営業スキル

決裁者に営業がアプローチするためには決裁プロセスを知ろう

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営業は決裁者にアプローチをしたいものです。なぜなら、決裁者に直接提案できるので案件化率や受注率が上がるからです。しかし、決裁者にはそう簡単に接触できません。決裁者に会うためには、まず企業の決裁プロセスを知ることが大切です。そこで、決裁者・決済者・承認者の違いや決裁プロセスの種類を解説していきます。決裁プロセスに対応するための例文や情報収集のやり方もご紹介します。

決裁者とは?決済者、承認者との違い そして決裁と決済を間違えると思わぬミスに!

上場企業、非上場企業に関係なく、企業はコンプライアンス(法令順守)が重視されています。なぜなら、ステークホルダー(利害関係者)である、株主、顧客、従業員・経営者の利益のために社会道徳や規範を守り、取締役がコーポレートガバナンスや内部統制を構築し、実行する義務があるからです。

従って、ステークホルダーの利益になり、企業のコンプラを守るために社内に決裁者を置きます。決裁者とは、組織の最終決裁を行う権限を持つ人のことです。決裁権は社内規定に記載されている決裁権限表や職務権限表をベースにして、定められた役職者に付与されています。

決裁者と承認者という呼び方があります。この違いも説明しておきます。決裁とは申請や稟議がまわってきた最終工程であるのに対し、承認とは申請や稟議が決裁されるまでの途中工程のことを指します。つまり、決裁者は最終決裁をする人、承認者は途中工程の承認をする人という違いがあります。

営業は「(最終の)ご承認者はどなたになりますか?」という聞き方も間違いではありません。しかし、正確には「最終のご決裁者はどなたになりますか?」と聞いた方がいいでしょう。なぜなら、企業担当者も「決裁者」と「承認者」の違いはハッキリと理解していないからです。

意味が重複していますが、「最終のご決裁者は?」と言うようにしましょう。本記事でそれを決裁者と記載して、ご説明を続けていきます。

決裁者は社内のあらゆる決裁を実行します。人事、総務、経理、購買業務だけでなく、営業、設計、生産、開発業務等の企業内の業務や社外との取引を行う際に決裁を行います。本記事では営業をテーマにしていますので、営業が企業担当者に対し提案・見積をして、決裁者に最終決裁をしてもらうまでの流れをご説明していきます。

「決裁」と「決済」という2つの言葉があります。似ていますが、使い間違えると営業面・受注するための大きなミスになるかもしれませんので覚えておきましょう。決裁とは企業が発注に際し組織の意思決定や決裁プロセスのことで、決済は金銭取引の完了や支払処理のことです。

つまり、営業が提案中にもかかわらず、メール文に「決済の程をよろしくお願いします」と記載すると、企業の決裁者からは「まだ発注もしていないのに金を払えと言っているのか?」と思われ、受注に対して悪いイメージを与えるかもしれません。思わぬミスにつながりそうな単語ですので営業が提案している時は、正「決裁」、誤「決済」と覚えておきましょう。

そして、企業には決裁プロセスというルールがあります。これはどのようなものなのでしょう?

決裁プロセスの種類  営業が確認すべき例文を紹介

そして、企業には決裁プロセスがあります。プロセスとは過程のことですので、決裁プロセスとは最終的に決裁が下りるまでの流れやルールになります。簡単に言いますと決裁者が判断を下すために、申請者が申請し、承認者は承認し(複数の承認者がいるケースが多い)、決裁者が決裁をする流れが決裁プロセスです。

決裁プロセス 申請者 → 承認者 → 決裁者 は人の数(者の数)こそ様々ですが、企業ではこのような流れやルールになります。みなさんに覚えてほしいのは、決裁プロセスの種類です。

決裁プロセスの種類には手段(ツール)と方法(ツールを使った具体的なやり方)があります。主な決裁プロセス種類の手段と方法には以下のようなものが存在します。

決裁プロセスの手段(ツール)

  • 紙の稟議書を手で回覧・捺印して回す
  • エクセルの稟議書をメールで回す
  • ワークフローシステムで回す
  • 起案書で回す (稟議書と似ているが、経営判断のためにまとめられた書類)

決裁プロセスの手段(ツール)にはこのように様々な手順があります。いずれにしても承認者や決裁者が判断を下すために、必要な内容(申請理由・仕様・金額等)が記載されていて、あとは組織で承認→決裁するしくみが違うだけです。申請→承認→決裁とはワークフローのことですので、手段(ツール)が違うということですね。

このケースで営業が確認するべき重要な点は、このワークフローに関与する承認者や決裁者が多いのか? 少ないのか? 時間はかかるのか?決裁者はつかまるのか?(出張や外出が多いケース)等の状態についてです。企業別のワークフローの手順を確認してみましょう。

Aケース:商談を重ね提案・見積を提出し、企業担当者がこれから決裁を取るためにワークフローを回す、というケース(相見積もりではない)で聞くべきことを例文でご紹介します。

決裁プロセスの手段に対する、例文1

営業「ワークフローシステムで決裁を回す場合は、決裁が下りるまでの期間はけっこう遅いのですかね?」 → 遅い想定で聞いた方が良い

企業担当者「いや、いつもそんなにかからないですよ。1週間ぐらいですかね」 →意外に早い事実が把握できた

決裁プロセスの手段に対する、例文2

営業「稟議書で決裁を回す場合は、決裁が下りるまでの時間はけっこうかかるのですかね?」 → 遅い前提で聞いた方が良い

企業担当者「稟議書を紙で回すのでよく止まってしまって、どこで止まっているかわからないケースがあります。決裁者のA部長も外出が多いので・・」 →実際に遅い事実が把握できた

もちろん、提案している製品・サービスの金額や内容にもよりますので、ワークフローの手順は様々です。しかし、「申請する」「ワークフローで回す」「稟議書で」と企業担当者が言った時に、営業は例文1や2のような決裁期間や時間に関することが意外に聞けていません。

ぜひ、このような言葉が企業担当者から出てきた場合は、決裁期間や時間の「事実」を聞きましょう。事実を把握する貴重なタイミングですので、このチャンスを逃さないでください。

決裁プロセスにツールを利用する際には、比較的金額が小さなものが多いです。逆に、金額が大きな製品・サービスを提案する場合には、決裁プロセスの方法の確認が重要になってきます。

決裁プロセスの方法(ツールを使った具体的なやり方)

  • 検討プロジェクト●●チームで決裁する (その後、形式的に決裁を回す)
  • 経営会議で決裁する
  • 取締役会決議

決裁プロセスの方法(ツールを使った具体的なやり方)にはこのような会議体による手順が一般的です。ワークフローシステムで回して証跡を残し後に会議体に欠ける場合もありますが、逆の場合もあります。

営業が提案している場合、検討プロジェクト●●チームの責任者にも接触できる場合が多いので、決裁者に確認ができます。取締役会決議はM&Aや事業提携などの約款で決められている決議事項なので、営業の提案レベルではあまりないかもしれません。

営業が確認するべきケースは、経営会議で決裁する時です。経営会議とは社長を始め、取締役と執行役員、本部長や事業部長も参加します。金額に応じて、執行役員会、部長会等で決裁する場合もあります。

経営会議は企業の経営者が集まる場ですので、どのようなポイントで決裁されたり否決されたりするのか? わかりません。企業担当者が「経営会議では提案内容、コスト、実績、比較検討の結果等を重視する」と教えてくれるかもしれませんので、決定ポイントは聞いておきましょう。

Bケース:商談を重ね、提案・見積を提出し、企業担当者が「この金額だと経営会議で決まります」というケース(相見積もりではない)で聞くべきことを例文でご紹介します。

決裁プロセスの方法に対する、例文3

営業「経営会議は月に何回あるのですか?毎週ですか?月に2回ぐらいですか?」 → 回数の例を出して聞いた方が答えやすい

企業担当者「毎週、月曜にあります。私と上長で一緒に説明します」→ 毎週、経営会議が開催されていることがわかった

「経営会議で」という言葉が出てきた瞬間、営業が一番意識しなければならないのは、経営会議が開催される回数と日程です。なぜなら、回数と日程を聞かなければ、営業は決定時期を把握できないからです。

例えば、経営会議が月に2回(第2月曜と第4月曜に開催)とします。経営会議は営業のA提案だけでなく、数多くの事案が上がっています。経営会議で議論が深まると9月の第4月曜に上がるはずだったのに時間切れで、10月の第2月曜に持ち越しになってしまい、上期に間に合うはずのA提案の受注が下期にずれ込むことがあります。

経営会議が毎週月曜開催であれば月に4回のチャンスがありますが、月に1回や2回だと営業が受注したい時期がヨメなくなるケースがあるので注意しましょう。簡単な質問に聞こえますが、「経営会議で」と企業担当者が言った時に、営業は例文1のような開催時期や回数に関することが意外に聞けていません。ぜひ、このような言葉が企業担当者から出てきた場合は、経営会議の回数と日程の「事実」を聞きましょう。

7つのやり方に売上向上のヒントが隠されている
営業・マーケティング 7つのやり方  サービス基本ガイド

決裁者にアポを取りアプローチするための手法

営業は決裁者や意思決定者(DMU)には会いたいと思うはずですが、会わなくてもいい・・・と思っている営業も中にはいます。少し驚きの事実ですが、意外に最近の営業には存在します。詳しくは下記記事をご覧ください。

記事リンク  意思決定者(DMU)に向かっていかない営業、動く営業の違い

営業が決裁者にアポを取りアプローチするためには様々な手法があります。まずはアポを取るための手段の前に、企業のルールやお作法からやるべきことを学んでみましょう。

決裁プロセスに乗る前に、「予算感が合わない」と企業担当者から営業が言われてしまっては、失注したり競合他社に負けてしまったりします。そうならないような予算感の聞き方があります。詳しくは下記記事をご覧ください。

記事リンク  予算感が合わないと言われないために 聞き方を例文でご紹介

決裁者から決裁を取る約1年から半年前に、営業が提案する製品・サービスが予算取りに入っておく必要があります。予算取りに関するスキルや手法、見積がなくとも予算に入れる方法を知っておきましょう。詳しくは下記記事をご覧ください。

記事リンク  予算取りの意味と時期を、営業は学んでみよう!予算執行も解説

記事リンク  予算取りに見積もりと資料がなくとも予算獲得ができる方法

そして、さいごは営業が決裁プロセスや決裁者に関して取得すべき、情報収集のやり方です。情報収集項目はどんどん進化していますので、ぜひ詳しく知っておいてください。

BANT(バント)だと、A=Authorityの略:オーソリティ・決裁者に関して情報収集をします。

MEDDPICC(メディピック)だとEconomic Buyer:決裁権限者、Decision Criteria:意思決定基準、Decision Process:意思決定プロセスに関して情報収集をします。BANTとMEDDPICCの詳しくは下記記事をご覧ください。さらに詳しい内容が知りたい方は、右記のMEDDPICCガイドブックをダウンロードください。

記事リンク  MEDDPICC(メディピック)とは?外資系営業のフレームワークとして広がる理由

営業が情報収集をして事実を聴かずして、受注はできません。ぜひ実行していきましょう。

まとめ

「決裁者に営業がアプローチするためには決裁プロセスを知ろう」と題して、ご紹介してまいりました。決裁者と決済者、承認者との違いがご理解いただけたと思います。

決裁プロセスの種類には手段(ツール)と方法(ツールを使った具体的なやり方)があります。例文にあったようなポイントを押さえて、BANTやMEDDPICCを活用しながら情報を集めてください。

「営業は事実を聴かずして、受注はできない」、この基本を徹底して、決裁者にアプローチしていきましょう。さいごにもう一度、言いますが「経営会議で」と企業担当者が言ったら、敏感に反応して例文3に聴いてくださいね! これは受注タイミングを把握するために重要なポイントです。

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