営業・マーケティングの新規活動を企画していくと、どうしてもマーケティング部主体のプロモーション計画になってしまう。そうすると営業は新規活動をやらなくなり、足腰が弱っていく。営業部もプロモーションを企画していくべきだ。ではどうすればいいのか?「人から入る」をテーマに営業ついて考えていきましょう。その後編です。
目次
営業・マーケティング 7つの「人から入る」プロモーション企画 後編
マーケティング部の「案件を創るためのプロモーション企画」ばかりに任せず、営業部も新規活動を企画しなければならない。「人から入る」プロモーション企画の7つのパターンをご紹介したい。これはマーケティング部に頼らず、営業部が実行するプロモーション企画の後編だ。
(4)パートナー営業(販売パ-トナーや協業パートナー)
販売パートナーや開発パートナーに向けて、製品・サービスを販売しやすくし、開発効率を上げるためのパートナーサイトを作成し、情報提供をしていく。しかしそれだけではパートナーは積極的に動いてくれない。パートナー営業こそ、人と人との接点から関係構築を強くして、自社の製品・サービスを売ってもらい、開発してもらうことを働き掛けていく活動が中心になる。
まず営業は1社の担当パートナー企業の今期組織図を入手し、担当者のターゲットリストを作成する。つまり人のリストを作成するのだ。1社で10人もあれば、1社で100人ぐらいの顧客担当者リストを作ることもある。パートナーターゲットリストは担当者、人が中心になりリストと計画表を作成することがポイントだ。そして接点目標数や人のランクアップ目標を決め、チェックできる表を作る。パ-トナー営業はまず1社の予算達成を目指し、人から徹底的に攻めていくプロモーション企画を考えていこう。
協業パートナーは近い業務/業務や分野で、お互いの製品・サービスを補完しあえる関係と言える。まず協業先の製品・サービスを自らアピールしていこう。まず自らが紹介案件を探しながら関係構築をすることで、今度は自社製品・サービスの理解をしてもらい、必ずいつか紹介をもらえる。タテの損得や欲がない、ヨコの同じポジションで協力するのが協業パートナーだ。よい関係の協業先をたくさん構築していこう。共催セミナーもやりやすいため、セミナー企画や開催を重ねながら、案件を増やしていけるはずだ。
(5)懇親会営業
これが意外にできていない。私がオススメしている人から入るプロモーションだ。コロナ禍で現在、懇親会は開催されていないが、復活する時に備えて読んでほしい。まず業界団体活動と懇親会営業はセットにしやすい。まず業界団体が年に数回開催する総会や定例会後に行われる懇親会をリストアップする。社長や役員しか懇親会参加をしていない会社は、営業も連れていくべきだ。
私は参加人数が多い懇親会は役員(私)+営業2名を連れていき、会場の担当テリトリーを決める。詳しいやり方は第3章(実行編)で述べていくが、社長や役員の決裁者の人と会える、質の高い新規開拓のやり方だ。
またパートナー営業にもパートナー会の後に懇親会はある。自社のパートナー懇親会の場合と、協業パートナー懇親会の場合があるので注意しよう。パ-トナーが開催するイベントの懇親会に参加し、新しい人との出会いを求めて活動してみよう。有料・無料を問わず、有益な懇親会がどれぐらいあるのかリストアップしてみてほしい。
(6)自社の役員人脈をリストアップする
自社の営業部や事業部の担当役員の人脈を把握するためのリストを作っている会社はほとんどない。「役員にそんなお願いはできない・・」「機密情報でもあるし・・」という声をよく聞く。それはその通りだろう。しかし、担当役員も営業部や事業部の予算達成をするミッションは、営業・マーケティングチームと同じだ。企業の機密情報やインサイダー情報にならない範囲で、担当役員が会っている名刺情報を共有し、担当役員が仲のよい顧客を把握するべきだ。部長やメンバーが毎回お願いするのではく、組織の取り組みとして役員自らが当たり前のように役員人脈リストを公表するしくみを作ろう。
そのためにはまず、役員が交換した名刺をSFA/CRMに投入しよう。そして営業部やマーケティング部と共有できるしくみを作ってほしい。「うちの役員はあの顧客と仲がいい」を知っているか知らないかでは、初動が全く変わってくる。人から入りやすいプロモーション企画なので、社長や役員が合っている名刺を営業と共有することから始めよう。共有することで「うちの社長が今、攻めている会社の社長と会ったことがあるなら、一本メールを打ってもらおう」と気づき、上流営業ができるようになる。社長も、喜んでメールぐらい送ってくれるだろう。これが一番簡単な、組織営業への第一歩だ。「名刺は会社のもの」役員のものでも、営業個人のものでもないのだ。
(7)顧客からの紹介
顧客から紹介をもらうことは簡単ではない。しかし紹介をもらえれば、上の人と会いやすく、紹介をもらえた人からの信用も高いので受注につながりやすい。効率的な新規開拓活動なのだ。そのためには人脈のある人、紹介の好きな人を探し、仲良くならなければならない。「オレ、あの人知っている」「それならあの人がいいぞ」と人の名前がポンポン出てくるような‘人好きな’顧客のことだ。そういう人を既存顧客から見つけ仲良くなっておこう。だがここで紹介をもらうためには、大事な言い方がある。
紹介をもらえそうな人を見つけて「どこか紹介をもらえないですか?」という言い方をしても紹介はもらえない。「この顧客のこんな担当部署の人を知りませんか?」と具体的にお願いする言い方でなければならない。「この顧客」とは(1)で述べた新規顧客ターゲットリストに入っている顧客のことだ。(狙う顧客名はリストを何度も見て頭の中にも入れておいてほしい)
人好きな紹介者は商談中に顧客名や人の名前がたくさん登場する。その瞬間にその顧客名に反応することが一番、紹介をもらいやすい。そのためにターゲット顧客を覚えるのだ。「紹介先をしてくれそうな顧客に、紹介してほしい顧客をリストアップ」を企画段階にやっておくといいかもしれない。紹介というきっかけは、営業・マーケティングのすべてのプロモーションの中で一番受注率が高い。質が圧倒的にいい。まずは仲のよい人脈のある顧客をたくさん作るところから始めよう。管理職や役員は率先して、このような紹介活動でチームを牽引してほしい。
マーケティング部だけではなく、営業部も新規活動の企画をする意味とは?
このように営業部の「人から入る」の新規開拓のためのプロモーション企画を前編・後編で7つ挙げてみた。どれもマーケティング部と連携して設計するのは簡単ではない。だが営業任せにせず、営業部が組織で設計をしてほしい。新規開拓の営業活動は非常に効率が悪い。新規開拓活動をしてみたが、商談にすらつながらなかったことは誰にでもあるはずだ。
営業・マーケティングがチームで連携をすると「案件を創るためのプロモーション企画」で決めたインバウンドマーケティングや自社イベント・セミナー、展示会出展をマーケティング部が準備・運営をしてくれる。営業の新規開拓活動をマーケティング部がやってくれるのだ。これは営業部にとっては非常に大きい。営業は初回訪問→商談→提案→クロージジングに専念できるからだ。
しかし、そのマーケティング部の新規開拓活動に甘え、営業が新規開拓活動をしなくなると、ワシの話につながり、活動力が低下する(第一章ブログ参照)。活動力が低下すると「目標予算達成にあといくら足らない!」という時に動けなくなるのだ。足らない予算をマーケティング部が月末までに埋めることは無理だ。マーケティング部は年間計画表に沿ってプロモーションを実行し、リードとMQLを増やしていくのが仕事だ。それが案件を創るためのマーケティングなのだ。その時に営業が動けるように営業部が人から入る新規開拓を考え、実行してほしい。もちろん予算が足らない時のためだけでなく、年間を通じて皆さんの会社に合った新規開拓のためのプロモーションを企画し実行していこう。
営業・マーケティングの「人から入るプロモーション」に重要な共通項があった
そしてもう一つ営業部の「人から入る」の新規開拓のためのプロモーション企画で大事なことがある。この人から入る7つプロモーションにはすべてリストアップが必要だ。そして営業・マーケティングチームはターゲット顧客名を記憶しなければならない。7つのやり方の共通項とも言える「リストアップ&記憶する」の重要性がわかっていない営業はけっこう多いと感じている。リストアップとは、狙う顧客に対し、個人とチームの意識を合わせる作業だ。意識が合えばチームで動けるようになるし、営業個人も狙う顧客にアプローチするために考えるようになる。
もちろん営業部だけではない。そのリストアップはマーケティング部にも共有されていくのだ。例えば昨年売上上位20%の営業が攻めたい先をリストアップし、マーケティング部が優先的にその顧客に有益なコンテンツを提供していくABM(Account Based Marketing)というデータマネジメントを活用した手法がある。ABMでターゲティングされた上位20%に対し、マーケティングと営業でリアルもバーチャルも徹底的に協力して攻めるのだ。
ABMは、営業とマーケティングの連携を深められる良い手法だ。営業がリアルに狙う顧客に活動をしている間に、バーチャルの世界、つまり自然検索をして資料をダウンロードした顧客がサブスクライバーやリードになっているかもしれない。(1)新規ターゲットリストは営業部が狙う顧客のために活用するだけでなく、マーケティング部にも意識させるために共有することが重要だ。(1)のリストをMAにインポートするそのことは簡単だし、リードに狙う顧客に様々なフラグを立てることもできる。 そのためには営業は表計算ソフトでリストを管理するのではなく、SFA/CRMで管理した方がいい。企業DBを購入してSFA/CRMにインポートし、リード(名刺獲得含む)はMAとSFA/CRMで共有する作業は、今では当たり前だ。「人から入り、人から攻める」ためにはMAとSFA/CRMで一元化し、営業・マーケティングで人の情報を共有してほしい。
市場調査もマーケティングのプロモーション企画のひとつ
プロモーション企画は、マーケティング部だけの企画で終わってしまうことが多い。営業部にもプロモーション企画は必要なので営業チームで設計し、標準化することにチャレンジしてみよう。ぜひ、営業部の「人から入る」の新規開拓のためのプロモーション企画を整理してみて、「リストアップ&記憶する」の重要性を再認識してほしい。
必要であれば市場調査もマーケティング部が主体で行ってほしい。大手一般企業がIT投資を行う際に、これからのテクノロジーがどのように変革していくかアドバイスが欲しいため、様々なジャンルの分野を調査している会社がある。外資や国産ベンダーがグローバルや国内市場について調べている。各製品・サービスが業種や業務、テクノロジーのジャンルで市場シェアがどれぐらいあるのか、どのような特長があるのか、その市場の将来性はこれからどれぐらいのポテンシャルで伸びていくのか、などを細かく調べたデータを持っているのだ。
市場調査は自社のマーケティング企画を行うだけに使用するのではない。顧客が製品・サービスを選定する際に、市場調査データの上位シェアに入るために、マーケティング部メンバーが市場調査ベンダーとリレーションを構築してみよう。市場調査ベンダーからDBを購入するだけでなく、担当者と仲良くなって、自社の製品・サービスも市場調査データに入れてもらうための動きを意識しておこう。
営業・マーケティングの人から入るプロモーションは、7つのやり方があることを理解していただけたと思う。それはどれも「リストアップ」と「ターゲット顧客を記憶する」ことが重要であることを忘れないほしい。「リストアップして、はい終わり」とならないよう、営業とマーケティングメンバーはリストアップした企業名を覚え、新規活動に役立ててほしい。
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