先日、電気自動車(EV)を検討し、2社の競合の末、あるディーラーに決めました。その時の提案内容に新しい営業スタイルと古い営業手法を、対極的に体験してしまいました。そして私はその2人の営業を「電気自動車営業」と「ガソリン営業」と名付けたのです。電気自動車の提案からクロージングまでの話をさせてください。時代の変化についていくための営業マンの今後や仕事内容を解説いたします。製品・サービスが大きく変わる時、営業の気づきとして参考にしてください。
電気自動車営業とガソリン営業とは?
「電気自動車営業」と「ガソリン営業」とは、聞きなれない言葉です。「ガソリンを入れたり、電気をチャージする営業時間のこと?」と思われるかもしれません。とても一般的には使われていないように感じます。実はその通りでして、私が考えた「〇〇営業シリーズ」の表現方法です。
「〇〇営業シリーズ」とは、営業の種類や良い営業・ダメな営業を表現する時の私の言い方です。例えば、営業の種類や良い営業であれば「アカウント営業」や「提案営業」があります。対して、ダメな営業であれば、「やってはいけない〇〇営業」という特集がありますので、詳しくは右記の「上司が教えてくれない 初回訪問のやり方」をの記事をご覧ください。
本記事で「電気自動車営業」と「ガソリン営業」とは良い営業・ダメな営業を表現しています。どちらが良い営業でどちらが悪い営業なのでしょうか?ちなみに電気自動車が良い車で、ガソリン車が悪い車というわけでありません。どちらの車も良さがあり、素晴らしいと思います。
「電気自動車営業」と「ガソリン営業」の話をするためには、私の体験をご説明しなければなりません。先日、私は電気自動車を購入したく、比較検討に入りました。いろんなディーラーに行った結果、自動車営業Aさんと自動車営業Bさんが最終交渉者として残りました。わかりやすくご説明したいので、Aさんが「電気自動車営業(以下、EV営業)」、Bさんが「ガソリン営業」と表現します。このEV営業とガソリン営業の提案内容に、今後が営業の姿が明確に映し出されていたのです。
1)ガソリン車を提案する 売れない営業のスタイルだった
私が欲しかったのは電気自動車なので、ガソリン営業がガソリン車を提案したわけではありません。電気自動車をしっかり提案してくれました。商談の前半戦では私は「ガソリン営業に決まるかな」と本当に思っていたくらい、良い対応でした。
電気自動車はまだ歴史の浅い車なので、様々な仕様を営業は勉強しなければなりません。バッテリーの容量や充電時間、モーターの性能や仕様はとても大事です。ガソリン営業も新しく発売された車ながらも、よく勉強して説明してくれました。「車自身」の説明や提案には私は満足していました。
以前から電気自動車に乗っていた私もそうですが、電気自動車に乗るユーザーにはガソリン車とは違うたくさんの問題点があります。もちろん車の性能や仕様で車種を決めますが、それ以外の「大切な部分」の提案が必要です。まさに「電気自動車と暮らし」についての提案がなければならないのです。
しかしガソリン営業は「大切な部分」については深く触れてくれませんでした。私からも切り出しててみましたが、その「大切な部分」について深掘りした提案がなかったのです。結局、ガソリン車と同じ「性能」と「価格」の提案が中心でした。「ガソリン車に乗る暮らし」の営業スタイルで、EVの暮らしの問題点への改善提案はありませんでした。まさに「古いやり方のまま」の営業提案だったのです。
ガソリン営業は友人の紹介だったので、売れている営業だと聞いていました。それもかなりのトップセールスでした。ところが、古い習慣のまま、最終段階のクロ-ジングに入っていきました。
いくら売れている営業だとはいえ、時代の変化についていけないと売れない営業になってしまいます。売れる営業のポイントは顧客の変化に対応していることです。顧客の変化に対応し続ける営業こそが、顧客の課題解決へ提案ができ、売れる営業になれるのです。このガソリン営業はしっかり対応はしてくれたのですが、提案内容に今後の営業の姿が映し出されていました。
2)電気自動車(EV)を提案する 脱炭素営業のコツ
一方、同じ電気自動車を提案してくれたEV営業はガソリン営業とは違い、おとなしい感じで最初は「大丈夫かな・・」と不安になるようなイメージでした。私が前半戦ではガソリン営業に決まるかな?と思ったのも、このような頼りなさからでした。
電気自動車の性能や仕様についての最新情報は、ガソリン営業の方が素早くキャッチしていました。EV営業の方が遅く、私の方が最新情報を知っていて、指摘していた時もありました。しかし徐々の最新情報に追いついてきてからのEV営業の提案は違いました。電気自動車に乗るユーザーの「大切な部分」、つまりEVの暮らしの問題点に触れてきたのです。
電気自動車に乗るユーザーは自宅に普通充電設備を持っています。ディーラーにある急速充電設備を提案する自動車営業がいますが、それは緊急時の時だけです。みなさんのスマートフォンも基本的には夜に充電するように、電気自動車も夜に充電するのが基本スタイルです。満充電になるまでの時間がタップリあることと、電気代が安いことが理由です。
しかし古い普通充電設備を持つ私のようなユーザーは、新しい電気自動車のバッテリー容量の大規模化から、自宅の普通充電設備の出力を上げたいと思っています。普通充電設備出力電力は3.6kWで、電気自動車のバッテリー容量が100 kWになれば、満充電までに30時間もかかります。高出力の普通充電設備にすれば6.4kWの数値に上がるので、充電スピードが倍近く上がるのです。
電気自動車はガソリン車のように3分もあれば満タンにできるわけでなく、満充電までに時間がかかります。この改善ポイントが「大切な部分」なのです。まさに「電気自動車と暮らし」についての提案をユーザーは期待しているのです。
EV営業はこの「大切な部分」について具体的な提案をしてきました。 ディーラーが提供している高出力の普通充電設備10.0kWを格安で設置するというのです。10.0kWの充電設備は市販では売っておらず、設置もできません。電気自動車のバッテリー容量が100 kWも約10時間弱で満充電が完了できます。つまりEV営業は「電気自動車と暮らし」の課題解決の提案を見事にしてきたのでした。
さらに提案営業として踏み込んできました。それは補助金・助成金についてです。EV車の普及のために国は補助金・助成金を出し、ユーザーに求めやすく後押しをしています。国が決めることなので来年度の4月以降にならないと具体的な金額はわかりません。しかし様々なディーラー関係の情報から「来年度はこれぐらいの金額の予定」と教えてくれたのです。私は「EV営業」から「脱炭素営業」と名前が増えるぐらい、サステナブルな営業のコツをよく理解しているなあ・・と感じた瞬間でした。
車は半導体不足から非常に納期がかかっています。私が欲しい電気自動車も納期は未定でした。下取車こそ、納車時にしか下取り価格はわかりません。でもEV営業は納期未定でも車の仕様と値引き後の価格までは確定させ、普通充電設備10.0kWの格安提案のコミット、補助金・助成金の来年度情報を、クロージング段階で提案してきたのです。こうして、私の電気自動車の決定はEV営業:Bさんのディーラーで決まりました。
一方、ガソリン営業は車の仕様と値引き後の価格までは確定させたものの、それ以外は「納期未定のため、現段階ではまだコミットできませんでした・・」と、失注連絡をした時に言っていました。会社として未定なものは約束できなくても、高出力な充電設備や補助金・助成金の提案はできたはずです。それが営業の目指すべき、提案営業の姿なのではないでしょうか。
私の電気自動車を選ぶポイントには5つの優先順位がありました。 1)性能・仕様、2)価格、3)充電設備、4)補助金・助成金、5)脱ガソリン・環境への配慮の順番でした。
5)は脱ガソリンから、地球や環境への配慮という気持ちもありましたが、燃費対策の方が勝っていたかもしれません。今後は「自分の地球に将来のために貢献していく」という脱炭素思考、サステナブルな気持ちも強くなっていきたいです。今後の脱炭素営業のコツは「地球への配慮」をユーザーに提案し、サステナビリティの意識を高めていく必要もあるでしょう。
まとめ
私のプライベートな自動車購入の話で恐縮でした。しかし今回の電気自動車の商談で、古い営業スタイルのままで変わろうとしていない姿勢と、顧客の期待に応えらない姿を見て、みなさんに文章で伝えたかったのです。電気自動車商談からEV営業とガソリン営業の提案内容に、今後のすべての営業に参考にしてもらいたい姿が映し出されていたでした。
どんな時代でもユーザーの変化に営業はついていかなくてはいけません。営業に「これでいい」「このままのスタイルでいい」ということは絶対にありません。時代に柔軟に変化し、旧態依然の営業スタイルのままになっていないか、自分自身に問い続け、常に変わっていける営業こそが売れ続けるのです。
「電気自動車営業(EV営業)」や「ガソリン営業」「脱炭素営業」と勝手な名前をつけて失礼いたしました。みなさんも買うときにはユーザー側になります。私の仕事柄かもしれませんが、いつもとは逆の顧客の立場で営業を楽しんでみると、いろんな発見がありますよ。車だけでなく、住宅、家電、宝飾品など、営業と様々な交渉ができるジャンルでは、買う側で営業を観察してみましょう!
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