第2章 営業・マーケティングのやり方(企画編)

営業・マーケティングの「人から入るプロモーション」を企画するためには? ~前編~

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営業・マーケティングの新規活動を企画していくと、どうしてもマーケティング部のプロモーション計画になってしまう。そうすると営業は新規活動をやらなくなり、足腰が弱っていく。営業部もプロモーションを企画していくべきだ。ではどうすればいいのか?「人から入る」をテーマに営業ついて考えていきたい。

営業・マーケティングの「人から入るプロモーション」を企画するためには?

 営業・マーケティングの企画と計画段階でインバウンドマーケティングをプロモーションの軸に据え、効果的なWeb広告も検討し、自社イベント・セミナーを考えて、展示会出展も検討した(前ブログを参照)。営業・マーケティングが連携することでチームが強くなることを本ブログでは目標にしているので、ここまでは連携した準備・企画・計画はしっかりできていて、これで今期のマーケティング計画表は完璧だ。ひとまずマーケティング部主体のプロモーション企画はこれでよいとしよう。しかし営業部のプロモーション活動はどうするのか?つまり営業部の営業メンバーも製品・サービスを売るためのプロモーション案を企画しなければならないということだ。

 ここまで本ブログで記載したプロモーションの流れは、来期の実行段階に入るとマーケティング部がインバウンドマーケティングを実行して、リードを増やし、MQLを営業に渡したところから営業は初回訪問へ動く。自社イベント・セミナーや展示会出展も同じ流れで、アンケート回収結果などから営業が動くことになる。これでは営業部の営業メンバーは主体的に新規活動をしていくための企画と計画が全くない。営業部はマーケティング部から訪問できる見込み先がくるまで、待ちの状態になる。「いやいや、営業は忙しいので、マーケティング部から見込み先がくるまでは既存顧客訪問や提案作業、雑務までやっていますよ」という声が聞こえる。それは確かにそうだ。営業は忙しい。しかし営業・マーケティングの企画段階では「製品・サービスをどのように売っていくのか?」の営業部のプロモーション活動を考えなければならない。実は意外にここが抜け落ちている企業が多いのだ。

 ところが「いやいや、営業がそれは考えていますから、営業個人が新規活動をやりますよ」という上司がいる。「営業個人」と言っている上司ではチームは強くならない。チームで強くなる営業・マーケティングのやり方を実現するためには、個人にすべて任し依存してはいけない。もちろん個人のパーソナリティや能力には依存するが、組織で営業部のプロモーション企画も考えていこう!ということが私からのメッセージだ。

営業・マーケティングの「人から入るプロモーション」を組織で設計することはできる!

 では営業部のプロモーション企画とは何だろう。プロモーションの4Pとは広報・広告・販促・営業であり、企画を実行するための具体的な活動がプロモーションだ。だが営業・マーケティングのやり方というタイトルにしている本ブログでは、プロモーションに営業があるのは違和感があると前述した。例えば「販促営業を増やし、店舗や現場への新規提案を強化する」という販促が営業部のプロモーション企画にくるのは4Pと合っている。だが本ブログではプロモーションの4Pで定義されている営業を、もっと幅広く具体的な活動に分解していきたい。

 マーケティング部と連携するプロモーションは前ブログで考えた。では営業のプロモーションとは一言でいうとなんだろう? その答えを私は「人から入る」営業の活動をプロモーションだと言っている。人から入るとは、人と人との関係性を持った接点の事を意味する。自社イベント・セミナーや展示会出展も人から入っているとも言えるが、イベント・セミナーはマーケティングが主体で運営し、新規顧客が展示ブースに来てくれるので、人と人との関係性を持っているとは言えない。つまり組織で設計しづらい、人と人との接点から顧客と結びついていく活動のことを「人から入る」と呼ぶ。「営業の人脈?」と聞かれると人脈も「人から入る」に含まれる。  

 しかし人脈営業と一言で片づけてしまうとベテラン営業や責任者や経営者のような長く営業をやっている人だけが持つ経験やスキルになってしまう。そうすると若手・中堅営業にはできないやり方になってしまうため、「人から入る」プロモーションを人脈という一言で済ませてはいけない。チームで強くなるために設計されていて、誰でもできる「人から入る」営業のプロモーションでなければならないのだ。

 ではいったいどのような人から入るプロモーションがあるのだろう。マーケティング部は「案件を創るためのプロモーション企画」で表現してきたが、営業部はもう少しわかりやすく「人から入る、新規開拓のためのプロモーション企画」という表現で考えていきたい。私が営業部に企画段階で考えるようアドバイスしているパターンをいくつかご紹介したい。

7つの「人から入る」プロモーション企画 ~前編~

マーケティング部の「案件を創るためのプロモーション企画」ばかりに任せず、営業部も新規活動を企画しなければならない。「人から入る」プロモーション企画の7つのパターンをご紹介したい。これはマーケティング部に頼らず、営業部が企画し実行するプロモーションだ。

(1)新規顧客ターゲットをリストアップし、新規活動する

 どんな業界・業種・業務にも自社の製品・サービスを売っていくターゲット先はあるだろう。意外にターゲット先のリストを企業データベース提供会社(以下、企業DB)から購入していない企業は多い。「インターネットから自分で集めろ」とか「自分で考えてみつけろ」と上司が考えず、営業任せになって企業もある。企業DBには新規開拓をしていくために必要な企業情報が記載されている。住所・電話番号、決算月、上場区分、売上、利益の基本情報だけでなく、業種区分、従業員数、取引先情報、前年売上比、企業DB点数など、新規アプローチのヒントが記載されているのだ。インターネット経由でクローラーが企業のホームページをチェックし、企業DBを集めている格安サービスもある。しかし「外に出ている情報」は所詮たいした内容ではないので、専門の企業DB会社が集めたしっかりした企業DBを購入した方がいい。

 そしてターゲットリストアップ後に営業がやることは、新規ターゲットリストに記載された「新規顧客名」を覚えることだ。一気でなくていい、徐々に頭の中に入れていくのだ。バーチャルでもリアルでも様々なプロモーション時に新規顧客と出会うことがある。その瞬間に自社のターゲット先の新規顧客名を覚えておくと、初動が全く違う。いきなりアプローチを開始できる。だから頭の中に入れておいてほしいのだ。「リストアップをして満足!終了!」となっている人は少なくない。実際に新規活動はもちろんだが、その前にターゲット企業名を覚えよう。

 企業DBを購入してチームで統一した新規顧客ターゲットリストを持てば、クロスセールスなどでアプローチできる方法を考え、既存顧客と取引をしていて紹介してもらえる先を探すこともできる。このように電話でやみくもに営業をかけることはやめるべきだ。もうそんな時代ではない。効率は悪いし、コンプライアンスやセキュリティ重視の今の時代にマッチしていないのだ。

 企業DBを見て新規顧客のホームページを見れば、何か必ずアプローチのヒントがある。「知っている取引先はないか」「事例に同一顧客はないか」と考えてほしい。いきなり電話をせず、まずリストやホームページと向き合い、考えるのだ。このように営業が新規顧客に対して接点を持つために考えて動く活動が、人から入る代表的な営業のプロモーションだ。

(2)既存顧客のクロスセル・アップセルのターゲットをリストアップし、新規活動する 

 既存顧客担当営業やカスタマーサクセスチームが担当する場合もあるが、ここでは営業部が担当するケースとする。クロスセルとは自社A製品・サービスを販売できたら、B製品・サービスも販売できる場合の活動を指す。BtoBの場合はオフィスを見渡せば、わかりやすいだろう。例えばオフィス家具・什器の営業は、移転時にオフィス家具・什器を受注したら、増床時はクロスセールスでオフィス家具・什器を追加で増やせるはずだ。
 アップセルは自社A製品・サービスの利用金額のボリュームを増やすために、機能やバージョンを上げていく活動を指す。利用するソフトのライセンスが足らなくなる、新卒入社時期前に提案し、ひとつ上のバージョンにクラウドサービスをバージョンアップする提案ができる。既存顧客にクロスセル・アップセルをしていくことは、アプローチしやすいはずなので、営業のプロモーションとしてぜひ考えてほしい。

(3)業界団体をリストアップし、業界団体活動をする 

 人から入る活動で最も組織で考えやすいのが、業界団体活動だ。業界団体とは皆さんの業界・業種を管轄したり、資格会員を管理したり、市場を拡げていくための活動をしている団体のことだ。一般社団法人日本○○産業協会、社団法人全国〇〇会という名称で支援している団体の会員になっているケースはないだろうか? 団体入会の目的は、国からの規制緩和や補助金等を目当てに加盟している企業もあれば、その業界の発展のために会員になっているケースもあるだろう。「会員になっていないと仕事がもらえない」、「信用を高めるための入会」という目的は多いが、そうすると会員になることが目的なので団体内活動はやらない。せっかく年会費を払い団体に登録しているのに、年次総会に社長だけが出席している企業は少なくないだろう。

 本部ー支部の下にワーキンググループや分科会のような具体的な業界をよくしていくための活動チームがあるはずだ。そのようなワーキンググループや分科会に、営業が積極的に参加し人脈を拡げ、業界の最新情報をキャッチしていくべきだ。同業だけが集まる団体が多いが、顧客が参加する団体は必ずある。前者なら協業、後者はズバリ営業ができる。社長や役員クラスしかなれない理事会等は上司しかできないが、ワーキンググループや分科会は営業が参加するべきだし、技術系委員会があれば、自社の技術者を参加させることもできる。
 ぜひ営業部で団体ターゲット先をリストアップし、年会費を有効活用し、人と人が交流を深め、つながりが生まれる活動を考えてほしい。

 営業・マーケティングの「人から入るプロモーション」を企画するためには? ~前編~は、ここまでだ。イメージがしづらいかもしれないが、「人から入るプロモーション」ということが理解できたのではないだろうか? 後編は、7つの人から入るプロモーション企画の、残り4つをご紹介していきたい。

営業マーケティング7つのやり方
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