と顧客視点で製品・サービスを考えていきたいですね。
一度、営業・マーケティングチームでディスカッションをして整理してみましょう。顧客視点に立った売り方や、顧客が求める製品・サービスが見えてくるはずです。
顧客視点に立ちながら、良い営業視点も入れていく意味がわかってきたところで、次はマーケティング手法について事例を交えてご説明していきまます。
顧客視点のマーケティング事例 良い事例と悪い事例
顧客視点に立ちながら、良い営業視点も入れる重要性が理解できたところで、顧客視点のマーケティング手法をご紹介いたします。顧客視点のマーケティング手法にも、悪い営業視点を入れてしまう場合と良い営業視点を入れてしまう場合があります。わかりやすく事例にそってご紹介していきましょう。
IT業界の事例でご紹介します。IT業界ではクラウドサービスが普及しています。世界に比べ、日本はまだまだクラウド化に遅れていると言われていますが、クラウドの価値を顧客視点で伝えられているのかという疑問が残ります。クラウドサービスの価値、つまりメリットをまず挙げてみましょう。
【事例:クラウドサービスのメリット】
- 自社にサーバを構築しなくてもよいので、専門のサーバ管理者が。不要
- 過去に自社サーバはトラブルで利用停止になることがあったが、クラウドは可能性が低い
- 利用したいサービスをSaaS(ソフトウェア試用)ですぐに使える
- 別々のクラウドサービス同士をAPI機能により、エコシステムとして簡単に連携できる
- クラウドサービスが会社に合わなかった時、月額契約ですぐにやめられる
- 自社サーバ構築費、ソフトウェア費、サーバ管理者のコストとクラウドサービスの月額を比較して、安い場合はメリットである
このようなクラウドサービスのメリットがあります。私が顧客視点に立ってメリットを整理してみましたので、7つのうち大半が合うようならクラウドサービスを導入するメリットがあるでしょう。しかし、クラウドサービスのキャッチコピーをウェブ広告で見ていると、顧客視点に立っていない悪いマーケティング事例があります。
【顧客視点に立っていない悪いマーケティング事例】
- 「さあ、クラウドに上がろう」
- 「国産クラウドという選択肢」
- 「マルチクラウドを支援します」
- 「クラウドなら○○製品」
- 「クラウド技術で革新を」
クラウドサービスのキャッチコピーは一番大切なメッセージです。この次にサブメッセージや詳細説明があります。しかしクラウドサービスの特長をひと言で伝えるキャッチコピーは、顧客は一番に見るメッセージです。悪いマーケティング事例は、顧客視点に立っておらず、悪い営業視点だけでクラウドサービスを表現しています。
顧客はクラウドで何のメリットがあるのか知りたいのに、クラウドは当たり前、クラウドなら我が社の製品、難しい専門言葉で説明、という感じで営業視点だけでアプローチしています。これでは悪いマーケティング事例であり、営業が売りたい部分を特長にしていて、顧客のことをあまり考えていません。完全にプロダクトアウト型の発想です。では、顧客視点に立っている良いマーケティング事例とはどんなものでしょうか?
【顧客視点に立っている良いマーケティング事例】
- 「○○業務をラクにする」
- 「安価・安全・使いやすい防犯カメラクラウド」
- 「みんなで使える○○業務クラウド」
- 「クラウドはスピードと効率で○○業務を強くする」
- 「顧客を増やすクラウドサービスがある」
顧客視点に立っている良いマーケティング事例は、クラウドは当たり前!一番いい!という営業視点のメッセージを出していません。 どのキャッチコピーも、顧客の業務をよくするもので、顧客の問題を解決するためのクラウドサービスですよ!という表現になっています。顧客視点に立ってクラウドサービスを考え、良い営業視点を入れているので、顧客のメリットをクラウドサービスで届けられるメッセージになっているのです。
このように顧客視点に立って、良い営業視点で考えていけば、マーケティングアプローチはよくなるはずです。顧客の課題解決策が製品・サービスになるという基本を忘れずにマーケティング施策を実施していきましょう。
まとめ 企業戦略でも顧客視点を取り入れよう
「顧客視点に立って、営業視点で考えるマーケティング手法」と題して、ご紹介してまいりました。いろんな言葉がありますが、顧客とユーザーの違い、顧客起点と顧客視点の違い、顧客視点とは? がご理解いただけたと思います。
顧客視点に立ち、営業視点も入れてみることも重要です。しかし、営業視点には良い営業視点と悪い営業視点があります。悪い営業視点で顧客視点に立っても、プロダクトアウト感がそのまま出てしまいますので、注意しましょう。
製品・サービスの売り方だけでなく、企業戦略でも顧客視点を取り入れましょう。会社が進んでいくべき事業計画や企業理念を顧客視点で見て、顧客起点で客観的に顧客側から見つめてみるべきです。企業戦略も製品・サービスの売り方もすべては顧客志向で考えてみてはいかがでしょうか。
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