第1章 営業・マーケティングのやり方(準備編)

営業・マーケティングのプロセスを設計するために

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営業部とマーケティング部がうまく連携するためには、それぞれのプロセスを設計しなければなりません。しかし業務フローのような設計になってしまっては誰も読まず、組織に浸透しません。実際に作成するためにはどうすればいいのか、作り方の例を参考に実践してみましょう。

営業・マーケティングのプロセスを設計する① 分業MAPの作成

マーケティングは顧客に情報発信することを中心に営業の新規活動を担い、営業は問合せから商談化や案件化につなげていく。今の時代、営業・マーケティングの分業は絶対に必要だ。分業の範囲を決め、更に営業・マーケティングの細かなプロセスに落としていく。必要な作業を営業・マーケティングチームに認識してもらうために、アウトプットを作らなければならない。何度も言うが大事なポイントは「まず大きな分業」を決めて、「細かな連携プロセス」を定義していくというやり方で進めてほしい。

 では分業とはどんなイメージだろう。簡単に言うと営業・マーケティングチームが、売るためのお互いの活動を示したものである。「大きな分業」は営業・マーケティング分業MAP(本ブログでは以下、分業MAP)と呼んでもいい。「細かな連携プロセス」は営業・マーケティングプロセス設計図(本ブログでは以下、プロセス設計図)と言ってもいい。組織に根付くネーミングを皆さんで決めてほしい。

 まず分業の範囲を決めるイメージをつかむため、私が作成した下記、分業MAPを見てもらいたい。まずお断りから入ってしまうが図2の顧客の購買プロセスの「比較検討」「購買」の営業の進捗は、SFAで細分化して管理していく必要があるが、営業・マーケティングの大きなプロセスを決める段階では割愛をすることにする。(例えばSFAの案件管理では進捗確認のために確度が必要になる)伝えたいことは営業の案件管理では顧客の購買プロセスは軽視しがちで、「ヨミ」のような確度が入ってくるということだ。しかし営業・マーケティングのプロセス設計段階ではヨミは必要ない。顧客の購買プロセスを中心にすべての営業・マーケティングのプロセスを設計するのだ。営業は初回訪問後のリアルな顧客の購買プロセスを、顧客との接点の中でつかんでいく。案件の検討が進んでいく中でたくさんのステークホルダー(顧客の利害関係者)が登場するので、営業は商談のヨミを見極めながら進めていくシーンが多いというわけだ。

しかし営業・マーケティングのプロセス設計の前半、認知→関心・興味の段階ではリアルな接点が持てていない以上、ヨムことはできない。顧客がホームページで体験していること、つまり顧客の購買プロセスの動きをベースに捉えていくしかないためだ。

 このような理由で顧客の購買プロセスを中心に営業・マーケティングのプロセスを設計していくわけだが、もう一つ重要なことは顧客・マーケティング・営業のそれぞれの活動の中で進んでいく状況、つまりお互いの進捗を合わせなければならないことだ。顧客の状態、マーケティングのステージ、営業の進捗状況を顧客中心に設計するということだ。よくゴチャまぜになりやすいが、活動と進捗は違う。活動は見込みをランクアップさせていくために必要な動きのことで、進捗とはその状態を組織で共通した言語で把握することだ。

 プロセスは日本語にすると過程と言われるが、過程は営業・マーケティング用語としてわかりづらい。そこで私は活動と進捗を合わせた相称をプロセスと呼んでいる。売るために必要な動きでありその状態を捉えるためのすべての活動のことだ。この分業MAPや営業・マーケティングプロセス設計図では、まだ接点を持っていない顧客の活動と進捗が細かくわからないので購買プロセスと表するが、営業・マーケティングは自社内で細かく管理していくために、活動と進捗を決めるべきだと考えている。いろんな呼び名があり社内に定着する呼称でよいと思うが、顧客の購買プロセス(状況)を中心に据え、分業MAPを作ること。そして「マーケティング部のステージ」「営業部の進捗」と進んでいく営業・マーケティングの「状態」を合わせるという作業をしっかりやってほしい。

つまり営業・マーケティングの大きな作業の分担を示すためには「顧客の購買プロセス」「マーケティング部のステージ」「営業部の進捗」と進んでいく状況を標準化することが軸になる。次にマーケティング部と営業部のやるべき活動を大きく示す。もっと細かな活動内容は営業・マーケティングプロセス設計図で示せばいい。

 以前、私のチームは分業MAPの中で、製品・サービスを売るために、営業・マーケティングの重要なキーワードと目標を記載した。顧客にWebで見つけてもらうインバウンドマーケティングをやりたかったので、マーケティング部はWeb(製品サイトの対応)とコンテンツ(検索上位を目指し検索エンジンのアルゴリズムに対応するためのコンテンツ作り)をキーワードにし、リードを増やすことを目標にした。営業部は人手が必要なイベント(展示会やセミナー)には協力してほしいしそしてイベントは人から始まるし、様々な新規開拓も人から入ってくるので「人から」を重要なキーワードとした。通常のリアルな営業活動だけでなく、バーチャルなWebの世界から入ってくる人への対応も含めてのキーワードだ。そして営業部は提案から商談と案件を増やすことを目標にした。もう一度、分業MAPを見てほしいが文字にまとめるとこのようになる。

 マーケティング部キーワード「Web」「コンテンツ」  目標「リードを増やす」

 営業部キーワード     「人から入る」「提案する」 目標「商談・案件を増やす」

あとは分業MAPのように絵やデザインから、営業・マーケティングがやるべき大きな分担イメージがわかればそれでいい。キーワードとは営業・マーケティングを強化していく大きなポイントであり、目標も分業MAPレベルではシンプルでよい。分業MAPはとにかく細かく作りすぎないことだ。大きなメッセージをチームに発信するぐらいで書いてほしい。細かなドキュメント作りはまだ先でいい。そして大事なことは冒頭でも述べた2つの統一である。「顧客の購買プロセスを中心に据えること」「顧客・マーケティング・営業の進んでいく状態を統一すること」を忘れないでほしい。  

営業・マーケティングのプロセスを設計する② 言語を共通化する

分業MAPが決定したら、更に細分化していく。それがプロセス設計図だ。本ブログではプロセス設計図の表記は割愛するが、いくつか例は示しておきたいと思う。例えば、営業・マーケティング強化の取り組みのために、もっと入口を増やすそう!というメッセージを発信したいとする。入り口とは営業・マーケティングでリードや商談になっていくための最初の「きっかけ」のことだ。この「きっかけ」を整理して意識していない企業は意外に多いと感じている。マーケティング部が担当する入口=きっかけと、営業部が担当する入口=きっかけを明確に決めて、チームで連携していく狙いのためにプロセス設計図を作成してもいいだろう。狙いとして、前ブログで記載したマーケティング部に寄りかかり、新規営業活動をしない営業を減らすためにも有効だ。マーケティング部がやるきっかけは、すなわち会社がやるから営業はやらなくていい。そのかわり営業にやってきっかけはこれ!と決め、営業個人の責任として頑張ってもらう。そしてチームで連携していこう!ということを伝えるために作成してもよい。

営業・マーケティングの入り口を増やすため、つまり、きっかけからすべてを始めることを整理し理解してもらうためにプロセス設計図できっかけをまとめた時のチームへの浸透は大きかった。マーケティング作業に寄りかかる営業が減り、営業のきっかけの作業を実行する営業が増えていき、組織でうまく連携が始まっていった。

 もし営業・マーケティングプロセス設計図(以下、プロセス設計図)を作成していくならば、縦軸を整理し、言語の共通化してほしい。ここでポイントとなることは★➀だ。

  顧客の購買プロセス

  営業・マーケティングの活動

  マーケティングのステージ営業の進捗管理

  社内の営業・マーケティングチームの状態の呼び名  ★➀   

  分業範囲

  顧客の状態

  提供するコンテンツ・Web広告・イベント・セミナー

  営業・マーケティング管理システム              

  チーム・担当者                  

 まずやるべきことは、★➀の社内の営業・マーケティングの状態の呼び名を決めるということだ。「状態」はチーム連携の中で営業・マーケティングのそれぞれの呼び方が横断する大事な部分だ。ここがズレると営業・マーケティングで連携どころか会話が成立しなくなる。営業組織内でも言語が違うことはよくある。例えば営業上司と営業部下のやり取りで「これは案件ではありません。商談です」と言っているシーンがある。「まだ商談レベルで案件ではありません」と営業部下がミーティングで「状態」を上司に伝えているのだ。マーケティング部メンバーが営業に「MQLを今日渡すよ」と言っているのに、営業はリードをもらうと思っていることもある。営業とマーケティングの状況(ステージと進捗)はそれぞれ統一できたのに、「状態」が合っていないのだ。このような誤解を減らすためにも営業・マーケティングの言語は共通化しなければならない。

BtoBマーケティングは営業よりも、後でできている。マーケティング用語が世に出始めたのは2010年ぐらいだ。しかもアメリカからやってきたので英語が多い。マーケティングツールは海外製品がほとんどなのでツールを使う時のステージ管理名も英語だ(だからプロセス設計図もステージという呼び名にしている)。マーケティング部から営業部に渡すシーンが多く、営業部からマーケティング部に戻すという場合もある。

 私が言語の共通化で気を配ったのは「MQL」という言語だ。マーケティング部ができる前は「Web問合せ」と言っていた。これは何十年もWeb問合せがきた!増えた・減った!と一喜一憂していた営業の屋台骨のような言語だ。Web問合せをMQLに変えるのは抵抗があったが、営業・マーケティングで一番重なる大事なポイントなので、チーム連携のために言語の統一を強行した。マーケティングツールの項目名をWeb問合せで変えられないことも理由だったが、これからの時代にあった営業・マーケティング用語であり、MQLを普通に使える組織にしたかった。そのためにプロセス設計図の資料を作るだけでなく、ミーティングでは率先して自分が「MQL」と使っていったし、MQLという会話で営業部にリードを渡していった。若手はよく「資料は作りました」「共有フォルダーにアップしておきました」以上!で済ませることが多い。大きく変える時は資料ではなく、自分の声でチームに伝えていかなければならない。マーケティング部は部門横断チームなので各営業部と会話することがとても重要だ。資料だけで済まさず、言語の共通化をしたい時は、積極的に会話していこう。

営業・マーケティングのプロセスを設計する まとめ

チーム・担当者も大事だ。製品・サービス別に営業が分かれていたり、マーケティング部も細分化している。営業部・マーケティング部のチーム名だけがプロセス設計図に役割が書かれていてもわかりにくいため、特に連携が多いつなぎの部分は、細かく担当者を記載しておくのがよいだろう。

 このように分業MAPで大きな作業分担とキーワードや目標をメッセージとして発信し続け、プロセス設計図で言語の共通化に気をつけながら、細かく落としていくイメージで進めていってもらいたい。業務フローのような管理部が作成する基幹業務向けのイメージではなく作成し、営業・マーケティングメンバーが認識しやすいものを作成していけば、営業・マーケティングのプロセスを設計しやすいはずだ。

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